オーバーミックス   作:青の魔術師

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第19話 悠久の時を生きるジルクニフ

第19話「悠久の時を生きるジルクニフ」

 

カルネ村

モモンガの実験で作られた城の中でエンリは、皇帝ジルクニフを首を長くして待っていた。

「ゴブリンさん。ジルクニフさんはそろそろ来ましたかね」

「まだです。しかし、偵察隊によりますと凡そ30分程で着くらしいです」

「成る程。ジルクニフさんが、カルネ村の門を潜った段階でモモンガ様に連絡を入れる準備をしてください」

「了解しました」

 

カルネ村の村長になってしまったエンリ将軍は、自身が会得してしまった能力に困っていた。

配下の生命体が保有する能力を数倍に上げ、レベルアップを数倍のスピードで行えること。またそのレベルを全て自分に還元も出来る事である。

 

その結果。

ドブの森に住む野生のゴブリンを軽く殴るだけで粉砕して、オーガを握り潰した時には、考えるのをやめて神様に相談した程だった。

 

「モモンガ様。最近強くなってしまったのですが、何か原因があるのでしょうか」

「不安ならば調べてやろう。【能力鑑定】」

 

モモンガはエンリが開花した能力に思わず、嫉妬をしてしまった。

 

チートすぎるだろ。

・味方の経験値を奪える能力。

・味方の能力を無償で数倍に底上げ。

・味方のレベルアップ速度を数倍から数十倍に底上げをする。

など能力を持ち、下手しなくてもワールドアイテム並みの力を保有しているじゃないか。

本当に味方になってくれてよかった。

 

「どうでしょうか」

「私でも嫉妬する程の才能だよ。君が私の部下になってくれて本当に良かったよ」

「ありがとうございます」

 

回想終了。

 

自分の思い出を整理していたエンリに、手筈通りに部下のゴブリンから連絡が入った。

「エンリ将軍。ジルクニフさんが入城します」

「わかりました。城に通していいですよ」

 

ゴブリンに指示を出したエンリは、魔法詠唱者のゴブリンにモモンガ様に、連絡を入れるようにしてジルクニフを待つのであった。

 

久し振りにカルネ村に来てみたら、何もなかった所に城が建っていたので多少ビックリはしたが、神の所業だろうな思い直し冷静に入城する。

「エンリ将軍。久し振りですね、この城はモモンガさんが用意した物ですか」

「そうですね。モモンガ様が実験でお造りになったものです」

 

などの無駄話をしている暇もないので、ジルクニフを案内するべく話を切り上げる。

そこに、ジルクニフの配慮はほんの少しだけ存在していたのかもしれないが。

「では、モモンガ様がお待ちなので行きましょう」

「行こうか」

 

エンリが所有する城の応接間でモモンガは、待っていた。当然ながら人間風情が待たせやがって、などという不満を持っていた僕もいたが重要な情報を得られるチャンスと、カエルに説明されて渋々納得をするのであった。

 

「初めまして、バハルス帝国皇帝ジルクニフです」

「ナザリックの王であるモモンガだ」

自己紹介を終えた二人は、城の中でも機密性の高い部屋に消えていく。

「早速で悪いが、情報を確認させてくれ」

「いや、話すに当たってダウェンの悪口を言っても怒らないのか」

当然ながら不快にはなるだろうが、我慢出来ると思うと同時に、何故そんな事を思うのか。

「何故、悪口を言うんだ」

「私はダウェンに死ねない身体にされたんだ。まぁ今では感謝はしているが当初は地獄だったんでね」

「成る程ね」

「勘違いして欲しくないが、わたしとダウェンは友達だ。だからこそ、悪口の一つを言えないような間柄では信用できないと思うが、どう思う」

「友達とは、悪口を言えるような仲になってからと言うからな」

「では、話を始めようか」

 

〇〇〇〇

 

ジルクニフが知るダウェンの話が終わった。

自分が受けた行動への愚痴や、ドラゴン達に起こった悲劇などの貴重な話や、法国の神についての成り立ちが含まれていた。

「貴重な話をありがとう、ジルクニフ。」

「いいよ。友達ではないだろうか」

 

そうだな。また私が苦労する事が決定したのかもしれないな。ただ、武力こそが正義である時代だからこそ、モモンガとは友達になれて本当に良かったよ。

 

「確かにな。だけどこれ程の情報をタダで貰ったんだ。何かアンデッドでもあげようか」

「それは素晴らしい事だね。以前にもアンデッドを使用して農業をする計画が、あったんだが失敗してね」

「ほぉ。参考までになぜ失敗したのか、教えてくれないか」

「根本的にアンデッドを沢山支配出来なかった点と、アンデッドの特性で死の騎士が現れて帝国が滅亡しかけた事かな」

 

「成る程。わたしならアンデッドを完全に支配下置いているから大丈夫だな。」

「アンデッドだからな」

「まぁアンデッドだけども。だけどなジルクニフ。私の実験では、私が作り出したアンデッドは、その特性を持っていない事がわかった」

「確かにな、君が言うなら問題がないだろうけど、死の騎士一体でも国は滅びてしまう程に人間は弱いんだ。何か保険が欲しいな。所謂リスクマネジメントだね」

「成る程。それならアンデッドではない、僕を派遣しよう」

「ありがとう友よ」

「いいや当然の事だ。友として相談して欲しい事があるのだが、いいだろうか」

「いいよね。僕と君の間からじゃないか」

 

モモンガはナザリックが抱える問題の一部について、ジルクニフに話す事にした。

結果として、とある国に進行していた亜人の大半が殺されて、スクロールの供給源になると思われる。

「ナザリックでは、スクロールの材料が足りなくはないのだか供給源が無い為、枯渇する恐れがあるのだ」

「それは大変だ。少し考えてもいいかな」

 

ジルクニフは友の悩みを救う為に、自分の問題を解決する為にセリフを考えていた。

この会話の流れ次第ではとある国に恩を売れて、モモンガとも更に仲良くなれるチャンスなのだから。

 

「帝国に竜王国と呼ばれる国から救援要請が来ているのだか、敵が敵だけに帝国の騎士を送れなかったんだ」

「当たり前の決断だな。自分を一番に考えてるその姿こそ、王の鏡だな」

「確かに、その通りだが竜王国の人間もかわいそうだと常々思っていたのだよ。」

「わからなくもない考え方だな」

「その竜王国を襲っているのは、ビーストマンと呼ばれる亜人でね。スクロールの供給源になるんじゃないかと思うんだよ」

「救った我々にも恩を売るチャンスがあり、いい考えだな」

「もっと言えば、ビーストマンは繁殖力が強い為に、殺してもすぐに数を増やせるぞ」

「よし、決定だ。ビーストマンを殺害して竜王国に恩を売る作戦を実行しよう」

「ありがとう友よ。これで人間は救われるだろう」

「そんな事はないさ、スクロールの供給源が欲しいだけなのさ」

「それでも、礼を言わせてくれ。人間を救ってくれてありがとう」

 

そんなにお礼を言うならと、意気揚々とナザリックに戻り作戦実行の為に、またデミウルゴスに丸投げする為に帝国を後にする。

 

 

〇〇〇〇

帝国に届けられた、死の騎士やエルダーリッチの有能性に感動したジルクニフは、以前ダウェンに渡させれ【全種族飲食可能】の効果を持つ、指輪をモモンガに届けたという。

 

余談だが、【全種族飲食可能】の効果を持つ指輪は竜王に造らせた物であり、その効果とユグドラシルにないアイテムとしてモモンガを喜ばせたのは、想像に難くない。

 

「やったぁー。美味い飯が食えるぞぉ」

などと、喜び至高の御方にご飯を作れるシェフがとても喜んだとか。


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