セブン-イレブン「残業代未払い」の呆れた顛末

ガバナンスの利いていない経営体制が露呈

中央で頭を下げるセブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長。12月10日に、全国各地の加盟店で働くアルバイトやパート従業員に対して、残業代の一部が支払われていなかったと発表した(撮影:尾形文繁)

24時間営業をめぐる加盟店への対応やセブンペイの不正利用など、問題が相次いだ2019年のセブン-イレブン・ジャパン。年の瀬が近づく12月の初旬になっても、セブンの経営陣は、また会見で深々と頭を下げた。

「従業員、オーナーならびに関係者の皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」。12月10日、都内で行われた会見で、セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長は謝罪した。

残業代の支払い不足は4.9億円

セブンはこの日、全国各地の加盟店で働くアルバイトやパート従業員に対して、セブンが創業した1970年代から長きにわたり残業代の一部が支払われていなかったと発表した。

記録が残っている2012年3月以降だけで、対象は8129店の計3万0405人、未払い額は遅延損害金の1.1億円を含めて4.9億円に上る。1人当たりの不足額は最大で280万円に達し、平均は約1万6000円だった。今後の進展次第では、対象人数や金額が膨らむ可能性もある。

セブンでは、本部とフランチャイズ契約を結ぶ加盟店がアルバイトなどを雇い、人件費を負担する。給与の計算や支払いは、本部が代行している。この給与計算の過程において、本部が計算式を誤っていた。

一部の加盟店では従業員に対し、休まずに出勤した場合などに支払われる「精勤手当」や、シフトリーダーなどの職務の責任に対しての「職責手当」が支給されている。勤務時間が1日8時間、週40時間の法定残業時間を超えて残業手当が支給される際、この精勤手当や職責手当に対しても残業手当を支払わなければならないが、この部分が一部支払われていなかった。

1974年に東京都江東区に第1号店を出店したセブンだが、1970年代から1980年代に始めた精勤手当や職責手当に対する残業手当は、長らく支払っていなかった。2001年6月に労働基準監督署から支払うように是正勧告を受け、セブンは給与の計算式を変更。だが、精勤手当や職責手当に対する残業手当の計算式は本来、割増率を1.25倍としなければならないが、0.25倍として誤って適用していた。

この原因について、会見に出席したセブンの石丸和美フランチャイズ会計本部長は「法令に関する理解が不足していた。それだけでなく、社内でミスに気づけるチェック体制が整備されていなかった」とうなだれる。

次ページ計算間違いそのものよりも深刻なこと
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
  • 埼玉のナゾ
  • 日本野球の今そこにある危機
  • スージー鈴木の「月間エンタメ大賞」
  • 僕/私たちの婚活は今日も終わらない
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
8

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
  • かず8534b1b475c6
    コンビニ各社の経営者は労働基準法をもう一度勉強しなおした方が良い。フランチャイズと称して、店主にはひとり親方のような労働を強要し、自らの会社でも社員の管理がまともにできていない。コンビニができて相当年数が経つが、昨今の日本の労働環境を全く無視し続けている。それでも店側が十分に儲かれば良いが、大半は苦しい状況にある。フランチャイズシステム自体について根本から見直す必要があるのではないか。
    up81
    down2
    2019/12/15 07:08
  • DMZd209765b420b
    どうせ計算間違えたんじゃなく、着服しようとあえてやってたんだろ。最近セブンは悪い意味で注目されてるし、蒸し返されそうになったから渋々公表したんじゃないの?
    セブンのバイトなんてただでさえ最低賃金でこき使われるのに、更に搾り取ろうとしてたとは。バイトやオーナーなんて、搾取する対象のゴミとしか見てないんだろう。こんな会社で働いちゃダメ。
    up51
    down4
    2019/12/15 09:54
  • masm5804b3841274315
    7-11に限らず…これまでやってきたやり方が通用しなくなっている、他山の石が多数…
    up46
    down1
    2019/12/15 07:20
  • すべてのコメントを読む
トレンドウォッチAD
最新! 危うい会社リスト<br>7つの指標で徹底解析

高成長会社と危ない会社は紙一重。業績順調な企業も先行きは安心できません。突然巨額赤字に陥る、そもそも行き詰まっているなど、将来リスクを抱える会社を多様な切り口でリストアップしました。7つの指標であなたにも見分けられます。