こうたの物語集

僕は泣く泣く承諾はしましたが、納得をしないまま朝の会が終わりました。
これから道徳の時間や学級活動の時間は合唱の練習に当てられます。他のクラスの男子が一人でもソプラノのグループに来てくれなければ、その時間は女子60人の中に男子一人だけという状況になってしまうということを考えると、とても不安になり目の前がクラクラしてくるような気持ちになりました。
給食を食べ終え、僕以外の男子が校庭へ出て行くと、僕を教室から出さないようにゆみか達数人の女子が僕の席を囲みました。
「こうた君。これから一緒に歌の練習しようね～！」
みどりが僕をおちょくるようにそう言いました。
「・・・」
僕が黙っていると、みどりは調子に乗って「あれ～？返事できないのかな？」とそう近くの女子に聞こえる様にいいました。
「黙ってないで何とか言えよ！」
あい子が僕の頭を軽く叩きながらいいます。
「ちびこう！私たちと一緒に歌の練習できて良かったね！」
るり子が笑いながら、僕の頭を撫でてそう言いました。
「でも・・・、俺はテノールの方がいいんだけど・・・。」
「だ～め！ちびこうは私たち女子と一緒にソプラノをやるの！」
るり子が意地悪そうにそう言い、そして「それと、ちびこう！私たちには敬語で話さないとダメだよ。“俺”っていうのも可愛くないから“ボク”って言うように！」とそう付け足しました。
僕は、黙って俯いていました。
「それよりさぁ、昨日は何で学校休んだの？ちんちん見られて恥ずかしかったから休んだの？」
みどりが僕を取り囲んでいない女子たちにも聞こえるようにそう僕に聞いて来ました。
女子達の失笑が聞こえます。
「ちびこう！起立！」
黙っている僕に腹を立てたかのように、ゆみかが大きな声で僕にそう言い、そして僕の耳を持ち強引に僕を立たせました。そして、苦笑いを浮かべながら「昨日、6年生の女子に聞いたんだけど、お前、あのやよいって子におしっこしてるとこ見せたでしょ！？」とそう言いました。
僕が黙っているしかありません。
「ちびこう、黙っていたって私やよいって子に聞いたんだからね！女子トイレで素っ裸でおしっこしたって事！それも女子みたいにしゃがんでおしっこしたって！」
ゆみかが僕にそういうと、女子たちから「はずかし～」「へんた～い」という声が上がりました。
「そんな所見られてるくらいだから、ちんちんくらい見られても恥ずかしくないよな！」
ゆみかがそう言うと、「私、なんとなく、ちびこうと同じクラスにいることが恥ずかしく思えて来た」とるり子がそう付け足しました。
その話を聞いて、順子達も近づいて来ました。
「ちびこうのせいで、私たちも変態に思われるジャン！」
「そんなところ見られて、プライドがないの？」
順子が、怒っているようにそう言いました。でも顔は少し笑っているようにも見えました。
僕は立ったまま、ずっと黙っていました。やよい達におしっこをしているところを見られたのは事実ですし、反論しても無駄だと思ったからです。
「ちびこう！私たちにも見せてもらうからね！」
るり子がそう言った時には僕は聞き間違えたのかと思いました。
「え！？何を！？」
「お前がおしっこしてるところに決まってるだろ！」