いつも誤字報告をしてくださり、ありがとうございます。
お知らせ
第13話から、アンデットからアンデッドに変更するので、よろしくお願いします。
モモンガ一行は組合に入る前に漆黒の剣がアポを取る為に先行する事になった。
「モモンガ様。あの者達で大丈夫なのですか」
「信頼できる者達だと思う。現状ではな」
冒険者組合に入った漆黒の剣は、アインザックを呼びつけた。
本来ならば、呼びつけられる訳もないのだが、用事が用事だけに通ってしまった。
突然呼び出されたアインザックは、格下の冒険者に呼び出されたのにも関わらず、迅速に対応していた。
「ところでそのアンデッドは、何者だ」
「アンデッドでは無くモモンガ様ですからね。あと敬称は付けた方がいいですよ」
「何で付けなければならないのだ」
「簡単な話ですよ。それ程の御方ですから」
「わかった。」
漆黒の剣より忠告を受けたアインザックは、モモンガに会うべく建物の外に歩を進めていく。
「モモンガ君。初めまして、冒険者組合のアインザックだ」
「これはどうも。アンデッドのモモンガだ」
「そちらの方は」
「友人のベラだ」
アインザックはこれまでの経験から、このアンデッドはヤバイとわかってしまった。
ただ、漆黒の剣より話があった様に冷静な方だと心から思い知らされた。
「冒険者になりたいそうだか、どの位の魔法を使用出来るのだ」
「お見せしてあげましょう。【中位アンデット作成 死の騎士】」
モモンガがスキルを発動すると、空中から闇が生まれて異界の騎士が君臨する。その異形の姿を目撃した冒険者達は目をひんむいて、立ち上がる。
「敵襲、敵襲。推定未知のアンデッド」
死の騎士の周りを冒険者が囲んでいく。
ただ、死の騎士にとっては何の障害にもなりはしない。ゴミが幾ら増えても所詮はゴミなのだから。
「おい、お前ら。あのアンデッドを倒してしまうぞ」
英雄イグヴァルジは類い稀ない才能を持っていた。先祖代々受け継がれていたタレントにより、成長速度が異常に早かった。まるでプレイヤーみたく強くなっていた。
仲間が死の騎士を囲むと、イグヴァルジが会心の一撃を死の騎士に叩き込み死者の世界に返却する。
「どうだ。アンデッド如きが俺の街を汚すな」
モモンガは死の騎士を壊してしまったイグヴァルジを観察していた。
現地の人間に比べて格段に強い存在だが、装備がゴミの様な物でがっかりしていた。
幾ら無料で作られている死の騎士とはいえ、弁償をさせない可能性がある為にこの男に物理的に相談する必要がありそうだな。
「お前、俺のアンデッドを壊すとはどう弁償するつもりだ」
「ああん。街中にアンデッドが現れたらぶち壊すのが世の常だろうがよぉ」
「しかし、襲いもしない安全なアンデッドを何故殺してしまうのだ」
突然、笑い出したイグヴァルジは眼前のアンデッドに気づいてしまった。
このアンデットを生かしておいては、非常にまずい事になる。長年の冒険者としての勘が警戒音を脳内に鳴らしまくる。
「お前もアンデットかぁ」
斬りかかったイグヴァルジは、見えない壁に阻まれて攻撃に失敗してしまう。
こいつは攻撃の完全耐性を持っているのか。
イグヴァルジが高速で思考を回転させて、アンデッドに有効な手段に取り掛かる。
ポーションを素早く取り出しアンデッドに向けて投擲をしてしまう。
その瞬間、神速の緑の弾丸がイグヴァルジを貫いた。
そこにいたのは、エランテルを徘徊していたフェンリルだった。
「ガウ」
モモンガは一連の流れを観察していて、死体は貰えるのかなとぼーと考えていたのは誰にも知られていないだろう。
「フェンリルよ。その死体を片付けておけ」
「ガウ」
「アインザックよ。この死体は私が処分しても良いかな」
突然、話しかけられたアインザックは、動揺する気持ちを気合いで自分の中に抑え込み、モモンガと交渉を進める。
「いや、その男は英雄なのだ。最後はアレだが、埋葬くらいさせてはくれないか」
「此奴は私を攻撃したんだぞ。そして、私の部下が此奴を殺したんだ。」
結論を述べる前にフェンリルを眺めて命令を下す。この交渉が失敗しようが、成功しようとこの死体を手に入れるには既成事実を作ってしまえばいいのだから。
「フェンリル。そいつを外に運んでおけ」
「ま、待ってく」
アインザックがセリフを言い切る前にフェンリルはエランテルを出てしまった。
英雄を失い、絶望の中を彷徨うおじさんに希望の糸がアンデッドより差し出される。
「アインザック。私は冒険者になりたい為にここにやって来たを忘れてはいないか」
「しかし、アンデッドを冒険者にするなど前代未聞だ」
「いいじゃないか、私がアンデッド冒険者、第1号になろうじゃないか」
「ルールがあるが守れるのか」
「守ってやろうじゃないか。私に損害が出ない範囲だかね」
「わかった」
この瞬間、エランテルに最悪の冒険者が誕生した。
しかし、別の側面から考えれば最高の冒険者が誕生した瞬間でもある。
毎回、同じ時間に投稿するなんて難しいですよね。