ただ、私の好みの量は120グラム、妻の場合は80グラムなので、結局のところ我が家はまだいきなり!ステーキが排除しているカスタマー層だということになります。

 おそらくいきなり!ステーキにとって、ここが最もきめ細かく対策を考えなければならないポイントでしょう。確かに、経営効率を上げるためにお店の経済性に合わない顧客を排除するのはセオリーです。いきなり!ステーキへの注目が高かった時期は、最低オーダー量のハードルを上げて、ステーキをたくさん食べる顧客層だけにフォーカスをするやり方が「当時の事情に合っていた」のでしょう。

 ところが、現実には顧客が22%も減り、消費増税後は40%まで減る可能性がある。ボリュームの多い肉を好むユーザー層にフォーカスし過ぎたことで、「顧客の排除」が行き過ぎた状態に陥っているわけです。

苦境を脱した「俺のフレンチ」や
回転寿司のビジネスに学ぶこと

 では、どうすればいいのでしょうか。いきなり!ステーキは原価率を高くしたうえで薄利多売によって勝負をする外食業態です。それとよく似たビジネスモデルで同様の課題に直面したのが、かつて一世を風靡した「俺のフレンチ」でした。同店は、最高級のフレンチ料理を驚くほどの安価で提供します。勝負のポイントは回転率で、営業時間中に長蛇の行列ができ、1日の回転率が脅威の6回転を達成することで、料金が安くても利益を出すことができました。

 しかし同店も、そのブームが一段落して行列が短くなったときに、ビジネスモデルを変えなければいけなくなりました。そして俺のフレンチでは、価格を高めにシフトすることで苦境を乗り切りました。もともとおいしいのだから、単価が4000円から5000円に上がっても一定の顧客はついてきてくれたわけです。

 それとある意味で反対なのが「あきんどスシロー」「はま寿司」といった100円寿司の大手チェーンです。彼らはもちろん150円皿のような高価格商品も導入しますが、基本的には1皿100円を貫いています。その一方で、とにかく顧客をセグメント化して排除することはしません。「脱寿司」で生き残りを図っているのです。