ここ数年、住民たちの苦情で、取り止めになる例が相次いでいるようだ(※画像はイメージ)

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 うるさいから止めろ、と言われても、音を出す側に相応の理はある。だとしても騒音と断じられてしまうのか。

 たとえば、運動会の始まりを告げる花火。主に宮城県など東北6県では、運動会のみならず、収穫の秋を祝う町内の祭りなどの行事を行う合図として、古くから用いられてきたという。

 それがここ数年、住民たちの苦情で、取り止めになる例が相次いでいるのだ。

 地方紙記者が解説する。

「“夜勤明けで眠れない”などの住民からの抗議で、今年の運動会では仙台市内に186ある小中学校のうち、約半数の90校で打ち上げを見送りました。確かに早朝から花火の音が響き渡れば迷惑だと思われるかもしれませんが、この合図は明治以来続く地域の伝統的な慣習です」

ここ数年、住民たちの苦情で、取り止めになる例が相次いでいるようだ(※画像はイメージ)

 お隣の福島県でも、同様の事態が起きている。福島市では、昨年から住民の苦情が市役所に寄せられ、今年は二つの小学校で花火の打ち上げを見合わせた。

 市教委の担当者が言う。

「苦情で取り止めたわけではなく、あくまで現場と協議して、メールなど別な方法でも運動会の開催を周知できるという判断から、午前6時台に行っていた花火を取り止めました。本番が始まる8時台の花火は例年どおり実施しました」

 運動会も秋祭りも年に1回限りの行事である。なにも毎朝、花火が打ち上がっているわけではないのだ。

 年1度と聞けば、まもなく迎える大晦日でも不寛容の声が鳴り響く。東京・小金井市にある曹洞宗の寺院・千手院は、除夜の鐘を5年前から止めたそうだ。

「近隣の方から苦情が来て裁判所で調停が開かれたのですが、100万円かかる防音パネルを設置しなくてはならなくなりました。音が遠くまで聞こえなくなるし不自然なので、今年も鳴らすことはありません」(住職)

 同じく住民の抗議を受けながら、鐘を復活させたのは真宗大谷派の大澤寺(だいたくじ)(静岡・牧之原市)である。

 住職の今井一光氏(61)はこう話す。

「百八十度発想を変え、正午から除夜の鐘を突く予定です。昨年も日が高いうちに鳴らしたところ好評で、近隣から苦情も来なくなりました。昼間の方が明るいし寒くないので、今まで足を運び辛かったお年寄りや子供たちも、気軽に鐘を突けるようになりました。お手伝いに来る婦人部の方も、夕方は家でおせちの準備ができると喜んでいますね」

 まさに「災い転じて福と為す」というワケだが、夜に鐘の音を聞きながら年越し蕎麦を啜る光景が、ここでは見られなくなってしまったのもまた事実。世間を覆う禁止拡大の波は、収まる気配が見えないのだ。

「週刊新潮」2019年12月12日号 掲載