「原子力エネルギーについて国民全体で議論すべきだ」と語る田中俊一氏=茨城県ひたちなか市の自宅

 ―日本の原発の将来は。

 「福島第1原発事故で崩壊した信頼は、新規制基準に基づいて再稼働した原発の安全稼働により少しずつ回復していた。しかし、今回の問題で再び崩れ去った。今は与党内ですら脱原発の雰囲気が強い。このままでは、おそらく原発はすべてなくなる方向に向かうだろう」

 「ただ、この問題だけの議論とは別に、温暖化防止やエネルギーの安定供給の観点から、原子力の在り方をもう一度議論しないといけない。火力の比重が増えれば温室効果ガスが増加し、再生可能エネルギーが増えれば国民の電力料金の負担が大きくなる。中東に大きく依存している原油の確保を巡っても、中東情勢に一喜一憂することにもなる。来年は、原発の営業運転が始まってちょうど50年。この問題を機に、原子力エネルギー利用について原点に立ち返って、さまざまな観点から国民全体で議論すべきだ」

 ―福井県民は何ができる。

 「国内最大の原発立地県に住む福井県民は原発事業を左右する『キーマン』。原発の立地県、立地自治体として、改めて原子力利用について幅広い観点から議論し、考えていただきたい。原発関連の方が周囲にたくさんいる環境では、議論は難しいところもあるかもしれないが、この際、関電の本音もよく聞いて、その上で原子力との共存を図る道を探っていければ幸いだ」

 ■田中俊一(たなか・しゅんいち)氏 東北大工学部原子核工学科を卒業し1967年、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)に入所。2004年副理事長。日本原子力学会会長、原子力委員会委員長代理を歴任。11年3月の福島第1原発事故後、福島県で除染活動に取り組む。12~17年に原子力規制委員会の初代委員長を務め、現在は同県飯舘村の復興アドバイザー。福島市出身、74歳。

⇒インタビュー連載「関電金品受領 私はこう見る」

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