新聞などの経済ニュースでは、「GAFA」(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの、いわゆる超巨大IT企業)の4文字を見ない日はないほど、アメリカの巨大プラットフォーマーの影響は大きい。
だが、実際にそれらの企業を取材している筆者の立場からすれば、彼ら4社だけを特別視するのは間違っていると強く感じる。海外プラットフォーマーの影響力が大きくなっているのは事実だが、他にも「ここなしでは語ることができない」という企業はいくつもある。
このほど執筆した新著『デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか』でテーマとなった「アドビシステムズ」(以下、アドビ)は、まさにそんな企業である。
画像加工ソフトである「Photoshop」(フォトショップ)や出版用のレイアウトソフトである「InDesign」(インデザイン)など、彼らが手がけるデジタルツール群は、出版産業にとって欠くべからざる存在だ。
そして、出版に限らず、映画やゲーム、テレビ番組にウェブサイト制作、さらには広告の作成まで、およそ「クリエイティブ」と名のつくビジネスにおいて、アドビのツールのお世話にならないものはない。
「使えなくなると仕事や生活がストップする」という意味では、いわゆるGAFAに勝るとも劣らない影響力をもつ存在だ。
一方で、同社が“別のビジネス”を新たな柱として確立しようとしている事実は、あまり知られていない。そのビジネスとは、「デジタルトランスフォーメーション」であり「デジタルマーケティング」のツールを企業に提供することだ。
といっても、多くの人にはそれがどんなものなのか、ピンと来ないだろう。
それこそが、筆者が今回、本書を執筆しようと考えた理由だ。「GAFA」と同様、「デジタルトランスフォーメーション」「デジタルマーケティング」という言葉自体は、新聞などでよく目にする。しかし、それが「いったいなにを意味しているのか」、きちんと理解できているだろうか?
IT業界は、キーワードに流されやすい傾向にある。新しい概念やアイデアを伝えるために、次々に新しいキーワードが出てくるからだが、結果的にキーワードばかりが注目されるきらいがある。いわゆる“バズワード”がその典型だ。
実際のところ、そのキーワードはどういう意味を担っているのか? ──その本質を理解するには、実践者に聞くのがいちばんだ。