Home > 月刊日本 Archive

月刊日本 Archive

表現の自由は無制限ではない

『月刊日本』2019年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年11月22日

 8月初めに開催された「あいちトリエンナーレ」の中で、猛抗議によって三日で中止となっていた企画展「表現の不自由・その後」が、10月8日の午後から強引に再開された。その再開の理由を、実際に見て判断して欲しいといいながら、展示方法は極めて制限されたものであり、言動が完全に矛盾していた。

 この展示の最大の特徴は、開催者が「表現の自由」を金科玉条として、それをやみくもに言いつのったことである。なるほど日本国憲法の第21条には、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」とある。しかし同じく第12条には、「この憲法が国民に保証する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」と、明確に言っている。表現の自由が、無制限なものではないのは、あまりにもあきらかだ。

 今回の企画展の真の目的は、本誌10月号でも述べておいたように、昭和天皇を戦争に絡めて貶めることであった。しかし当初反発が強かったために、問題点を慰安婦像の方に集中させて、昭和天皇の方はなるべく隠蔽する作戦に出た。したがって、昭和天皇の肖像に放火して燃え上がらせ、さらにその灰を踏みにじる映像に、「昭和天皇を含む肖像群が燃える映像作品」という、意図的な表現が一貫して使用された。この展示を問題視した例外的な首長の一人である、黒岩神奈川県知事も、慰安婦像だけに注目して、この隠蔽工作にすっかり騙されていた。

 ところが10月14日の閉会直前の12日になって、朝日新聞はこの映像作品の張本人である、大浦信行へ長文のインタビュー記事を掲載して、真相を明らかにする。しかしその内容は、まことに支離滅裂なもので、「僕にとって燃やすことは、傷つけることではなく昇華させることでした」などと、昭和天皇を呪詛する本音を、懸命にごまかそうとしていた。憲法第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とあるのだから、天皇を貶めることは、日本国、日本国民を貶めることであって、最大級の国家犯罪に他ならない。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

旭日旗問題の再燃

『月刊日本』2019年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年10月22日

 韓国との旭日旗問題が再燃している。昨年は観艦式でのことであったが、今回はオリンピック・パラリンピックでの問題である。

 この旭日旗問題については、昨年の観艦式問題の時点で、私はその起源を含めて、本誌の昨年11月号で「旭日旗問題の過去と現在」のタイトルの下に、かなり丁寧に解説しておいた。その起源は韓国ではなく中共にあり、2001年に女優でモデルの趙微が旭日模様の衣装を着ていることが問題になり、長沙のイベントで暴漢に襲われ、謝罪に追い込まれたという事件があった。ただしその後20年近く経つのに、中共で問題になっているという話は、全く聞こえてこない。

 韓国の方は、2011年のサッカー試合から問題になり、その後、徐敬徳という学者が中心となって、旭日旗排斥運動が展開され、それは海外にまで及ぶだけでなく、放射状のデザインなら、何でもかんでも攻撃・排斥すると言う、精神病理的現象が出現している。日本のエセ・リベラルな媚韓メディアは、韓国に忖度してまともに報道しないが、インターネット情報には、以前から、たくさん取り上げられている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

メディアこそ真の戦争犯罪者

『月刊日本』2019年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る   2019年9月22日

 8月初めから、「あいちトリエンナーレ2019」が開催され、その展示の一部に多大の批判が寄せられて、急遽中止となった。それは企画展「表現の不自由展・その後」で、以前各地の展覧会で問題を起こした展示の数々を、わざわざ集めて再展示したものであった。

 多くの展示のなかでも特に批判が集中したのが、慰安婦少女像と昭和天皇の写真を焼却する映像に関してあった。この二つの組み合わせと言えば、直ちに思い出すのが、今から約20年前の年末に、東京で開催された、いわゆる「女性国際戦犯法廷」と称せられる、謀略裁判劇である。この裁判劇の正式名称は、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」だが、ふつう正式名称で呼ばないのは、その凶悪性を隠すためである。

 ほとんど理解されていないが、この裁判劇の目的は、表看板とは全く異なって、慰安婦を救済するためではない。真の目的は、昭和天皇に戦争犯罪人として、有罪判決を下すことであった。東京裁判において、昭和天皇は裁かれなかった。それが悔しくて仕方がない人間が、東京裁判では取り上げられなかった慰安婦問題を利用したわけである。したがって裁判劇を企てた人間の考え方は、「東京裁判不充分史観」あるいは、「東京裁判でも未だ足りない史観」と呼ぶことができる。

 この裁判劇を企んだのが、朝日新聞出身の松井やよりであり、朝日新聞はこの裁判劇を大報道した。月刊雑誌で最も詳しく報道したのが、岩波の世界であり、週刊誌では朝日ジャーナルの後継誌である週刊金曜日であった。そしてテレビではNHKのEテレが裁判劇を取り上げたが、昭和天皇への有罪判決の部分については、放送できなかった。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

吉本問題の根本原因

『月刊日本』2019年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年8月22日

 最近、吉本興業とジャニーズ事務所という、二つの巨大芸能プロダクションについて、色々と問題が指摘されている。ジャニーズはともかく、吉本についてはまだまだ尾を引いているようだ。この芸能プロダクション問題は、結局、根本的にメディアの腐敗堕落から発しており、メディアは自己の暗部を隠蔽している。今の日本では、経済二流、政治三流という表現があるが、メディアはさらに下の五流以下と言える。

 メディアと言っても芸能プロダクションと直接関係があるのは、放送メディアであるが、近年における放送メディアの堕落ぶりは、余りにも異常である。これは平成時代になって、一層顕著になった。昭和時代はこんなことはなかった。

 放送の重大な使命は、聴取者に対して正確なニュースを提供することであるが、ニュース番組が異常に劣化している。ストレートニュースがほとんどなくなり、極めて感情的にナレーターがしゃべり、かつそれに煽情的な背景音楽をかぶせる、ドラマ仕立てとなった。しかもその報道の基調が、虐日偽善的な偏向であり、メディア自身が、フェイクニュースの一大殿堂になっている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

天皇とエセ・リベラリスト

『月刊日本』2019年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年7月22日

 平成の時代が終わり、平成を総括する類の本が、続々と出版されている。とても読み切れたものではないが、その中で原武史の『平成の終焉』(岩波新書)を読んでみた。確か朝日新聞の書評欄で、呉座勇一が歯切れの悪い評を書いていた、記憶があったからである。

 読んでみて、特に注目したのは次の部分である。「本来、天皇を規定するはずの法が、退位したいという天皇の『お気持ち』の表明をきっかけとして新たに作られたり改正されたりすると、論理的には法の上に天皇が立つことになってしまいます。天皇が、個人の都合で専制的な権力をもつことになるわけです。大日本帝国憲法によって天皇大権を与えられていた明治、大正、昭和の各天皇のときも、こんなことはありませんでした。」(52頁、傍線引用者)

 平成天皇の慰霊行為は、憲法を逸脱しているとする、渡辺治のような人は以前かいるようだが、天皇の退位行為は大日本帝国憲法にすら違反すると、言っているわけである。ほかに、誰が同じ意見を述べているのか、寡聞にして知らないが、極めて注目すべき意見と言えるだろう。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

パックス・シニカ

『月刊日本』2019年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年6月22日

 5月15日の朝日新聞朝刊、オピニオン面にインタビュー「米国超え 中国の夢」という記事がある。インタビューの相手は中国国防大学教授・劉明福(上級大佐)なる人物で、生粋の軍人で軍部でもタカ派で鳴らしているという。聞き手は峯村健司記者で、以前から中共軍部と強力なコネクションがあり、航空母艦の建造開始など、重要な軍事情報をスクープして、ボーン上田賞を受賞しているスター記者である。

 陸は胡錦涛政権下の2010年、「中国の夢」を出版してベストセラーだったが発禁処分になった。それが習近平政権になった2012年末に再刊されて、習の唱える「中華民族の復興」という、現代に生きるウルトラ・ナショナリズムである、シナ侵略主義のイデオロギーの原典になったのだという。

 「中国の夢」はどんな戦略なのかというと、「私が考える戦略は、三つあります。一つ目が『興国の夢』。中華人民共和国建国100周年の2049年までに経済や科学技術などの総合国力で米国を超え、中華民族の偉大な復興を成し遂げる。二つ目が『強軍の夢』で、世界最強の米軍を上回る一流の軍隊をつくること。そして最後が『統一の夢』で、国家統一の完成です」と答えている。国家統一とは台湾併合のことだという。

 2049年まで今後30年の予測は、最初の10年はアメリカが日本を使って圧力をかけてくる時代、次の10年は睨み合いが続く時代、最後の10年はアメリカが衰退して中共が主導権を握る時代であるとする。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

皇室の〝三重権威〟問題

『月刊日本』2019年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年5月22日

 平成天皇(現上皇)の退位の意向が報道されてから、約3年弱の5月1日、天皇の代替わりが実現した。生前の譲位は江戸時代以前には、普通に行われたことであり、決して不自然ではないと、上皇はおっしゃった。だからと言って、皇室のあり方が、江戸時代以前に戻ったかと言えば、それは明らかに相違している。

 今回、全く議論されなかったが、明治に始まった一世一元の制度が変質したことは重要である。江戸時代までは、大化以来年号と天皇在位期間とは、基本的一致していなかった。明治に明・清の制度に倣って、一世一元制を取り入れ、これはそれなりに安定した制度であった。しかしそれは奇妙に崩れたから、時代の区切りが、完全にぼやけるだろう。

 具体的には、二重権威の問題がある。天皇と上皇が存在することによって。権威が分裂するという問題である。それは江戸時代でも同じだと考えるのは全くの誤りである。江戸時代の皇室のあり方は、現在と全く異なっていた。そのことがほとんど理解されていない。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

緒方竹虎と三浦梧楼

『月刊日本』2019年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年4月22日

 5月1日の天皇の代替わりに伴って、一ケ月繰り上げた形で、4月1日に新しい元号が発表された。それは「令和」だったが、選考過程などの推測も交えて、新聞各紙では大量の報道がなされた。4月6日の朝日「メディアタイムス」欄によると、2日朝刊では地方版以外で、読売15、毎日12、朝日11、産経10、日経9のページ数だったという。発表直後には号外が出されたが、その部数は読売約103万、朝日約20万、産経約9千、毎日非公表で、日経はださなかった。人々はそれを文字通り奪い合って手に入れていた。インターネットの時代になっても、号外にはそれなりに人を引き付けるものがあるようである。したがって昔においては、さらに号外は魅力的であり、新聞各社はスクープによる号外合戦にしのぎを削ったわけである。

 ところで秘密保持に、多大な苦心が払われたとされる今回、スクープは起こらなかったが、メディアの取材合戦は、どのようなものであったのだろうか。私が簡単に各紙に目を通した印象で言えば、毎日新聞がかなり気合をいれていたように感じられた。そうだとすれば毎日新聞には、元号スクープに関して過去の歴史のトラウマがあり、強い思い入れがあったと考えられるのである。

 すなわち、まず明治天皇崩御による、「大正」元号においては、新人記者・緒方竹虎のスクープによって、朝日新聞が圧勝した。それを無念と感じていたことであろう毎日は、大正天皇崩御による元号スクープ合戦で、「光文」に決定したとの号外を出す勇み足をして、社長の辞任に至ったという。これを「光文事件」と称するらしい。そのために、真実か不明だが、昭和天皇崩御による新元号の場合には、「平成」とつかんでいたのだが、号外の発行に踏みきれなかったと言われている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

平成の敗戦

『月刊日本』2019年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年3月22日

 天皇陛下は昨年の天皇誕生日に続いて、在位三十周年式典のお言葉でも、平成の時代は戦争がなかったと述べられ、また皇太子殿下も誕生日の会見で、同じ表現を使われていたと記憶する。しかし本誌2月号で指摘したように、平成の時代は不況によって、膨大な自殺者の増加を見たのであり、しかもそれは日米経済戦争の戦死者なのである。平成の時代を、戦争のない平和な時代であったと認識するは間違である。

 つまり平成の時代とは本当は極めて悲劇的な時代であるのだが、平成の悲劇はそれだけにとどまらない。さらに日本を襲った重大な「戦死」が存在することを見逃してはならない。不況による自殺者は、「生物的」な死であるが、それよりはるかに悲劇的でしかも膨大なのは、目に見えない「精神的な死」である。しかも生物的な自殺者数は、現在は以前の状態を回復しているが、精神の死の方はいっそうひどくなり、回復の見通しは全く立っていない。

 では精神の死とは何か。それは例の歴史問題が原因である。それが紛れもない戦死であることは、本稿の後方で説明しよう。

 歴史問題の淵源は、日本の敗戦による東京裁判にあるが、現在まで続く国際問題としての歴史問題の勃発は、1982年の第一次教科書事件で1986年の第二次ある。その後1教科書事件・靖国参拝問題と続く。この歴史問題の展開には、基本的なメカニズムがある。それは日本のメディアが騒ぎ出し、中共・韓国が日本政府に抗議し、日本政府が屈服するというメカニズムである。第一次教科書事件の際は、侵略を進出に書き換えたとの報道が、完全なフェイク・ニュースだったにもかわらず、近隣諸国条項を作ってしまった。歴史問題の重大化には、日本人自身が深く関与しているのである。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

地位協定を改定できない根本原因

『月刊日本』2019年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年2月22日

 朝日新聞は朝刊の「教えて!」欄で、1月24日から六回にわたって「日米地位協定」を取り上げている。第一回の、沖縄の銃弾被害と騒音問題からはじまり、第二回が「米軍に特権 成り立ちは?」としてその歴史、第三回が「東京の空 自由に飛べない?」で、横田空域の問題、第四回が「改定求める声に政府は?」で、日本政府が動かないこと、第五回が「ドイツやイタリア どんな協定?」で、改定が行われたドイツ・イタリアの実例、第六回が「米軍、他国で裁判免れる特権 なぜ」で、アメリカが世界中で結んでいる地位協定の目的、といった構成である。

 地位協定の問題とは、これは基本的に、明治の条約改正問題と類似しているといえるだろう。江戸時代、安政の不平等条約によって、領事裁判権という治外法権と関税自主権の欠如という問題を抱え込んだ。そのために明治政府は、この改正を重要課題としたが、それは容易に達成できず、日本が帝国主義国家の一員として認められるようになって、ようやく実現した。

 日米地位協定は、占領最末期に結ばれた日米行政協定を、60年安保の際に改定したものである。第二回の説明では、「行政協定から地位協定へ。表向きは主権を回復した装いをほどこしながら、内容はほぼ引き継がれ、米軍の自由裁量は大幅に残された」と言っている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

日米経済戦争の戦死者

『月刊日本』2019年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2019年1月22日

 天皇陛下が12月20日に行われた最後の記者会見の内容が、お誕生日を前にして公表され、23日の新聞などで報道されている。そこでは天皇陛下が、極めて感情的に語られたのが印象的であった。内容的に注目されたのは、「平成の時代には戦争がなくて安堵した」という部分で、朝日新聞一面トップの見出しにもなっているし、同紙の皇室記者・岩井克己氏は最も強烈だったと評している。それは以下の御述懐である。

 「そうした中で平成の時代に入り、戦後50年、60年、70年の節目の年を迎えました。先の大戦で多くの人命が失われ、また、我が国の戦後の平和と繁栄が、このような多くの犠牲と国民のたゆみない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切であると思ってきました。平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています。」しかし、この「戦争のない時代」というお言葉は、平成時代を正確に表現しているだろうか。私は甚だ疑問に考えるものである。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

なぜ朝日はBTSを糾弾しないのか

『月刊日本』2019年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年12月22日

 11月8日、テレビ朝日は9日に予定されていた、BTS(防弾少年団)のミュージックステーションへの出演を、急遽中止すると発表した。その理由はメンバーが過去に原爆のキノコ雲をプリントしたTシャツを着ていたためであり、以前からネットなどで問題になっていたが、所属レコード会社と協議して決めたものだという。朝日新聞は。9日夕刊でこの問題を12面の肩で大きく報道しており、Tシャツのカラー写真も載せられている。さらに朝日は10日の夕刊で、Tシャツをデザインした会社の人間が、韓国のメディアに、日本を貶める意図は全くなかったと弁明したと、小さく載せている。

 問題はそれで終わらなかった。BTSは、ナチス関連の記章付きの帽子や旗を使用したことが発覚し、11日に在米ユダヤ団体サイモン・ウィーゼンタール・センターが、批難する事態となった。産経の共同電によれば、「同センターのエーブラハム・クーパー副所長は、『原爆被害者をあざけるTシャツの着用は、過去をあざけるこのグループの最新の事例にすぎない』と指摘。『日本の人々とナチスの被害者に謝罪すべきだ』と強調するとともに、BTSの所属会社にも公式な謝罪を求めた」とあり、これは13日に報じられた。

 ところが朝日はこのサイモン・ウィーゼンタール・センターの抗議を、他紙と異なって全く報道しなかった。それどころか13日には、BTS問題が韓国では、最近の歴史問題などに関連して、反発的に受け取られていることを、ことさら報じている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

朝日新聞とトランプは似ている

『月刊日本』2018年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年11月22日

 11月4日の朝日新聞に編集委員の二人による、共通のテーマを扱ったコラムが掲載されている。一つは総合3面の「日曜に想う」欄で、福島申二による「負の言葉の魔力 世界が注視」というもの。もう一つは文化・文芸欄の、石飛徳樹による「評 マイケル・ムーア監督『華氏119』 とことん過激なプロパガンダ」というものである。共通のテーマというのは、福島のものもムーアの映画に言及しており、さらに結局はトランプ大統領批判となっているからである。つまり目前に迫っていた、アメリカの中間選挙を意識してかかれたものである。

 マイケル・ムーアに入る前に、港湾労働者で「波止場の哲人」と呼ばれた、米人エリック・ホッファーの言を、福島は紹介している。福島は「ネガティブな言葉が秘める魔力はあなどれない」として、ホッファーの「わずかな悪意がどれほど観念や意見の浸透力を高めるかは注目に値する。われわれの耳は仲間についての冷笑や悪評に、不思議なほど波長があうようだ」と、「ある人々から憎悪を取り除いてみたまえ。彼らは信念なき人間になるだろう」の二つの文言を引用する。

 そして福島は、「古今東西、そうした魔力を熟知し、負のレトリックを操って民衆の情念を大動員した魔術師は少なくない。歴史に照らせば、聴衆に、自分たちは何かの『犠牲者』であるという意識を吹き込むのが煽動の常套らしい(トランプ氏のスタイルもそうだ)。それらは希望を呼ぶ甘言とセットで語られ、ヒトラーのドイツをはじめ幾多の悲劇を生んだのは、過去が教えるとおりである」と述べる。結局、トランプとヒトラーを結びつけるわけである。何か小難しい言い方をしているが、福島自身が「幾多の悲劇」というように、極めて普遍的に存在する現象に過ぎない。共産主義者の論法はその典型であるし、「負の言葉の魔力」は、朝日自身がさんざん使っている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

旭日旗問題の過去と現在

『月刊日本』2018年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年10月22日

 9月28日の朝日新聞の記事によると、韓国海軍の報道官は27日、済州島で10月10~14日に開く『国際観艦式』で、自国の国旗と太極旗だけを掲揚するのが原則だと、日本など参加国に、8月31日付で通知したと発表した。これは、日本の自衛艦旗である、旭日旗を締め出すのが目的であるのは、あまりにも明らかであった。

 この要求に対して、28日に行われた記者会見で、当時の小野寺防衛相は、「自衛艦旗の掲揚は自衛隊法などの国内法令で義務づけられている。国連海洋法条約上も、国の軍隊に所属する船舶の国籍を示す『外部標識』に該当する」(29日、産経新聞)と、拒否する方針をしめした。

 韓国はではその後、10月1日に首相が国会の答弁で、日本を牽制する発言があり、また旭日旗を禁止する法案を提出する動きもあった。日本は参加を要求し続けたが、結局10月5日に至って、岩屋新国防相が、観艦式への自衛艦の参加を取りやめることを発表した。

 ところで、この旭日旗問題に関連して、正式な旭日旗ならぬ旭日模様・旭日デザインが、かなり以前に中華人民共和国(中共)で問題視されて、騒ぎになったことは、全く忘れ去られてしまっている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

朝日新聞の「敗北宣言」

『月刊日本』2018年10月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年9月22日

 朝日新聞はこのところ、平成時代を回顧する記事を、「平成とは」のアイコンのもとに掲載しているが、9月3日から6日まで、第三部「うつろう空気」として四回連載している。そのテーマは「沖縄」「外国人」「メディア」「世代」で、「沖縄」で基地問題への冷静な見方を紹介しているように、従来の主張を修正する動きがうかがわれる。「メディア」、特に「世代」には、朝日による「敗北宣言」と言うべき論調が観取される。なお各回で担当記者は変わり、簡単な自己紹介が付いている。

 「メディア」では前半で産経の雑誌「正論」の編集長を勤めた大島信三へのインタビューをのせ、平成になって保守言論が読者の支持を得てきた状況を紹介する。朝日としては極めて異例であろう。

 後半はテレビの問題に移り、「朝まで生テレビ」などが言及されるが、最も注目しているのが「たかじんのそこまで言って委員会」で、これはノンフィクションライター・西岡研介によって、「『ぶっちゃけ』の名の下に、『敵』に対する差別的で排外的な気分をあおってきた番組だ」と徹底的に批判されるが、製作者側の見解は全く出さない。

 またメディアコンサルタントの境治は、「在京キー局の情報番組などを調べたところ、森友学園問題や日大アメフット部のタックル問題など一つの話題を集中的に伝える傾向が、ここ数年で強まっているのを確認した」「『悪役』が誰かわかりやすい話題が好まれる。常にたたける相手を探し、徹底的に打ちのめす傾向が社会的に強まっているのではないか」と言っているが、この現象こそ、別に最近のことではなく、朝日新聞が以前からとってきた報道姿勢に他ならない。すなわち朝日による、ジャパンバッシングである。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

朝日新聞の虐日偽善主義

『月刊日本』2018年9月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年8月22日

 オウム事件の死刑囚13人のうち、7月6日に7人の、同26日に6人の死刑が執行された。朝日新聞には、7日と27日の朝刊に、降幡賢一・元朝日新聞編集委員が、「暴走の闇 私たちにとって無縁か」と「すさんだ時代の象徴として」と題する、二つのコラムを書いている。

 元編集委員の立場の人間が執筆しているのは、オウム事件で、最も活躍した記者であったからだろう。同氏には、「オウム法廷」と題する、何冊もの著作が存在する。ただし私が降幡氏の名前で思い出すのは、例のサンゴ事件の方である。


 忘れてしまった人も多いかも知れないが、正月に天皇の代替わりがあった1989年(平成元年)の4月20日の朝日夕刊一面に、サンゴが傷つけられている、大きなカラー写真と共に、沖縄のサンゴ損傷行為で、日本人を厳しく告発・弾劾する記事が掲載された。タイトルは「サンゴ汚したK・Yってだれだ」とあった。写真に添えられた文章の執筆者こそ降幡記者であった。

 文章はまず、「これは一体なんのつもりだろう。沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へ、長径八メートルという巨大なアザミサンゴを撮影に行った私たちの同僚は、この『K・Y』のイニシアルを見つけたとき、しばし言葉を失った」と言う冒頭からはじまり、「日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ててきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の・・・。にしても、一体『K・Y』ってだれだ。」と、感情的・攻撃的な表現で結んでいる。

 この記事には、まず地元のダイバーから疑問がもたれ、調査の結果、朝日新聞の写真部員が、意図的に傷つけたことが判明した。つまり完全な捏造写真であったのである。そのためこの写真部員は辞めさせられ、当時の社長は辞任に追い込まれた。ただしサンゴ事件が有する根本的な問題は、写真が完全な捏造であったために、単なる捏造事件と理解され、この事件の本質的な悪質性、犯罪性が、かえって分からなくなってしまっていることである。  では何が根本的な問題なのか。それは写真だけでなく、記事の文章そのものにある。そのことが30年たった現在に至るも、全く見逃されているのである。この写真が捏造でなく本物であったとしても、記事の文章には日本人にたいするとんでもない誹謗・中傷が、とくとくと述べられているのである。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

スポーツの時だけ「ニッポン」を絶叫する人たち

『月刊日本』2018年8月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年7月22日

 ロシアでワールドカップ・サッカー大会が開催され、日本も参加したために、連日にわたって大量の報道が繰り広げられた。結局、戦前の予想を裏切って、予選リーグを通過したものの、トーナメント第一回戦で敗退する結果となった。この間、西野監督の采配については、評価したり批判したり、手のひら返しが繰り返されて、まことににぎやかのことであった。この報道の在り方は、あまりにも騒ぎすぎであると、言わざるを得ない。

 ワールドカップ・サッカーは、ナショナリズムを発揚する舞台になっていることは、現実問題として存在しているだろう。その意味で今度の大会において、極めて興味深い出来事があった。6月22日に行われた、スイス対セルビア戦で、スイスのシャキリとシャカの両選手が、ゴールを決めた際に、両手を胸の前で交差するポーズをとった。この両選手はスイス国籍ではあるが、旧ユーゴスラビアのコソボの出身で、アルバニア系であるという。両手の交差は、アルバニア国旗にある双頭の鷲をイメージしており、これはアルバニア・ナショナリズムの発揚であるわけで、とくに相手がセルビアであったことがポイントである。本人たちは説明しなかったようだが、結局、25日になって国際サッカー連盟の規律委員会は、両選手に1万スイスフラン、さらにもう一人に5千スイスフランの罰金を言い渡した。また事前に緊張を高める言動のあったセルビア側にも、それなりの罰金が科されたという。故国を離れても、民族意識を強固に持ち続ける人々が、この世界には存在するのである。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

マスコミ村のセクハラを追及せよ

『月刊日本』2018年7月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年6月22日

 5月21日、谷口真由美・大阪国際大准教授が代表の、「メディアにおけるセクハラを考える会」が、日本外国特派員協会で記者会見して、メディア関係者35人から調査した150のセクハラ事例を発表した。翌22日の朝刊で新聞各紙が取り上げているが、その日の同じ紙面には、結局辞任に追い込まれた、狛江市長のセクハラ問題が、写真入りで大きく取り上げられているのに、考える会の記事はずっと小さい。問題の重大性から言えば、東京都の一小規模市の首長の問題より、メディア全体に及ぶセクハラ疑惑であるのだから、はるかに大きいはずである。そうしないのは、メディア自身に直接的にかかわる問題だからである。

 ところで各紙の記述は同一ではないが、朝日新聞の特異性がひときわ目に付いた。それは加害者の職業・身分についての部分で、毎日は「セクハラを受けた相手は社内の上司や先輩が40%と最多。出演タレントや他社の記者など社外関係者も29%に上った。警察・検察関係者からの被害は12%、国会議員ら政治関係者が11%、公務員が8%だった」とある。この数字は項目に異同があるが、読売・東京も紹介している。

 では丸山ひかり記者による朝日の記事は、これをどう説明しているかというと、「加害者の内訳は、警察・検察関係者や議員などの取材対象者のほか、上司や先輩らも少なくなかった。セクハラを職場で相談しても、適切に対応されなかったケースがほとんどだったという」とあるだけで、具体的な%を示さず、社内が最多である事実を隠蔽しているし、その次はメディア関係者であることも、言及していない。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

女性専用車という偽善

『月刊日本』2018年6月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年5月22日

 5月6日の朝日新聞朝刊の「憲法を考える」の連載で、「揺れる価値」シリーズの第四回目、見出しが「女性専用車に『逆差別』主張」との記事がある。これがとても面白い。

 リードは「偏見やハンディを克服しようと特別な対応をすると、『逆差別だ』と言われてしまうことがある。憲法14条は『法の下の平等』と『差別の禁止』をうたうが、空気のように社会に残る差別が、見えにくくなってはいないだろうか。男女差別を例に考えた。(高重治香)」。

 記事の冒頭は、「2月、東京メトロ千代田線の女性専用車に男性たちが乗り、電車が遅れたというニュースがあった。男性たちのグループのブログには、『男性差別』『痴漢でない男性を追い出すのは憲法14条違反』と書かれていた。たった1両の専用車が、憲法を持ち出すほど許せないのはなぜなのか。メンバー2人に会い、3時間話した」とある。

 65歳の代表は、就職に苦労したので、年齢制限をなくす運動に取り組んでおり、女性に対するクオーター制にも反対している。もう一人の43歳の男性は、男として冷遇されてばかりだと話したという。高重記者が「女性は差別されてきた歴史があり、地位を引き上げても男性と平等になるだけでは」と聞くと、代表は「社会全体に女性差別があったのは戦前の話。落ち度がない今の男性が差別されるのは、不合理だ」と答えたという。3時間も取材した割には、相手の言い分は少な目だが、代表の主張はリーズナブルである。

 高重治香記者のメンタリティーは、次のような記述にもよく表れている、「差別は今も社会に充満する。(中略)救命のため土俵に上がれば下りろと言われる。衆議院議員は約9割が男性で、記者がセクハラを訴えると、大臣が『はめられたというご意見もある』と言い放つ・・・。」最近の話題も盛り込んだ、極めて感情的な表現である。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

日本にはびこる「精神的中国人」

『月刊日本』2018年5月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年4月21日

 3月21日の産経新聞に、北京の三塚聖平特派員による、実に興味深い記事が出ている。その見出しに「旧日本軍賞賛『精日』が話題に」「「王外相『中国人のくず』」。記事の冒頭は、「旧日本軍の軍服を着て『日本軍国主義』など日本を称賛するような行動をとる『精日』(精神的日本人)と呼ばれる中国人の存在が、20日に閉幕した全国人民代表大会で話題になった。閣僚が『中国人のくず』と非難したほか、『精日』の処罰を求める意見も出た」とある。

 この記事によると、ことの発端は、2月に南京で旧日本軍の軍服を着た人間が写真を撮り、それをインターネット上で公開したことで、「精神的日本人」であると、批判が集中していたらしい。

 それがさらに大きな話題になったのは、3月8日の全人代閉幕後の王毅外相の記者会見で、この件について質問を受けた同外相が、怒りをあらわにして「中国人のくず」だと罵ったからである。

 この問題については、翌日3月22日の産経新聞でも取り上げられている。それは「石平のチャイナウオッチ」欄で、最初の問題発生の状況および事件の経緯を、比較的詳しく説明しているので、紹介しておく。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

論語読みの論語知らず

『月刊日本』2018年4月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年3月22日

 小川栄太郎氏の朝日批判の著作が気に食わないとして、提訴している朝日新聞だが、ケント・ギルバート氏の本に対しても、よく売れていることに対してイチャモンを付けている。それは3月6日朝刊の、「ケント・ギルバート氏の中韓本 売れる理由は」という記事である。ギルバート氏の『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』と言う本が、昨年の新書・ノンフィクション部門で47万部とトップだったという。

 儒教と言えば思い出すのは、東アジアの経済成長を説明する理屈として、儒教文化圏なる概念が使われたことがあった。またこれと関連して、東アジア共同体の構想もあった。しかし中共の覇権主義の顕在化によって、昨今で儒教文化圏も東アジア共同体も、とんと聞かれなくなった。

 儒教に対する親近感は、シナ文化を長く受容してきた日本には基本的に存在し、それは現在でも結構継続していて、児童も含めた論語の根強い流行はその表れてあろう。ギルバート氏の本の特徴は、いままでプラス価値として説明されてきた儒教をマイナス価値として、説明したことにあるのではないか。その意味で、ギルバート氏の主張は日本人にとって、新鮮であったのだろう。

 ところで、私はギルバート氏の本を読んでいないので、具体的にどのように説明しているか知らないが、この本のタイトルや朝日の記事から見るかぎり、ギルバート氏の儒教に対する捉え方には、かなり誤解があるのではないかと思われる。タイトルは「儒教に支配される悲劇」であり、記事には「中韓では『儒教精神から道徳心や倫理観が失われ』『自分中心主義が現れて』きたと指摘」とあるが、儒教は本来、道徳心や倫理観についての教えであったはずである。すなわちシナ人や朝鮮人の悲劇は、儒教そのものに原因があるのではなく、逆に儒教の教えを全く理解せず、ましてや実践できないことにあると言うべきなのである。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

新聞の「シナ・ポチ」ぶり

『月刊日本』2018年3月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年2月22日

 1月25日の新聞各紙の朝刊には(毎日のみは、なぜか夕刊)、中共の中国科学院の研究チームが、クローン猿を生み出すことに成功したニュースが掲載されている。それによると24日付のアメリカの科学誌の電子版で発表されたもので、カニクイザルの2匹のメスであり、写真も載っている。

 そのやり方は朝日によると、「カニクイザルの胎児の体細胞から遺伝情報が入った核を取り出し、あらかじめ核を抜いた別のメスの未受精卵に移植。成長を促す特殊な処理を施して代理母となる21匹のメスの子宮に移したところ、6匹が妊娠し、そのうち2匹が生まれた」とある。体細胞クローンは、1996年、イギリスで羊の「ドリー」で成功し、その後マウス、牛、豚などで行われてきたが、今回特に注目されるのは、霊長類では初めてだからである。つまり人間にも応用できる可能性があるわけだが、現在は多くの国において法律で禁じられているという。

 クローン猿のニュースについての反応は、朝日は翌日の天声人語で、ドリーほどの衝撃はないとしながら、クローン人間の可能性には注目し、とくに「ただ成功したのが中国というのは気になる。独自の尺度で物事を進める国である」と述べているのには、ずいぶん忖度した表現となっている。隷中朝日ですら、危惧を表明せざるを得なかったのだが、中共は「独自の尺度」どころか、わがまま勝手にやりたい放題をしている、完全な悪逆非道国家ではないか。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

朝日新聞・岩波書店の矛盾

『月刊日本』2018年2月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2018年1月22日

 10月に出版された小川栄太郎氏の著書「徹底検証『森友・加計事件』 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪」に対して、朝日新聞はかねてから謝罪と損害賠償を要求していたが、12月5日に至って東京地裁に提訴するに至った。それは著書の内容が事実無根の誹謗中傷であり朝日の名誉が毀損されたとして、同氏と出版社に、謝罪広告と5千万円の賠償を求めるものであった。

 言論に対しては言論で対応すべきであるのに、言論の戦いを拒否し、国家権力を利用して、言論を封殺しようとするものであり、言論機関として決して許されない境地に突き進んだわけである。そもそも言論としての戦いであっても、朝日は何百万もの発行部数を誇る、巨大なメディア権力であるのに、他方は弱小な個人と出版社であるから、圧倒的に有利な立場であるのに、朝日が提訴に踏み切ったのは、よほど批判がこたえたからなのか。

 核爆弾とミサイルの開発に驀進する北朝鮮に対しては、対話の必要を強調してやまない朝日新聞が、作家と出版社相手では、対話を拒否するありさまは支離滅裂で、滑稽極まりないと言わざるを得ない。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

勅命に屈服した総理大臣

『月刊日本』2018年1月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2017年12月22日

 12月1日に皇室会議が開催されて、天皇陛下の退位が平成31年4月30日で、翌5月1日が新天皇即位・改元という国家の重大事が、事実上決定した。翌12月2日の各紙朝刊には、大々的に報じられた。

 それらの記事を目にして改めて思わされたことは、「退位の意向をにじませた、昨年8月のお言葉」という表現の空々しさである。意向をにじませたどころか、退位を求められたのであり、しかも期限まで限って要求されたわけであるから、これは明らかな勅命に他ならない。

 これは疑問の余地のない皇室典範および憲法に対する違反であって、すなわち立憲主義なるものは、真っ向から天皇陛下によって否定されたわけである。ところが立憲主義を名目として、安保法制に大反対していた人々は、それを簡単に容認してしまった。かえって異論を唱えたのは、いわゆる保守の人々であった。つまり安保法制に反対して人々の唱えた立憲主義は、本気でなかったことが、見事に証明されてしまった。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

日本は米国の軍事的植民地だ

『月刊日本』2017年12月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2017年11月22日

 11月5日、アメリカのトランプ大統領が来日した。その途中、ハワイで「リメンバー・パールハーバー」とツイッターに投稿し、東京には横田基地に到着し演説した。これはいまだに東京裁判史観を継続させ、日本がアメリカの巨大基地が存在する、アメリカの軍事的植民地であるという現実を、再確認する行為・儀式であったのであろう。

 日米首脳会談は6日に行われ、その内容は7日の朝刊に詳しく掲載されている。朝日の紙面第2面「時時刻刻」欄の大きな横見出しには、「日米『完全一致』演出」とあるが、この記事のデジタル版の見出しは「トランプ氏、米製武器「売り込み」突出 安倍首相は即応」となっているのが、興味深い。これが朝日の最も注目する点なわけである。

 その武器売り込みの部分は、「だが、日本政府関係者の予想を超えて、トランプ氏の言動が記者会見で突出したのは、米国製防衛装備品の『売り込み』だった。」「『非常に重要なのは、首相は(米国から)膨大な量の兵器を買うことだ。そうすべきだ。我々は世界最高の兵器をつくっている』。トランプ氏は米紙記者が尋ねた日本のミサイル防衛の質問に対して、一気に話し始めた。具体的な防衛装備品名まで言及し、日本がこれらを買うことで『我々に多くの仕事を、日本には多くの安全をつくる』と述べた。」とある。これに対して安倍首相は、直ちに同意したという。

 同日の天声人語も、この武器購入問題を取り上げ、トランプ大統領は「兵器のセールスマン」であり、その言い方は「あからさま」であり、「北朝鮮への対応とビジネスとの線引きは意外とあいまいかもしれない」と述べている。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

偽善は精神の麻薬である

『月刊日本』2017年11月号 酒井信彦の偽善主義を斬る 2017年10月22日

 今月号より、「酒井信彦の偽善主義を斬る」との表題で、書かせていただけることになった。私は現在の日本が抱える最大の問題は精神の病であり、それこそが偽善主義の蔓延であると考えるからである。

 今回の総選挙において、民進党が希望の党に身売りして、それに対する不満分子が立憲民主党を結成した。この集団をマスコミは、リベラル派と表現しているが、これは全くの誤用である。このリベラルは、保守とリベラルというように、対概念として使われているが、昔は保守と革新と言っていた。彼らリベラル派こそ、実は人権、民主主義、言論の自由など、リベラル的価値を尊重しない、似非リベラルであり、すなわち本質的な偽善主義者である。

 一方、保守言論はこの「リベラル」を、共産主義を信奉する左翼が生き残っているかのように理解しているのも、大きな誤りである。もちろん共産主義信者の日本共産党のような人々もいるが、偽善主義におかされている日本人は、さらに限りなく広範に存在する。

  これは私がたびたび指摘することだが、鳩山由紀夫という元首相は、母親から何億円もの小遣いを貰っていた人物であり、このような人間が左翼であるはずがない。同人は引退後も、韓国に行って土下座するなど、反日活動に勤しんでいる。

 また日本のカトリック教会の最高幹部に当たる、カトリック司教団は日本の歴史問題について、なんども戦争の歴史を反省すべきとの声明を出している。またカトリック教団としては、慰安婦問題でも、靖国参拝問題でも、日本政府を非難しているし、カトリック系の学校に対して、日の丸・君が代を使用しないように要望している。日本カトリックの最高幹部が、左翼であるはずがない。その一方で、西欧カトリック教徒が世界侵略の過程で、さんざん犯した残虐行為を、同じカトリックとして反省しているとは、聞いたことがない。偽善の極みである。

 つまり、偽善とは偽りの善ということだから、自分が善良な人間であること、良心的な人間であることを、装うことである。それによって精神的満足、精神的優越感を味わいたいのである。その意味で、偽善は精神の麻薬と言える。いったんそれに味を占めてしまったら、そこから抜け出すことは極めて困難である。

続きを読む

  • Comments (Close):
  • TrackBack (Close):

Index of all entries

Home > 月刊日本 Archive

検索
Nationalism_botをフォローしましょう

Twitterをお楽しみの方は、
Followしてください。

リンク集
フィード購読リンク
QRコード
 
QR_Code.jpg

このブログを携帯でご覧になれます

ページのトップに戻る