この記事はpyspa Advent Calendar 2019の14日目です。昨日はshibukawaさんでした。
さて、今年はラグビーワールドカップイヤーでした。日本代表の活躍、みんな大好きニュージーランドの完敗、ニュージーランドを破ったイングランドを見事に封じ込めた南アフリカの三度目の優勝など、ラグビー好きにとって話し出したら尽きない夢のような期間でした。
特にスプリングボクスこと南アフリカにおいては、身長200cm超えの超大型選手によるガチガチのフィジカル合戦の一方で170cmほどの選手がフィールドをすばしっこく駆け回って相手を翻弄し、イケメンのキッカーがゲームメイクをする、個性豊かで見ていて楽しいチームでした。
そんなスプリングボクスは、公式ページでラグビー選手の栄養摂取についての手引きを公開しています(した)。
https://www.springboks.rugby/pages/boksmart
注: 10月頃にはPDFがあったのですが、今確認してみるとリンクが見当たりませんでした。代わりに、南アフリカでスポーツのドラッグフリーを目指す団体のウェブサイトからダウンロードできる模様です
http://drugfreesport.org.za/wp-content/uploads/2018/04/BokSmart-Practical-Nutrition-for-Rugby.pdf

ラグビー選手は身体作りに人一倍気を使わなければなりません。前後半の80分ボールを持って当たり続け、かつ走り続けないといけないのです。しかも脳味噌を使いながら、です。さらに国を代表するようなトップ選手は海外遠征や怪我、シーズンのオンオフを適切に管理し、ベストなコンディションを維持しなければお金になりません。資料の導入部分ではこのように説明されています(抄訳)。
素晴らしい食事を摂取したからといって才能のないプレイヤーが世界有数のプレイヤーになることはないが、才能があるからといって適当な食事をしていれば効果的なトレーニングはできないし、パフォーマンスも上がるわけがないのは疑いようがないだろう。
この資料が、ラグビー界でもトップ中のトップのフィジカルエリートにむけたものであることがわかります(当然ですが)。しかしその中身を読んでみると意外と我々のような凡人でも参考になるもので、例えば試合前、試合後、怪我をしている時の栄養摂取について述べている一方で、スーパーでどんな食材を買うべきか、冷蔵庫や冷凍庫、キッチンの棚には何を常備しておくとよいか、海外遠征で訪れるであろうレストランでどういうものを注文すればよいか、といった手引きまで内容は多岐に渡ります。そこで、資料の面白かった箇所を抜粋しここで抄訳として紹介したいと思います(注: 2009年に発行されている資料です)。
まずは飲酒についての考え方からです。
飲酒について
試合後の飲み会が文化として存在していることは認める一方で、アルコール摂取が及ぼす負の側面についてはかなり厳しく指摘しています。
飲酒は反応時間を遅くし、バランス感覚や正確な判断、協調性、強度や動力、我慢強さに加えて体温調整機構の働きを低下させる。アルコールの摂取は酷い判断を下してしまうリスクを高め、抑制が効かなくなり、事故や怪我、ひいては死をも招きかねない。また、回復機構が適切に機能しなくなり、怪我の回復や睡眠を阻害してしまう。
そこで実践的なTipsとして以下の三つを掲げています。
- 24時間ルールを守ること。例えば、少しでも軟部組織損傷や打撲などの怪我を負っていたら試合の前後24時間は飲酒を控えるなど。チームによっては飲酒を禁止しているところもあるほどだ。
- トレーニングや試合後にノンアルコールドリンクをたくさん用意しておくこと。飲酒を選択する選手は、飲む前に水分補給と炭水化物飲料で補給すること。そうすればアルコール摂取もある程度制限されるだろう。
- ビールなどのアルコール飲料には炭水化物を含むものもあるが、アルコール自体に利尿作用や筋グリコーゲンの補給を妨げる効果があるため注意。これはパフォーマンスや回復に影響を及ぼすため、選手は炭水化物の摂取には他の適切な物を選ぶこと
目的に応じた栄養の摂取
原則として、筋量を増やすのと脂肪を減らすのは同時にはできないため、アプローチが異なります。
筋量を増やしたい選手は週あたり0.25–0.5kgの体重増加を目指すべきとし、これ以上増えていれば脂肪が蓄積されている可能性が高いので注意を促しています。
一方、脂肪を減らしたい選手は週あたり0.25kg-0.5kgの脂肪を減らすことを目標とし、さらに行動変容や心理面でのサポートが必要としています。
三大栄養素の摂取量の目安は以下の通りです。
厚労省が出している日本人の食事摂取基準(2015年版)と比べれば多いのですが、筋トレしている人ができるだけ脂肪をつけずにバルクアップを目指す場合と比較すると摂取量の目安はほぼ同じとなるため、妥当な数字であることがわかります。
買い物について
実践的なTips
週に摂取する食事を事前に計画し、必要な栄養を含む買い物リストをまとめて購入すると良い。飽きないように、炭水化物やタンパク質、野菜やフルーツは複数種類のものを用意すること。
ベストな選択
- 低脂肪(2%)あるいは徐脂肪の乳製品を選ぶこと
- タンパク質の脂質は100gあたり10g以下とすること
- 炭水化物の脂質は、一食分(serving)あたり5g以下とすること
- 軽食の脂質は、炭水化物50gあたり6g以下とすること
- 新鮮な果物や野菜を選ぶこと
ラベルの専門用語について
- パッケージに記載されている成分は、含まれる重さの順に並んでいる。脂肪が最初の方に並んでいる場合(ラードやバター、植物油、パーム油やクリーム、ココナッツミルクなど)、その食品は脂肪が多めと言えるだろう
- コレステロールフリーは、ファットフリーを意味するわけではない。コレステロールは、動物由来の食品にのみ含まれる
- “Health” と書かれた食品は防腐剤や食品添加物こそ含まれていないかもしれないが、脂肪過多なケースがあるし、"Light" と表記があるからといって必ずしも低カロリー/低脂肪とは限らないし体重を減らすのに適切なわけではない
- 食品同士を比較するときは一食分のサイズを比較し、またそれを摂取する量と関連づけること
- 消費期限や賞味期限をチェックすること
- カロリー表記はkcalかkJである。kcalをkJに変換するには、4.2倍するとよい
外食について
個人的にはここが一番面白かったです。まずは実践的なTipsから。
- 多くのレストランは、炭水化物を付け合わせとしてタンパク質豊富なメニュー(肉、鶏、魚など)を用意しているものだ。炭水化物の摂取量を高めるため、ポテトなどの炭水化物豊富なメニュー(ポテトチップスはだめだ)を追加で一品注文しよう
- battered, fried, deep-fried, sauteed, creamy, creamed, crumbed といった名のつくメニューを避けることで、脂質の摂取を制限すること。それよりは、steamed, grilled, stir-fried, baked, poached といったものを選ぶとよい。店の担当者に相談する場合は、「脂質抜き」とはオイルやマーガリン、バター、クリームを使用しないことであると伝えよう
- “healthy” というのは低脂質を意味するわけではないので注意すること。例えばサラダは “healthy” だと思うかもしれないが、アボカドやチーズ、魚卵やクルトンを含めば高脂質となる。ドレッシングは別でオーダーするか、あるいは少量のオリーブオイルのみを合わせたバルサミコ酢にしよう
- クリームソースやグレービー、ドレッシング、バター、クリームを使ったメニュー、大量のチーズを使ったメニューは避けよう。ラザニアやキャセロール、ムサカといった合わせ料理はだいたい高脂質なソースと合わせられる。なので、それよりはグリルした魚や肉、ベイクドポテト、炊いたご飯、野菜などを注文しよう。ミントソースやジェリー、フルーツ、ムース、リンゴソースなどはどんな料理にでも合うぞ
- デザートにはフルーツサラダか、フローズンヨーグルトのメレンゲかババロア、フルーツムース、プレーンのスポンジケーキ、カプチーノを選ぶこと
- もしどのように調理しているのかわからなければ積極的に尋ねること
各国のレストランで具体的に注文すべきものまで指示が細かいです。よくわからない料理(特に南アフリカ料理)もありますが、わかる範囲で列挙します。
イタリアン
食べていいもの
- バター抜きのイタリアパン
- グリーンサラダあるいはカプレーゼ
- ミネストローネ (多少のパルメザン)
- イカのマリネ(marinated calamari)
- パスタを選ぶなら、野菜やトマトベースのソース、あるいは赤身肉(ボロネーゼ)やチキン、クリーミーではないシーフードソースのもの
- ピザを選ぶなら半分チーズ、半分野菜か果物をトッピングしているもの
- デザートはイタリアンアイスクリームか新鮮な果物、カプチーノ
ダメなもの
- クリーミーソースのパスタ(アルフレード、カルボナーラ)
- 大量のチーズ、バジルソース、ラザニア、カネローニは脂質が多い
- 脂質の多い肉
- チーズや脂質の多い肉が乗ったピザ
- 熟成肉や塩漬け肉(salted meats)、前菜のチーズ
中国/タイ/マレーシア料理
食べていいもの
- 炊いたご飯(steamed rice)、麺類に炒めた肉や野菜、豆腐をトッピングしたもの
- チキンやエビを蒸して調理したもの
- 少量の油で炒めた料理をリクエストすること
- 透明な出汁のスープ
ダメなもの
- 油に注意!古い油で調理されたものや揚げ物
- チャーハン
- 春巻き
- 揚げた軽食
- ココナッツクリームやミルクで調理されたもの
- ダック
インド料理
食べていいもの
- 炊いたご飯(steamed rice)を食事のベースとすること
- レンズ豆
- ヒヨコマメ
- インドパン(チャパティ、ナンをバター抜きで) と、野菜やチキン、あるいは魚のカレー
- マルガトーニ(mulligatawny)あるいはレンズ豆のスープ
- デザートにはライスプディング
ダメなもの
- 揚げ物やバターを塗った料理(ギーやココナッツミルクで調理されたものも含む)
- サモサ
- 揚げパン
- 肉のカレーや揚げ野菜
- ライスや野菜の大盛は避けること
- ソースは少なめに
- 分厚いチーズのプディングや蜂蜜のディニッシュ
メキシカン
食べていいもの
- 単品で頼むこと
- 米、ビーンズ、トルティーヤ - ファヒータがベストの選択肢
- ガスパチョ(gazpacho)、ブラックビーンのスープ
- デザートには果物を選ぶこと
ダメなもの
- チーズ
- サワークリーム
- 肉の脂身
- コーンチップス
- ナチョス
ギリシャ料理
食べていいもの
- ドルマデス(dolmades)
- イカの焼き物(grilled calamari)
- ラムのガーリックマリネ
- レモンジュース
- ザジキ(tzaziki)
- ハマス(hummus)
- トマトソースで調理した魚
- 十分な量のライス
- オルゾー(orzo)
ダメなもの
- 肉の脂身
- ムサカ(moussaka)
- ギリシャ風ラザニア(pastitsio)
- オリーブオイルの使い過ぎには注意
- 卵やチーズを多く使ったキャセロール(Casseroles)
- バクラヴァ(baklava)
日本料理
食べていいもの
- “yaki” や “nimono” と付いた料理を選択することで脂質の摂取を調整すること。例えば “beef teriyaki” や “chicken yakitori”
- “Sashimi” や “sushi”
- 刻み “wasabi”
- 豆腐料理
- “miso” 汁は良い選択肢
ダメなもの
- “tempura”
- “agemono” や “katsu” は揚げ物を意味するので避けること
南アフリカ料理
食べていいもの
- ダチョウ(ostrich)やシカ肉(venison)
- ひき割りトウモロコシ(samp)や豆
- 粥(pap)
- 赤身肉のブレディー(bredies)やカレー
- 赤身肉のミンチ、ボーボーティ(bobotie)
- Smoorsnoek
- サゴプディング
- 生地なしのミルクタルト
- パン
- バタープディング
- シナモンや砂糖
- 果物のパンケーキ
ダメなもの
- パイ
- サモサ
- Ribbetjies
- Boerewors
- フリッター
- Koeksisters
ファストフード
食べていいもの
- サラダやチキンバーガー
- ステーキサンドウィッチ(グリルした肉で)
- チャツネを添えたフィッシュバーガー
- ソースはトマトソース、バーベキューソース、モンキーグランドソース
- 低脂質のチーズや赤身肉を添えたベイクドポテト、チキン、マッシュルーム
- サンドウィッチ、ラップ、サブ、ロール(赤身肉やチキン、カッテージチーズや魚、サラダと一緒に)
- 赤身肉や野菜カレー
- コーンサラダや三種豆のサラダ
ダメなもの
- フライドフィッシュ
- チップス
- ギャッツビー (gatsbies)
- KFC
- パイやペーストリー
- キッシュ(ベーコンや大量のチーズを使用したもの)は脂質が高い
- シーザーサラダ
以上、資料の中から一般人にも参考になりそうな食事に注目して抜粋してみました。この手引きが一体どれぐらい厳守されているのかは不明ですが、基本的には脂質の摂取にかなり気をつけるよう案内されていますね。
明日はnikuyoshiさんです。