当サイトでも経過を追っているJASRACと音楽教室の対立について、東京地裁でとうとう結審しました。
結審した、と言ってもこれから判決まで双方の主張や資料を精査して、法的に問題がないのか、国際的な基準に合致するのかなど様々な側面から判断を行い判決を出すまでの過程は長いものになります。
また、恐らく司法判断がどちらに傾いても上告が行われるものと考えられます。
そうなれば今度は場所を高等裁判所へ移して第2ラウンドの開始になります。
練習・指導演奏へ著作権が及ぶのか?
この点についてはこのニュースがヘッドラインに上がる度に話題になる事ですが、学校での音楽の授業からの徴収は変わらず行われません。
対象はあくまでも「営利事業として」運営されている音楽教室であってユーザーではない点も注意が必要です。
これらの経緯は過去の記事にもまとめてあります。
時間は経過していても、今の時点ではようやく最初の主張について双方の意見が出揃った段階であり、権利関連の判断がいかに難しいものかを物語っています。
海外ではどうなのか?
この手の内容になると海外ではこんなことをしていない、という意見を述べる方が多いのですが日本でも海外でも明確に基準として定められています。
アメリカで言うJASRACのような著作権管理団体であるASCAPのFAQには次のような説明があります。
What is a public performance?
A public performance is one that occurs either in a public place or any place where people gather (other than a small circle of a family or its social acquaintances). A public performance is also one that is transmitted to the public; for example, radio or television broadcasts, music-on-hold, cable television, and by the internet. Generally, those who publicly perform music obtain permission from the owner of the music or his representative. However, there are a few limited exceptions, (called “exemptions”) to this rule. Permission is not required for music played or sung as part of a worship service unless that service is transmitted beyond where it takes place (for example, a radio or television broadcast). Performances as part of face to face teaching activity at a non-profit educational institutions are also exempt. We recommend that you contact your local ASCAP representative who can discuss your needs and how ASCAP can help you.
訳:
公演とはなんですか?公演とは、公の場または人々が集まる場所(家族またはその知人の小さな輪を除く)で行われる公演です。 公演も一般に送信されるものです。 たとえば、ラジオまたはテレビ放送、保留音、ケーブルテレビ、およびインターネット。 一般に、公に音楽を演奏する人は、音楽の所有者またはその代表者から許可を得ます。 ただし、この規則にはいくつかの例外があります(「例外」と呼ばれます)。 礼拝サービスの一部として再生または歌われる音楽には、そのサービスが行われる場所(ラジオやテレビ放送など)を超えて送信されない限り、許可は必要ありません。 非営利の教育機関での対面教育活動の一環としてのパフォーマンスも免除されます。 地元のASCAP担当者に連絡して、ニーズとASCAPがどのように役立つかについて話し合うことをお勧めします。
このように海外でも家族や知人以外の小さな輪を越えて行われる公演と営利の教育機関での教育活動は免除の対象から明確に外されています。
またASCAPでは音楽教室向けの契約申し込み用のフォーマットを提供しており、これによると年間$236でASCAPの管理楽曲を教程で仕様が可能になるようです。
判決は二月、軍配はどちらに?
判例や海外事例などは資料として提示はされているでしょうし、昨今の国内外の著作権事情を鑑みれば守る会の主張が全面的に認められる事はほぼ無いのではないかと考えられます。
元々この話題は対JASRACというよりも対世界の大きな話なので判断材料とすべき事項も多岐に渡り精査にも時間がかかるでしょう。
また、冒頭でも述べたようにこれで判決が下っても上告、最高裁までもつれ込む事も予想されますので最終的な決着がつくまでまだまだ時間がかかると考えられます。
そこまで公判を維持する価値があるのか、訴訟費用と天秤にかける必要もないほど体力のある母体故なのでしょうがひっそりと敗訴で幕を閉じるような結末であれば守る会という業界団体を作ったのですからNAMEの様な団体交渉を進める方が良いのではないかなあと個人的に思います。
インターネットでは幸いにして権利者の意見と、反対する人の意見を俯瞰してみる事が出来ます。
多くの人がこういった事項に対して建設的な意見をぶつける事は有意義な事だと思います。
本当の意味で著作権の在り方に対する興味を持ってもらうには床屋政談にならない根拠と裏付けがあり、それでいて好奇心を掻き立てるものであって欲しいと個人的には考えます。
その為にも学校教育でも情報や権利の理解を深める教育をより進めて頂きたいと熱望しています。
来年二月の判決を楽しみに待ちたいと思います。
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