こうたの物語集

やよい達に公園のトイレで素っ裸にされた後、ゆみたちと一緒に家に帰りましたが、女子トイレで裸にされたショックとやよい達に逆らう事無く、全裸になってしまったという情けなさと悔しさで、その後もあまりゆみ達と話ができませんでした。
その日はあまり眠ることができず、寝不足のまま朝を迎えてしまいました。
僕は、こんなに学校に行くことが億劫なのは初めての経験でしたが、親には理由もなく学校を休ませてもらえるはずもなく、かといって親に言える理由でもないので、嫌々ながら学校へと向かいました。
その日の僕は、「昨日の事がクラスのみんなにばれたらどうしよう」「学校のみんなにばらされたらどうしよう」そんな事ばかり考えながら学校に行きました。
学校に着くと、すぐに自分の教室に入りなるべく教室から出ないようにしてやよい達に会わないようにしていたのです。
お昼休み時間も同様に、いつもなら他の男子と校庭で野球をして遊ぶのですが、その日の僕は教室に残り、一人大人しく本を読んで休み時間を潰していました。
「こうた、教室でなんで本なんか読んでるの？外に行かないの？」
ゆみか達が僕を取り囲んで、にやにや笑いながら話かけてきました。
「別に理由はないけど、お前たちに関係ないだろ！」
僕は、またゆみか達がからかいに来たと思い少し語気を荒げていいました。
「関係ないことないよ、教室は雨の日以外女子が使うってなってるじゃん。」
確かに、このクラスは暗黙の了承で、校庭は男子優先、教室は女子優先みたいなものがありました。
教室には一部の女子を除いて、10人以上が残っており男子は僕一人だけでした。
「こうた、校庭の隅で本を読めばいいじゃん。」
「そうだよ、男子は教室から出てけ。」他の女子も調子に乗っていってきます。
いつもの僕なら、こんなこと言われるまでもなく教室から出て行っているところですが、昨日の今日で、どうしてもやよい達に会いたく無かったので、「今日は風邪気味だから、教室から出られないから、教室にいることを許してほしい。」そうゆみか達にいいました。
ゆみかは僕がこれほどお願いしても同情するどころか、大声手で僕に言い放ちました。
「この前の放課後、フルチンにされたから風邪を引いたんだよね～。」
ゆみかがおどけて言うと、教室にいる女子達は僕を見て大笑いをしました。
そして、ゆみかは僕の頭を手のひらでぐりぐり撫でて、本を読んでいる僕をおちょくり始めました。僕は、頭を左右に動かしたりしていましたが、最後には我慢ができなくなり、ゆみかの手を叩きました。
「いた～い。」大袈裟にゆみかは手を押さえています。
「暴力反たーい。」ゆみかと仲のいい加世が僕に向かって言い出すと、教室の女子全員が「ぼうりょくはんたーい」と言い出したので、僕は仕方なく教室から出ざるを得ませんでした。僕が教室を出るとき「覚えとけよ！」というゆみかの声が聞こえましたが、僕は無視をしてあと残りわずかのお昼休みは男子トイレで過ごしました。
その日は、僕がなるべく教室から出ることをしなかった事が功を奏し、やよい達に会うことはありませんでした。またその日は両親に早めに帰ってきてもらうことにして、Kさんの家に行かなくても良かったので、何とか無事に過ごすことができました。
翌日にはお昼休みには校庭で遊ぶ事ができるようになり、以前と変わりなく学校に行くことができるようになったのです。
ところが、翌日の放課後、校庭で遊ぼうと教室をでようとした所でやよいとめぐみにばったり会ってしまいました。正確に言うと、ばったり会ってしまったのではなく、教室の外でやよい達が待っていたと言った方がよいでしょう。
「こうた君、こんにちは。元気にしてた。」
やよい達は満面の笑みを浮かべて僕に近づいて来ました。
「うん、元気にしてた。」
「何か緊張してない？（笑）」
「してないよ、別に。」
「そう、だったらいいけど、今から校庭に遊びに行くの？」
「そうだよ。」
「だったら、時間があるって事だよね。」
「う、う～ん。」
「あるんだよね！ところでさ、あの時の約束覚えているよね？」
「う、うん、まぁ覚えているけど・・・。」
「だったら、鞄持って帰る準備しといでよ、待ってるから。」
僕は、半ば命令するようなやよいに言い返す事もできず、やよいと一緒に学校から帰る事になったのでした。
「今日はさ、この前一緒にいたみほの家に遊びに行くからね。」
「でも、学校帰りに寄り道は駄目なんじゃないのかな。」僕の小さな抵抗です。
「逆らう気？優しく言ってると思って付け上がるとまた泣かすよ。」
そう言われて、僕は黙ってやよいとめぐみの後ろを付いていきました。