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 経費はふくらむのに、収入は期待したほどではない。するとためらわずに借金を重ねながら、財政健全化の目標は掲げ続ける。ただし、どのように達成するのかの説明はない。

 あまりに無責任ではないか。

 今年度の国の税収が、予算編成のときに見込んだ水準に届かない見通しになった。米中貿易摩擦の影響で輸出が振るわず、法人税収が落ち込むためだ。この不足分を補うため、政府はきのう閣議決定した補正予算案に、2・2兆円の赤字国債の追加発行を計上した。

 国債は、後に金利分を含めて返済していく借金だ。補正では、災害対策のインフラ整備などにあてるため、ほぼ同額の建設国債も発行する。今年度の発行総額は37・1兆円になり、2年続けて前年度を上回る。

 一方で、使う予算も増える。経済対策として、利用が多いキャッシュレス決済でのポイント還元の費用や、マイナンバーカードを普及させるための経費などを手当てする。当初予算に盛り込めなかった政策を次々に補正予算に組み込む慣習も、踏襲された。中小企業や農家への補助金、防衛費といった恒例の項目は、今回も手厚い。

 ただ、経費の削り込みは一部に限られる。歳入と歳出の差は広がるばかりだ。

 安倍政権は「経済再生なくして財政健全化なし」をうたう。

 確かに、政権発足からの7年間、それなりに堅調な経済状況を保ってきた。税収は発足前と比べて1・4倍に増え、バブル期並みの60兆円規模だ。

 しかし経済成長でいくら税収が伸びても、歳出を抑えなければ財政状況は改善しない。今年度の予算の総額は、大型の経済対策をとったリーマン・ショック時の歳出を、4兆円近く上回る104・7兆円に達する。

 財政健全化の指標とする基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を、安倍政権は昨年、2020年度から25年度に先送りした。それでも実現のめどが見えない財政健全化の旗と現実との乖離(かいり)は、なぜ生じるのか。首相は逃げずに説明すべきだ。

 消費税率を10%に上げ、医療費の負担のあり方などの議論を進めてはいる。しかし、財政全体の将来像を描いているとは思えない。

 金利が低いから借金を増やしても大丈夫、とは言い切れないはずだ。低金利は将来まで保証されているわけではない。税収も景気に左右される。

 首相は年頭の施政方針演説で「負担を次の世代へ先送りしない」と誓った。ならば、次世代が安心できるよう、持続可能な財政への道筋を示す責任を、果たさねばならない。

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