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朝日新聞の第三者委員会を嗤う

『月刊日本』2014年12月号 羅針盤 2014年11月22日

朝日新聞の慰安婦報道の撤回に関連して、二つの委員会が作られることになった。一つは「第三者委員会」なるものであり、もう一つは「信頼回復と再生のための委員会」という名称のものである。前者はすべて外部の委員だが、後者は外部・内部半々である。重要なのは第三者委員会で、慰安婦報道の外国に与えた影響まで審議するという。しかし短期間でそこまで審議できるはずがない。

さらに本気度が疑われるのは、そのメンバーの顔ぶれである。朝日と関係の深い人々であって身内と言ってよく、純粋な第三者・外部の人間とはとても言えない。第一次安倍内閣が成立した時、マスコミは「お友達内閣」と言って揶揄したが、今度の二つの委員会は、朝日版の「お友達委員会」というべきものである。

本気で抜本的な改革を目指すのなら、朝日の従来の報道姿勢を厳しく批判してきた人間を、委員に任命しなければならないはずである。朝日にそれだけの勇気はないだろうが、少なくとも、今まで行われてきた多くの朝日批判を、まじめに研究・検討する責任がある。

ところで四年ほど前に、岩波書店から発行された書籍に、上丸洋一著『『諸君!』『正論』の研究 保守言論はどう変容してきたか』がある、上丸は朝日新聞編集委員で、朝日と反対の立場にある保守言論を、『諸君!』・『正論』の二つの雑誌を素材に調査した成果で、本来『朝日総研リポート』の連載されたものに、「書下ろし」を加えて出版された。本文も二段組みで四百ページを超えるから、「労作」であることは確かである。

序章・終章を入れると全十一章あるが、第八章が「朝日新聞批判の構造」で、両誌による朝日批判を正面から取り上げている。第一節「朝日は日本のプラウダか」では、主として一九八二年の第一次教科書事件の記事が、第二節の「‹排他›は‹寛容›を排他する」では、精力的に朝日批判を展開した片岡正巳の著作が、主にその対象となっている。

ここで上丸が「朝日新聞批判の構造」というのは、個々の論文よりも朝日を批判する人間の考え方そのものを問題とするからだ。例えば「すでにみてきたように、『諸君!』『正論』の論者たちは、味方(われら)か敵(やつら)かの二項対立で世界を裁断しようとする。その視野は非常に狭い。『われら』は反共イデオロギーであり、『反共アメリカ』であり、『正義の国日本』であり、『諸君!』『正論』だ。これに対し、『やつら』はすなわち、共産主義であり、ソ連、中国、北朝鮮などの共産主義国であり、『東京裁判史観』であり、朝日新聞だ」という記述がある。

また、「はじめに敵視ありき。両誌の朝日批判は、理屈はあとからついてくる、といった体のものが多い。片岡正巳の論文がそうであるように、正確な事実認識に立っての批判というよりは、憎悪の情念が先に立って肝心の事実認識を誤らせているのではないか、と思わせるものが少なくない」とある。

この本の中に何度も出てくるが、上丸は相手の言葉を反転させて、相手を攻撃する手法を使うのが得意のようだ。それに学ばせてもらえば、この二項対立的に善悪を決めつけるのは、共産主義が最も得意だし、左翼学生の運動を支援し続けた、朝日の発想そのものであると言わざるを得ない。また片岡を批判する言葉は、私が常々朝日の報道に対して、強く感じていることである。つまり上丸の言葉は、そのまま熨斗を付けて返すことができる。

なお、最近の『週刊新潮』十月二日号によれば、素粒子の筆者である真田正明論説委員が、「向こう岸」と「こちら側」として、二項対立的発想を、社内報のコラムで展開しているらしい。

上丸は第八章の冒頭近くで、「両誌創刊以来、ほぼ一貫して朝日新聞批判、攻撃をしてきた。その一編一編について論ずれば何冊本を書いても書ききれない」と言っているから、両誌の朝日批判の論文はかなり収集したのであろう。廃棄されない限り、そのデーターは存在しているはずである。

二つの委員会の委員に、批判的人物を任用しないのなら、せめてこの『諸君!』・『正論』両誌の朝日批判論文を、始めから喧嘩腰の上丸記者のようにではなく、謙虚に素直に調査・研究してもらいたい。いくら傲慢朝日といえども、戦争中の威張り腐った軍人のような精神構造の持ち主ばかりではあるまい。朝日による戦後報道犯罪の歴史を学ぶために、その作業を、特に頭の固くなっていない若い人々に望みたい。

 

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sakai-book01.jpg ← 酒井信彦 著『虐日偽善に狂う朝日新聞―偏見と差別の朝日的思考と精神構造』(日新報道 2013/08出版)


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