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ねじれ双角錐群『心射方位図の赤道で待ってる』



 待チ人ハ来ズ。
{だから│されど│そして}
 ぼくらは。


神待ち——寄る辺ない少女がインターネット掲示板で自分を泊めてくれる存在を探すことを意味したその言葉が、いつしか文脈を逃れ、眠らない街を闊歩する。
現代、未来、そして別世界に、まだ見ぬ出会いを透視する淡い待望。文芸同人ねじれ双角錐群がSFと幻想の視座から祈りを再定義する第四小説誌!



 サイトはこちら。私はBOOTHにて注文しました。神待ちを待っていたら神待ちは発送されポストに投函された。今回もクオリティ高い面白い作品ばかりでした。電子化期待!

01『神の裁きと訣別するため』 murashit
 箇条書きいいですね。テンポがいい。インデントも効果的だし、語りかける文体も相まってとても読みやすい。そもそもメインにじゃんけんの三拍子を持ってくる時点で強い。読みながら音楽的な要素を感じ、絶妙なバランス感覚をもって作られている印象を受けました。挿話も好き。なぜかカフカの『門』を思い出したけどたぶんだいぶ違う。

02『山の神さん』 笹帽子
 安定のボーイミーツガール登山SF。天丼とメタが練りこまれた掛け合いが秀逸で何度も笑いました。神籬のキャラと容姿がよい。追い詰められて補導されたあたりが趣味ど真ん中なので映像化をお願いします。あと無理やり伏線回収してくるとこむちゃくちゃ好き。自然に大正を感じさせる広瀬パートすごいし、神籬パートとのコントラストがうまい。ところで取材のために登山されたという噂は本当ですか。

03『囚獄啓き』 小林 貫
 サスペンスSF。「ひとやびらき」と読むで合ってますか。どこか海外文学めいた、乾いているのに重い空気感がよい。快感の逆位相を与える発想と、顕現のきっかけがデータの欠落というのが妙にリアルでよい。データ欠落なんかするのか? 一人分の容量が大きければあり得るか、という近未来感。サンプリング対象が老若男女だし事務的すぎて恐れおののきました。牛乳の比喩がなぜか強く印象に残っています。

04『杞憂』 鴻上 怜
 硬派かつ高密度な北アメリカ大陸SFに突如としてねじこまれるギャル系変態風俗SF。冒頭のルビ多様文体でガツンとやられて読み進めていくと、なにこれすごい……これがギャップ萌えってやつ?(違う) 水虫を始めとする変態マルウェアとか容姿が記号化されステータスになってるのとか好きすぎてお腹いっぱいです。あと人がゴミのように死んでいって震えた。ラストは男子の夢でしょう。窒息死してみたいよね。

05『キノコジュース』 国戸 素子
 これは……。最近この種のゲーム世界小説(そんなジャンルあるの?)をいくつか読む機会があったのですが、そのなかでもだいぶ異彩を放っている。語り手の行動、語りが突拍子なく、それでいてひとつに執着することがここまでおぞましいとは。苔を食べるくだりが本当に理解できなくてぞっとしました。何だろう私が意味背景を知らないだけ? 本誌中で最も狂気を感じました(褒めてる)。

06『蟹と待ち合わせ』 cydonianbanana
 冒頭からかっこいい言語構造系SF。入れ替わりながら同じ主体を指す一人称複数語りがよい。精神複合体的なイメージ好き。アクセントが日で変わるのとか。有無を言わさず複数本の足で作業する彼らについて想像させるのたまらない。彼らは意識を仮託された蟹型機械なのか? 蟹型生命なのか?(それ蟹じゃん)ラストは読み切れていないけど謎の感動でした。作者さん褐色おねいさん好きすぎでしょ。

07『ブロックバスター』 津浦 津浦
 難易度高めでした。まったく繋がりがないように見える複数の語りがひとつのイメージへと収斂していくの好き。それぞれの語りも硬派、ソフト、私小説っぽさ、時折はっとする比喩表現などあり楽しい。フォントで語りの切り替えをしているのだけれど、どこが繋がっているのかもう少しわかりやすいとよりよかったと思います。


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