オーバーミックス   作:青の魔術師

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第18話 帰ってきたよ。ジルクニフ

数日前

帝国からカルネ村に進む一行は、この後の打ち合わせ始めていた。

「フールーダ。どの位の警備がある」

「先程【メッセージ】で確認しましたところ。ゴブリンが数千体以上いるらしいですぞ」

数千体か、流石に神が渡したであろうアイテムは効果違うね。数千体もいたら、下手したら帝国も潰せるんじゃないかな。

「偵察兵は生きているのか」

「歓迎を受けているとの事です」

 

歓迎を受けているなら大丈夫そうだな。

早くあの野郎の愚痴を言いたいもんだよ。

予言にもあった魔樹がそろそろ蘇るというのにな。

「ところで、ドブの森に眠っている魔樹はどうなっている」

「周辺の木々は枯れている状況ですね」

「復活は近いな」

 

魔樹とはその昔、ある男が余裕を持って封印したと伝わっている悪魔の事である。

伝承では天空を貫くと呼ばれる巨大な身体を持ち、六本の触手を持つと呼ばれている。

「陛下。もし蘇ったらこのあたりは滅ぶのでしょうか」

 

過去に見た魔樹についての情報を脳より引っ張り考えていたら、バジリウッドが話をかけていた。

「その通りだな。亜人を含む生物の危機だろうな」

「なら、何でそんなに落ち着いているんですか」

「以前に魔樹を見学した事があるが、あんな物は決して人間が勝てる領域ではない。ただ法国に存在する一部の人間を除いてな」

「見たことあるって、陛下は本当に人間なんですか」

 

バジリウッドは帝国でも噂されている怪物説を、この時に解消しておこうと行動する。

「人間だぞ。不老不死なだけでな」

「不老不死なんて怪物じゃないですか」

「その昔、ある男に剣で斬られてこの身体になったんだよ」

「その男とは誰ですか」

「ノーコメントだ。私の思い出を渡す訳にはいかないからな」

 

ジルクニフは強引に話を切ると目の前に迫る要塞を眺めながら呟いた。

「フールーダ。ここは辺境の村ではなかったのか」

「カルネ村ですよ。位置的には」

 

ジルクニフが見つめる村には、巨大な要塞が顕現しており異彩を放っていた。

さらには、黒龍が一行を見つめており戦意を失わせていた。

そんな部下達を尻目にジルクニフは、堂々とカルネ村の前で待ち構えるエンリ将軍に向けて歩き出す。

 

「初めまして、帝国皇帝ジルクニフです」

「私はナザリック、カルネ領域を管理するエンリ将軍と呼ばれて者です」

互いの男女は握手をして友好関係を築こうと行動を始める。

 

「ここに来ればモモンガさんに会えると聞いて来たのですが、モモンガさんは現在しますか」

「モモンガ様はエランテルに居ますので、当分戻って来られない可能性が高いです」

「そうか。だったらダウェンの話をしたいから、何かしらの交渉をしたいと伝えてくれ」

「わかりました。モモンガ様に伝えておきます」

ジルクニフがエンリに挨拶をしようとしたところ、遠くから結晶が飛んできてエンリを殺そうとしてきた。

帝国の面々が反応出来なかった中で赤いキャップを被っているゴブリンが、結晶を砕きエンリを華麗に守り抜く。

「あの二人を始末しろぉぉぉぉぉぉ」

 

ゴブリンリーダーの絶叫と共に、二人にターゲットを定めたゴブリン軍団は走り出す。

「まずい。テレポート」

二人組の冒険者は少女が使う魔法とフィリップから入手したマジックアイテムによって、違う場所に消えてしまった。

 

ゴブリン達の悔しい言葉にジルクニフは、ゴブリン達がエンリ将軍に対して十分な忠誠を誓っている感じていた。

 

「無事ですかジルクニフさん」

「問題は無い。しかし、そのゴブリンは凄い能力を持っているようだね」

 

答えをジルクニフに返したのは、話していたエンリ将軍ではなく、エンリ将軍を守護するゴブリン達だった。

「当たり前だろ。断言するが俺一人でもお前さんの帝国を落とせるぜ」

「そうなのか、フールーダ」

「無理ですね一人では。ただ村に住んでいる赤帽子のゴブリン達が全員で攻めてきたら、帝国は根絶やしにされるでしょう」

 

過剰な兵力ではあるが、神のお膝元と考えれば少ないとも考えている。

何か、この村を守護する者がいなければ、この村は神にとってなくなっても困らない事になる。

 

「ふふふ。」

唐突に笑い出したエンリの視線を追ってしまったジルクニフは後悔をしてしまう。

 

目の前に過去に伝説と言われていた黒龍がいたのだから。

「どうですか。この村を守護するドラゴンは」

「まさに、神の所業ですね。是非とも友好関係を築きたいのですが、どうですかね」

「モモンガ様とですか」

「確かにモモンガさんとも築きたいのですが、エンリ将軍貴女とも友好関係を築きたいのです」

「いいですよ。但しゴブリンの調査団を送ってもいいですか」

「機密情報を盗んだり、犯罪を行わない範囲なら観光をしてもらっても構わない」

「確かに、秘密は大切ですよね」

 

エンリはゴブリン達の前に立ち命令を下す。

「我が愛するゴブリン軍団に告ぐ。帝国に於ける活動は犯罪及び、非常識な行動を禁止する。例外として攻撃された場合に限り、反撃を許可する。」

「はっ!」

「ゴブリン軍団。ジルクニフを警護しつつ帝国に数名で任務を遂行せよ」

 

エンリの命令に影に潜むゴブリンが、ジルクニフの影の中に入っていく。

「…。もぉいいや」

 

ジルクニフは自分の影に入っていたゴブリンに目を瞑りつつ帝国に向かって、カルネ村を後にした。


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