3割1分と29.67。ダヤン・ビシエドが残したこの数字が語るのは、4番としての頼もしさと物足りなさだ。今季のビシエドは外国人投手に強かった。116打数36安打。トータルの打率(3割1分5厘)よりわずかに低いが、エース級が多い外国人に6本塁打、21打点なら及第点だ。
「相手の特徴をとらえ、しっかり準備する。打席に入る前の考え方は外国人投手でも同じだよ」
外国人に強い外国人。同時にビシエドには違う顔もある。今季の両リーグで規定打席に達した外国人は8人いる。全試合出場したのはビシエドだけ。勤勉で責任感が強い。一方、本塁打率(打数÷本塁打数)29.67は、この8人の中では最低で、本数(18)も最少だ。セ・リーグでは12位で、宮崎(DeNA)の下で青木(ヤクルト)の上。外国人に求められる水準は満たしていないが、ビシエドは反論した。
「ホームラン、ホームランとは狙わない。自然に出るものだからね。たしかに去年(26本)から減ってはいるけど、二塁打は増えてるだろ?」
二塁打は26からリーグ最多の43に激増した。顕著なのがホームとビジターでの比率で、ホームでは本塁打は5本しか打てなかったが、二塁打は31本と圧倒的に多い。真っ先に思い付く理由は、ライナー性が多いビシエドの打球は、他球場ではスタンドに突き刺さるが、ナゴヤドームでは高いフェンスに阻まれる。
「ナゴヤドームはしっかり当たらないと、本当に入らないよね。でもホームランを打っても、次の試合で打てなかったら意味がない。毎試合、毎試合、勝つためにやっているんだ」
本拠地の仕様が変わらない以上、来季も本塁打は増えないだろう。来日5年目で初の100打点に届くかどうかは、二塁打でいかに稼ぐかにかかっている。