映画『パプリカ』公式ブログ

世界最高峰のクリエイターによって誕生したパプリカは5月23日いよいよDVD発売!宣伝担当によるちょっとだけ舞台裏ブログ

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●第二の手引き/「有象無象」

「第一の手引き」への好評を寄せてくれた皆様、どうもありがとうございます。
「日曜なのに早起きして、4回目」!に行ってくださったというbravoさん、「今日2回目見てきました」というムーさん、どうもありがとうございます。
「パプリカを観に行ったときに今監督のご両親に会って、お話しました。お母様からパプリカのキーホルダーをいただきました」と仰るmatsuさん、その話は先日電話で母から聞きました。息子と違ってたいへんフレンドリーな人なんです。
「本当は長々と書いたのですが文字数が多くて投稿できなかった」とのことですが、テキストが残っているようなら私個人のウェブにあるBBS(http://free1.has-u.co.jp/cgi-bin/free/media/u-bbs.cgi?room=kontact)にでも書き込んでみてください。私はいつも書き込むはテキストエディタなどで作成して何回かに分けて載せております。
スマイル一番さん、kyousei3474さん、pocoさんも第二弾への期待をいただきましてありがとうございます。
ということで、好評に気を良くして「第二の手引き」は前回にも増してボリュームが膨らんでしまいました。なので2回に分けて掲載いたします。

●その1

国内外を問わず『パプリカ』を御覧いただいた方々から多くのありがたい感想をいただきますが、もっとも印象に残ったと仰ってもらえるのが「パレード」です。
この夢の中を練り歩くパレードは制作現場でも単に「パレード」とか「有象無象」などと呼んでいました。作画の密度感も大変印象的だったと思いますが、その色彩や音響や音楽と合わせた映像のシーンとして、見る人の心に引っかかりを与えられたのではないかと思います。

パレードというモチーフは原作の小説にはありません。
原作にないにもかかわらずこんな厄介な代物を登場させたのはもちろん理由があります。
これは何度もインタビューで話したことでもありますが、要するに原作の小説のように個々人の夢に細かく立ち至ったり、悪夢の描写を色々な形で描いている余裕がない、という映画制作上の制約から逆算して考えた悪夢の象徴みたいなものです。あれこれとイメージを重ねなくても、このパレードが出てくれば悪夢ですよ、パレードは侵入してくる悪夢ですよ、という記号として機能させたかったわけです。
プロットか脚本に入るあたりで監督が「是非パレードを出したい」と言い始めたのがきっかけではなかったかと思われます。悪夢の象徴的なモチーフとして、本来動くはずのない無機物も有機物も含めてパレードして来る。
これは何か強烈なイメージではないか、何より動くはずのないものが動くというあたりにアニメーションとしての力が宿るかもしれない、という予感めいた感触だけが裏打ちとなってくれましたが、シナリオを重ねて行くうちに映像的なイメージがはっきりと育ってきて、最終的には「パレードのシーンにインパクトがなかったら映画『パプリカ』は失敗だ」とまで思いこむようになりました。
そのくらい重要なモチーフでした。

まずこのパレードの全体的なイメージについて。媒体取材でずいぶん口にしてきたことなのでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、パレードは「捨てられたものたちが帰ってくる」というイメージです。
本篇内でも、理事長の乾がこう言っています。

「非人間的な現実世界にあって、唯一残された人間的なるものの隠れ家、それが夢だ。あのパレードは現実を否応なく追われた難民なのだ」

これだけで納得できる人は珍しいかもしれませんので補足いたします。
たとえば。人間は科学や文明の進歩と反比例するように宗教だとか神話に対する信仰心を失ってきましたよね。「非科学的」という伝家の宝刀で色々なものたちを切って捨ててきたことには皆さん同意していただけると思います。
100年前の日本人が道端でお地蔵さんを見るときの思いの深さや複雑さより、現代の日本人がお地蔵さんを見るときの思いの方が随分と単純になっている。つまりそれは宗教性が希薄になっているということで、言い換えるとその分宗教心みたいなものを捨ててきた、と。もちろん、現代にあっても濃厚に宗教性を携えている方々もおられるでしょうが、個人的な話ではなく社会全体としてのお話です。
あるいは、バブルの頃には何より消費が美徳とされていたことはご記憶に新しいと思いますが(年若い人にはすでに分からないことかもしれません)、まだまだ使用に耐えうる家具や家電を「より新しくより便利により豪華に」というメディアの垂れ流す煽り文句にどいつもこいつも素直に従いやがって、次々と新しい物に買い換えてきたわけです。で、ちょっと景気が悪くなると手のひら返して「もったいない」とか平気で抜かしやがる。ふざけんじゃねぇよ、ったくよぉ!え!? ……おっといけない。怒りに我を忘れてしまいました。
ともかくそうやって天寿を全うしなかった物たちがどっさり捨てられてきた。どっさりと捨てられた、そのいわば剰余に預かってたくさんのホームレスが生まれてきたわけですが、彼らホームレスだっていわば捨てられたものたちの一員といって良い面があって、彼らの家族を求める気持ちは『東京ゴッドファーザーズ』という素晴らしいアニメーション映画に描かれているので是非ご覧下さい。
あれ? 話題が混線してきたぞ。DCミニのせいか?

宗教性やらまだまだ使える家電や家具、あるいはまた人間が成長するに従って捨ててきてしまうものたち、たとえば好きだったオモチャとか衣服、それとか初恋の人とか、苦い失恋の想い出とか、成就できずに捨て去ってきた夢や希望……脱線ばっかりしてんじゃねえよ、というツッコミは無しにしていただくとして、そうした捨ててきてしまったものたちがパレードをなして夢の路を戻ってくる、と。
捨てられたものたちだって自分たちが存在したことを、忘れないでもらいたいでしょう、きっと。
この「捨てられたもの」というイメージはある意味『東京ゴッドファーザーズ』からの流れでもありますが、実はその淵源はP-modelのアルバム『音楽産業廃棄物』に求められます。念のために御紹介しておきますと、P-modelは『パプリカ』で素晴らしい音楽を作ってくださった平沢さんのバンドです。
この『音楽産業廃棄物』というアルバムの中の名曲「回収船」の歌詞に「見晴らす程のニューロンの街かどで 出会おう 捨てられたもの全てに」とありまして、この一節がパレードのイメージの発生源といってもよいです。
先の歌詞から想像もつくかもしれませんが、「捨てられたもの全てに出会う」というのは決してネガティブなイメージではなく、たいへんポジティブなものです。だから『パプリカ』本篇内で「捨てられたものたちのパレード」は悪夢の象徴として登場させておりますが、実は私としては善きものだとも思っているわけです。ただ、いかに善きものであっても、噴出する場所を間違えるとエライことになる、迂闊に手を出していいものではない、という考え方でした。
しかし、私にとっては「善きもの」であるパレードを擁護しているのが悪役にあたる乾なんですから、演出する方としては大変な「ねじれ」を抱えていたんです。ホントに。

平沢さんがらみの話題が出たので、先にパレードの音楽について触れたいと思います。パレードは絵的にもインパクトがあると思いますが、音楽も耳について離れないくらい印象に残られた方も多いと思います。国内外いくつかのインタビューではこんなことを聞かれました。
「どうやったらあんなイメージにぴったりの曲を作ってもらえるんですか?どのように音楽イメージを伝えるんでしょう?」
わっはっは。こちとら昨日今日のヒラサワリスナーじゃねぇんでいッッッ!
音楽に限らず、パレードは「晴れやかすぎて気色が悪い」とイメージしておりまして、平沢さんにもそうお伝えして名曲「パレード」を作っていただきました。
媒体取材を通じて、私は随分と「晴れやかすぎて気色が悪い」と口にしておりまして、やけに口に馴染むと思ったら、『妄想代理人』のオープニング曲のイメージをお伝えする際に同じセリフを口にしていたのでした。こちらも名曲です、「夢の島思念公園」。もちろん平沢さんの作詞作曲。「夢の島思念公園」にまつわるささやかな裏話は私個人のウェブサイト内にある「“妄想”の産物」、妄想の十「笑う人、まどろむ人」に記してあるので、興味ある方はお立ち寄り下さい。(http://www.asahi-net.or.jp/~xw7s-kn/paranoia/mousou010A.html
パレードの楽曲イメージをお伝えする際、平沢さんには先の「晴れやかすぎて気色が悪い」の他にこんな具体的なこともお伝えしたと思います。
「大勢のチンドン屋が「ハルディン・ホテル」を打ち鳴らしてやってくる」
すいません。また専門用語が出て来てしまいました。「ハルディン・ホテル」は平沢さんのファーストソロアルバム『時空の水』に収録されている名曲で、軍楽のように勇ましく、森羅万象の優しさに溢れています。
音楽にはまったく疎い私(実の兄がミュージシャンのくせに)のこんな拙いリクエストでも、平沢さんはこちらの意図以上を汲み取ってくれました。その結果は皆さんが耳にしたとおりの素晴らしい音楽です。

本篇のBGMとしては「パレード」はインストルメンタルだけですが、サントラ盤や平沢さんのソロアルバム『白虎野』には歌詞のついたバージョンが収録されています。この歌詞もすさまじい内容なので是非お聞き願いたいのですが、『パプリカ』制作中に一足先に歌詞を知らされた私は、その詩の中の一節が特に気になりました。
「“頼みはSSRI”?」
はて? 頼むに足るようなものでSSRI?……『怪奇大作戦』?そりゃSRIか……旧ソ連?そりゃUSSRか…… 戦略防衛構想?…そりゃSDIだよな。
SSRIは実は抗欝剤のことなんだそうで、私は恐れ入りました。
これに刺激された結果、本篇のパレードでついお遊びをしてしまいました。パレードの有象無象の中に、アドバルーンが6本ほど出てくるのですが、そのアドバルーンの幟に何を記そうか、と考えているときにふとこの歌詞を思いだした。そこで早速次のような文字を入れることにしたのです。
「抗鬱剤産地直販大安売り!」
こういうのを心ない冗談というのでしょうか。
画面上ではほとんど見えませんが、他にもこんな文字が書かれていました。
「ユートピアは投資信託で」
「脳内麻薬棚卸し大放出!」
「産業廃棄物記念博物館開館」
「天然記念工業品博覧会」
「輸入神仏像ブランド品セール!」
バカですね、ホント(笑)
でもこれはこれで一所懸命に「あり得ないもの」「矛盾したもの」を考えてるんですよ。
圧迫された制作スケジュールで時間が無い無いとかいってる最中に、監督がない頭を絞ってこんなことを考えていたんですが、しかし画面に登場する以上、文字なら何でもいいってわけにもいきません。それにいつ宣伝や取材などにおいてクローズアップされるとも限らない。もしそれが読めてしまった場合、映画に不似合いなものであってはガッカリでしょう。考えていて楽しかっただけだという話もありますが。

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今日「パプリカ」見てきました。また観に行ってきます! 平沢進さんの音楽と一緒にパプリカが飛んでいくシーンには鳥肌がたちました。 これからも作品制作がんばってください。

2006/12/26(火) 午後 8:15 [ s-a-h-y ]

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先日『パプリカ』観ました!平沢さんのライヴ『白虎野』で監督に出逢い、図々しく監督にサインも握手もしていただいてしまった私ですが、私はその時こんなことを監督に口走っていました。「『パプリカ』がんばってください!」と。そんな心配せずとも『パプリカ』、最高でした。あれは失言だった…と改めて後悔。 OP素晴らしかったです。近々また観に行きます!!

2006/12/27(水) 午前 0:36 [ lot*s_g**e_ty*e_a ]

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(続けて2度目の投稿で恐縮ですが)その節は今監督本当にありがとうございました! 私たちはDCミニを付けずして、「パプリカ」という名の夢を共有させて頂きました。さらに有り難き「手引き」の知識をプラスして、また夢を観に行きたいと思います!!

2006/12/27(水) 午後 4:35 [ lotus_gate_type_a ]

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私もパプリカ見てきました。 かなり面白かったです。

2006/12/27(水) 午後 9:51 Mr.popo

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2007/2/6(火) 午後 8:58 [ fudevusabz ]

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2007/2/21(水) 午前 0:24 [ mortgage loan ]

11年越しのメッセージをここに。
私は今更パプリカに当てられたものです。
とんでもない映像と音楽の奔流
その一つ一つが脳を焼き、一音一音が耳を焦がしました。
今やあなたの作品がすでに存在するものしかありえないというこの現実に非常の悲しみを覚えるものであります。

何を言っても嘘くさくなるので短く。
アンタすげえよ!もっと生きてて欲しかったよ!

2017/3/5(日) 午前 0:43 [ ▽Strike▽ ]


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