確実な方法が1つある
ウミウシがどんな方法で葉緑体を維持しているのだとしても、未だ知られざるやり方で、藻類の遺伝子やそれらがつくり出すものを利用しているに違いない。
以前ピアース氏が率いた研究では、ウミウシの遺伝子の中に藻類から取り込まれた遺伝子があると示唆された。ヒトなど他の動物とも関連しうる驚くべき業だ。しかし、ルンフォ氏のグループやヨーロッパの一部の研究者は、この結論に対して懐疑的だ。
米ラトガース大学の研究者、デバシシュ・バタチャラヤ氏が率い、学術誌「Molecular Biology and Evolution」に今月発表された研究では、エリシア・クロロティカは葉緑体を取り込んだときに免疫システムを抑える遺伝子を発現させ、活性酸素のストレスを受けたときにはストレスを減らす遺伝子を活性化させることが示された。
これらのパターンは、サンゴと藻類との共生関係で見られるものに近い。
このような類似点をさらに研究し、動物と藻類という生物の共生に関する知見を得ようと将来的に期待するなら、確実な方法が1つある。バタチャラヤ氏は、他の多くの研究者同様、エリシア・クロロティカの研究が続いてくれることを願っている。ただし、彼自身がそれを行う予定はない。
「研究を進展させるには、誰かがこのウミウシをたくさん育てる方法を見つけなければなりません」と彼は言う。「問題は、彼らが希少な生物であることなのです」
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