こうたの物語集

僕は小さな声で「謝ったらって？」そうゆみかに聞きました。ゆみかは「その話は後で話すから、取りあえず、教室から出ようよ」とそういいました。
「どこにいくんだよ？」
「リハーサル室だよ。」
リハーサル室とは体育館の上にある教室の半分ほどの大きさの部屋で、歌の練習などで使う部屋で放課後はほとんど人が来ず、防音になっている部屋の事でした。
「そんなとこ行かないよ！俺！」
「そんなに大きな声を出さないで。」ゆみかが優しく僕に言いました。そして、「さっきも言ったけどお昼の話は、あの後、順子とるり子達と話し合って、こうたが可哀想って言うことになって、今日はこうたと話をしようって事になったの。だけど、教室だと他の男子が入って来たりしたら、こうたも昨日の事とかばれたりしたら嫌でしょ、だから、誰も来ないリハーサル室に行こうって言ってるの。こうたの事考えてだよ」と付け足しました。
確かに5時間目と6時間目の間の休み時間に女子たちが話をしていたのは僕も見ていましたし、僕が掃除をしている間に話をしているようでしたから、そうかそういうことかとその時は納得しました。
「でも、誰と行くんだよ？」
「こうたと私達に決まってるじゃん。」
ゆみかは当然と言った感じで答えました。
「何で女子全員が来るんだよ？」
「別に、こうたの話を聞きたいからだし、それが嫌だったら、予定通り、ここでこうたの事すっぽんぽんにしちゃうだけだけどいいの？」
ゆみかは少し笑いながら言いました。
僕は黙っていました。
すると「みんな何もしないよ」とみどりが続けました。
「あれ？あれ？こうた君、男のくせに女子が怖いのかな？」と桜が言ったので、僕は「わかったよ！さっきは、男のくせにとか女のくせにとか言うなとか言ってたくせに・・・」とそうぶつぶつ答えてリハーサル室に行くことにしました。
それから、僕と女子20人は帰り支度をして、そして僕はゆみかとみどり、そしてるり子に囲まれるようにして歩き、残りの女子達がそれに続いてリハーサル室へ向かいました。リハーサル室に向かう21人の生徒は、みんな同じ体操服と体操ズボンなので、遠くから見たら全員女子に見えたかもしれません。
リハーサル室の前に着くと、ゆみかがドアを開け、顎で「入れ」と僕に指示をしました。僕は、「あれっ、さっきの教室の様子と違う」とそう感じました。僕は少し戸惑いながら、リハーサル室に入りました。その後に20人の女子が入ってきたのです。
リハーサル室にみんなが入るとすぐにドアが閉められました。リハーサル室は防音なのでドアも普通のドアよりも重たく、ドアを閉めると大きな音がしました。
僕はドアが閉められてびっくりして、女子達を見ると、女子達はみんなニコニコして僕を見ています。
僕はリハーサル室の一番奥に行くように言われ、そしてゆみかに「そこに座って」と言われたので、座りました。
順子がリハーサル室のドアの鍵を掛けたので、僕は「何で鍵をかけるんだよ！」と声を上げると、順子は笑いながら「怖がらないの！」とそう子供に言うように僕に言いました。
座っている僕を囲む様に女子も座りました。僕と同じ様に体操すわりをする女子が多かったですが、胡坐をかいて座っている女子も何人かいました。
教室の半分くらいの広さの部屋に女子20人と僕一人です。その時、表現できませんが、男子とは違う女子特有の匂いを感じていました。
「こうた、じゃぁ立って。」
「なんでだよ？」
「言うことを聞いて！」
ゆみかの言葉に従って僕は立ち上がりました。
「ほら、気をつけして！」みどりが調子に乗って言います。
「まず私たちに謝ってよ！私とみどりと美智子と宣子と恵子に嘘を付いたこと！」
ゆみかが続けました。「あんた、6年生の女子に脱がされたって言ってたけど、嘘だったじゃない？」
僕は何のことを謝るのかと思っていましたが、ゆみかの言葉ですぐに分かりました。
「みんなに謝ってよ！」
最初は黙っていましたが、「早くしろよ！」とゆみかがそう言ったので、「しょうがなく脱いだだけなのに・・・」という悔しい思いを堪えて、顔を赤くして「ごめんね。」とゆみかに言いました。
「そうじゃなくて、一人一人の名前を言って！」
「ゆみか、みどり・・・」
そう言い掛けたとき、「馬鹿！みんなの名前の後に“ちゃん”って付ける約束だろ！」ゆみかにそう注意されました。
ゆみかの言葉を聞いて、「どういうこと？」と聞く女子がいたので、ゆみかは先日のことを話をしました。
ゆみかの話を聞いた女子達は、「ゆみかに泣かされたの？」と、そう僕に聞いてきたり、「情けないの！」と馬鹿にしたりしていました。
「ほら！私達に謝って！」
僕は顔を赤くして、ゆみか達に“ちゃん”を付けて謝りました。
ゆみか達に謝った僕は、「もう帰っていいだろ！」と少し怒ったように言いました。
「ねぇ、ところでさぁ、こうた君は6年生の女子に、本当に自分で見せたの？アレ？」
順子があまり聞いてほしくないことを僕に聞いて来ました。

続く