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物流ドライバーや介護など担い手不足が深刻な職業の中途採用募集時に提示する年収額の地域差が縮小している。人材サービス産業協議会(東京・港)が13日発表した2019年の転職賃金相場データによると、介護職や宅配運転手の最高額は首都圏より東海や近畿が上回るか同じ水準となった。地方企業の管理職も好条件の待遇で獲得を目指す動きが広がる。
老人ホームなどの介護職員や訪問介護員といった介護職で提示された年収の最高額の分布は、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)で339万~500万だった。一方、東海(愛知県、岐阜県、三重県)は404万~570万、近畿(大阪府、京都府、兵庫県)は357万~581万円となった。
18年からの変動率を比べると、首都圏の最高額は横ばいだったのに対し、東海は25.3%伸び、近畿は16.2%上昇している。介護大手が全国で募集をかけ、相場の押し上げにつながっているという。転職希望者は「定年退職後のセカンドキャリア」としてシニア層が増えつつあるようだ。
今回の調査で初めて集計した物流ドライバーをみると、宅配ドライバーは首都圏が407万~550万円で、東海は452万~550万円、近畿は500万~560万円でほぼ差はない。長距離ドライバーでも首都圏が600万~700万円で、東海は570万~630万、近畿は464万~686万円だった。
大都市圏から地方企業への転職希望者が増えつつある。ただ、これまではその障害のひとつとされたのが給与や待遇だった。ところが、大都市圏の相場と遜色がない条件を示す案件が出始めており、地方での就労を後押ししそうだ。
本社所在地や勤務地が三大都市圏以外の地方企業で課長以上の管理職に対する提示年収の最高値の分布は、715万~1200万円だった。1000万円以上の求人は、40~50歳代の大学卒以上で執行役員や本部長クラスが中心だという。人材確保が難しい職種を中心に賃金上昇圧力が地域を問わず波及しつつあるといえるだろう。
他方、首都圏のみになるが、定型業務を自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)関連職種では提示年収の最高値の分布は1000万~1200万円となった。ウェブ・アプリケーション開発や制御ソフトウエア開発といったIT(情報技術)エンジニアなどの最高値は1000万円を大きく上回るなど、依然として獲得競争は激しい。
調査は人材サービス大手各社が4~8月に取り扱った正社員の求人情報を対象に実施。今回は21職種について、募集時最高年収額の上位15%値と、募集時最低年収額の中央値を集計している。(田中浩司)