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サッカーを見ても分かる、ドイツ人にはない「日本人の品性と知性」

どちらも似たような構造の文明国なのに

リスクプレイとは何か

ドイツのプロサッカーでは、ブンデスリーガ第1部・第2部の試合の約1割が「Risikospiel=リスクプレイ」と位置付けられている。リスクプレイというのは、警備のために、とりわけ大掛かりな警官や警備員を必要とする、極めて危険な試合という意味だ。

ドイツは、日本と概ね似たような構造の文明国だが、それでも実際に見て驚くことは結構多い。その一つがこのリスクプレイの様子だ。

 

通常の試合では、警備の警官の数は200~250人らしいが、犬猿の仲であるライバルチームの対戦において、凶暴なファンが結集することが予想されるのがリスクプレイで、その場合、1000人近い警官が動員されることもあるという。

多くのファンは特別列車で、昼頃から続々と到着する。皆、贔屓のチームのマフラーやら、帽子を身に着けているので、すぐにわかる。そのあとは、彼らが缶ビール片手に町を練り歩くので、繁華街はかなり物騒な雰囲気になる。だから、それら敵対したグループが接触しないよう、多くの警官が動員される。

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皆がスタジアムに詰めかけるころには、凶暴ファンはすっかり出来上がってしまい、熱気ムンムン。セキュリティー・チェックの長い列で、闘牛前の牛のようだ。

シュトゥットガルトで行われる試合はリスクプレイではないが、それでも、ブンデスリーガの試合が行われる土曜日など、街の真ん中の歩行者天国を両方のファングループが睨み合いながら通り過ぎるような光景を、偶然、見かけたこともあった(VfBシュトゥットガルトは今シーズンからまた2部に落ちている)。

では、リスクプレイとはどんな対戦かというと、たとえば、ボルシア・ドルトムント対シャルケ04、ダルムシュタット98対アイントラハト・フランクフルト、SVヴェルダー・ブレーメン対ハンブルクSV、ボルシア・ミュンヘングラットバッハ対FC ケルンなど。

簡単に遠征できる、距離的に近いチーム同士の組み合わせが多く、たいてい地元の治安も悪い。そこで、スタジアム前には重装備の機動隊がずらっと並び、要所要所には騎馬警官まで出て暴走しそうなファングループを睥睨する。

手荷物は厳重に調べられ、アルコールは禁止、ガラスのボトルも持ち込めない。それでもときどき観客席で、どうやって持ち込んだのか、ロケット花火が飛び、発煙筒が燃え、試合が中断されたこともあった。

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ドイツでは、どの地方にも多くのサッカークラブがあり、小さな子供から大人まで、サッカーを愛し、トレーニングを楽しみ、休日の試合には家族が応援に行って、というところは、日本のアマチュアの野球チームと同じで、微笑ましい。それを見ていると、健全な精神は健全な肉体に宿るという諺通りだと感じる。

スポーツは社会の宝だ。なのに一方で、自分はスポーツなどせず、ただ、チームの追っかけをやりながら暴れているファンがいるのは、何とも残念だ。