オーバーミックス   作:青の魔術師

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第16話 強い奴ならば…

 

狂人ことクレマンティーヌはナザリックに監禁させていた。

 

自分が何故こんな豪華な部屋に監禁されているのかわからない為に、情報収集を行っていた。

 

部屋を見渡すと、法国の技術でも作り出せないであろう部屋には価値が高そうな物で溢れていた。

「くそ。なんだこんな目に合わないといけないんだよ」

自身が持つ最後の記憶を探ろうとしても、曖昧で目の前に影が出来たと思ったら記憶が切れており、混乱を極めていた。

 

そんなクレマンティーヌを知ってか知らぬか、自身が持つ疑問を解けるであろう生物が部屋に入ってくる。

「お目覚めですか」

 

ノックも無く部屋に入って来たのは、特殊なメイド服を着ているユリだった。

ユリの事などを当然知らないクレマンティーヌは、冷静にこの後起こるであろう現実を想像していた。

 

直感的に幸せなど無い。最悪なところ拷問をさせるかも知れないし、身体を弄り倒させるかも知れない。

だからこそ、攻撃を仕掛けはしなかった。

「お名前を聞いてもよろしいですか」

「クレマンティーヌ。ここは何処なの」

「ナザリック地下大墳墓で御座います。あなたの処遇に関しては決まっておりませんので、お答えはしかねます」

「だったら、解放はしてくれない…ですよね」

「はい。」

 

やっぱりな。捕虜を生かす意味など情報収集以外では憂さ晴らし以外にないもんね。

だったら何で、こんないい待遇をしてくれんだろう。

 

「何か注意する事はあるのですか」

「この後、謁見する御方に対して決して無礼な行動をしてはいけません。以上です」

 

まだ聞きたいのになぁ。ただ追いかけるのは絶対に駄目だな。

さっきのメイドも言っていた様に、不用意な行動は御方の気分を悪くするだけらしいかもね。

 

数刻後。

クレマンティーヌの運命を決める謁見が始まる。

 

〇〇〇〇

 

クレマンティーヌは目の前に広がる光景に絶句していたのかも知れない。

自分よりも強いであろう生命体のオンパレードに、自分が狭い世界にいた事を痛感した。

極め付けには、法国で死の神として信仰されている存在がいるのではないか。

 

「クレマンティーヌ。初めに突然攫ってしまって申し訳ない」

「い、いえそんな事はないです。こんな素晴らしい所に足を踏み入れて、気分がとてもいいです」

「素晴らしい所と言ったのか」

「はい。まさに神の住居で御座います」

 

この上なく嬉しそうな死の神に対して、訳がわからないクレマンティーヌは運命を任せる事にした。

「仲間と共に作ったナザリックを褒められるのはいい気分じゃないか」

「…」

「クレマンティーヌ」

「はい」

「攫ってしまった事に対して何か望みがあるか」

「もし、叶えられるなら兄を殺せる力が欲しいです」

「兄が憎いのか」

 

兄の事を問われて、大嫌いな兄の事をついつい思い出してしまう。

自分よりも家族に愛されている兄。

戦士の天才たる自分よりも優れる召喚系の才能を思い出して。

何時でも殺してやろうと思っているのだか、部隊の隊長が守っていて殺しに行けなかった日々を思い出して。

 

「はい。今すぐにでも殺したい程に」

「一部だけなら叶えてやろう」

「一部とは」

「簡単な事だ。現在法国とは友好関係にある為に君の兄は殺せないだろう」

 

唖然とするクレマンティーヌに、モモンガは安心させる様に声をかけてやる。自分の都合の良い計画を進めるには持って来いのタイミングなのだから。

「だがな、私が保有するアイテムの実験に成功すれば強くなれるだろう」

 

実験と聞き、嫌な予感が身体を巡り全身を震わせる。恐らくだがこの実験では生きては帰れないが、ただ断っても殺させる事を直感する。

ならば、答えは一つしかないのだ。

「どのような実験ですか」

「簡単に言うと、種族変更を行いたいんだよ」

「よろしくお願いします」

「よろしい。では、始めようじゃないか」

 

モモンガは予め用意していたアイテムを使用する。その名は【ランダムチェンジ】

 

【ランダムチェンジ】とは…

・レベルを据え置きに種族を変更するもの。

 

クレマンティーヌの身体が光りだし、その姿が歪みこの世界より消えてしまった。

「失敗か」

だが、ここで終わる人間は居なかった。

いるのは漆黒の鱗に包まれたドラゴンだけだった。

「成功だな」

「はい、モモンガ様。私は完全にドラゴンになった模様ですが、人間にも戻れる様です」

「素晴らしいな。では任務に就いて貰っていいな」

「はい。了解です」

 

その日から将軍エンリの元に一匹の黒龍が支配下に収まった。

また、エンリには支配下に置いた生命体の能力を極端に、上昇出来る様になった事は黒龍により報告されモモンガは大変喜ぶのだが、それは別のお話である。


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