考え中

基本的に日記、生活の中の思いつきなど

全体表示

[ リスト ]

イメージ 1

イメージ 1

村上龍の「半島を出よ」(上・下)は、通読するのにおよそ12時間要する、と著者本人が言う。
しかし自分は、その倍近くの時間をかけて読んだような気がする。
また、福田和也の「作家の値うち」という本がある。
現役作家の小説547冊を百点満点で採点した本なのだが、
これを執筆するに当って著者は、対象作品を含め700冊以上の小説を読破したらしい。
一度読んだ作品も、この本を書くために再読したという。
一冊の本を書くためにそれだけの本を読み込むというのは凄いことだな、と感心したのだが、
むしろ次の事実にもっと驚かされた。
700冊以上を読み、評価付けして原稿に纏めるという作業を、著者は何と9ヶ月足らずで
やったというのだ。ということは一日、2,3冊のペースで読んでいたということなる。
しかもその間、大学の授業、雑誌で請け負っている10本の連載(月200枚相当)を
並行して行ったというのだから、全く恐ろしい。読書における運動能力・持久性の高さ。

かねがね思っていたことがあって、読む速度が速い人ほど、読みも深い。
読書において速度と深さは比例するようなのである。
自分の読書速度は並かそれ以下なので、速く読める人を尊敬してしまう。
と言っても自分の場合、敢えて速く読まないようにしているところもあるのだが。
その理由は、速く読んで読み落としがあったら嫌だから、ということではない。
映画や音楽と違って、文章は決まった時間を持っていない。
それを消化する時間は、あくまで読者が決定する。
読者の体内に流れる時間と、その文章が内包する時間を、どこかのポイントで擦り合わせるのだ。
この擦り合わせがうまくいかないと、その文章を正しく味わえないような気がする。
だから多分ぼくの体内に流れている時間は非常にノンビリしているんじゃないか、
そういうことなんじゃないかと思うのだ。
そしてこれは、その人が世の中を見る世界観にも関わってくるような気がしている。
さて、試しにグッと集中力を高め、何度も読んだヘミングウェイをなるべく速く読んでみる。
するとどうだろうか。
まるで別な作品を読んでいるような気がする。
自分のテンションが高まるため、作品世界もまた、異様にテンションが高く、テンポが速く感じられる。
登場人物ですら、まるで別人格を与えられたかのようだ。
いつも歩いている道を息切らせてランニングすると、風景が少し違ったものに見えるのと似てる。
それはそれで発見である。
が、やはり自分としては、その世界を歩きたいのだ、という、そういうことなんじゃないか。
自分のテンション、普段見ている世界へ、作品世界を招き寄せるというか。

とは言いつつ、速く読めることへの憧れや必要性は常に感じている。


開​設日​: ​20​05​/6​/6​(月​)


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事