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Photo: Tomohiro Ohsumi / Getty Images

Photo: Tomohiro Ohsumi / Getty Images

ワシントン・ポスト(米国)

ワシントン・ポスト(米国)

Text by Simon Denyer and Akiko Kashiwagi

「桜を見る会」問題がまだまだ収束しそうにない。招待者名簿などの公文書管理をめぐり、米紙「ワシントン・ポスト」が安倍政権を痛烈に批判している。
議論を巻き起こしている、政府主催パーティの招待者名簿は?──シュレッダーで廃棄。

首相官邸への訪問者名簿は?──シュレッダーで廃棄。

スーダンやイラクに派遣されていた自衛隊が現地で遭遇した危険な出来事を記した活動報告書は?──当初はシュレッダーで廃棄したと言われていたが、後になって発見される。

安倍政権の脅威となった森友学園問題の重要書類は?──一部は改ざんされ、一部はシュレッダーで廃棄。

公文書をめぐる安倍政権の秘密主義的な対応──そして、一度に1000ページの公文書を処分できる業務用サイズのシュレッダー──が現在、日本国内で物議を醸している。

“タイミング抜群”なシュレッダー


日本の歴史上、最も長い政権となった安倍政権が現在対応に追われているのは、毎年春に政府が開催する「桜を見る会」にまつわる問題だ。同会の予算や招待客の増加、また招待客のなかに不適切な人物が含まれていたとして、野党側は非難を強めている。

11月26日には、「桜を見る会」に異議を唱える野党議員らが、話題となっている内閣府のシュレッダーを視察。800ページの参加者名簿を30秒間で廃棄できることがわかった。このシュレッダーを製作したナカバヤシ社のウェブサイトによると、1時間で550kgの書類を廃棄することが可能だという。



また、5月9日には、共産党の宮本徹衆議院議員が「桜を見る会」の招待者名簿を公開するよう要求したが、招待者らのプライバシーを守るためとして、すでに廃棄されたとの説明がなされた。ところが実際には、宮本議員が公開を要求したまさにその日に、800ページの招待者名簿がシュレッダーにかけられていた事実が明らかになった。

政府によると、これは単なる偶然だという。シュレッダーの使用には前もって予約が必要で、即座に使用することはできないと主張した。

アメリカの公文書管理はどうか?


アメリカの場合、1978年に発令された「大統領記録法」によって、大統領が関わったすべての書類が歴史的記録物として保存され、米国国立公文書館に送られる。

しかし現在のアメリカ政府では、公文書にまつわる別の問題が起きている。米メディア「ポリティコ」によると、トランプ大統領には「書類を破ってゴミとして捨てる」という長年の習慣があり、大統領が破った書類をつなぎ合わせる役目を与えられた人々がいるのだという。


情報公開の分野において、日本は長い間、アメリカなど西洋の民主主義国に遅れをとってきた。1999年には「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が公布されたものの、安倍政権は2012年の発足以来、組織的にこのルールを破り、法律の条項をもとに戻そうとしている、と評論家らは指摘する。

「(政権に)都合の悪い事実が隠された文書を改ざんしたり、廃棄したりするという行為がパターン化され、繰り返されているようです」と話すのは、上智大学で政治学教授を務める中野晃一だ。

「また、安倍政権はルールを以前の状態に戻し、政治的記録を公開することなくやり過ごす方法を模索しているように見えます」と彼は言う。

「つまり、ルール破りとルール変更を混在させているのです」

安倍首相は約7年にわたって政権の座についており、それによって政府と官僚を私的にコントロールすることができるようになっている。現政権による公文書の取り扱いに対する姿勢はその結果生じたものであり、同時に首相の性格とも関係している、と中野教授は指摘する。

立憲民主党の黒岩宇洋衆議院議員は、現政権の公文書への姿勢を「安倍首相の傲慢さのあらわれ」としたうえで、日本の法律では原則として、政府の書類は少なくとも1年は保管される必要があるにもかかわらず、適切とみなされた場合には、それよりも前に官僚が公文書を廃棄することが可能であると話した。

11月13日、安倍首相は2020年の「桜を見る会」を中止する旨を発表した。しかし、これによって再び国民の信頼を得るにはもちろん至っていない。