スマートに進化する
“上海の営業スタイル”
上海は、20年前に比べたら各段にストレスフリー社会に近づいたようだ。テクノロジーの進歩も勿論だが、大きく変わったのはやはり“人”だろう。日本語が通じる商業施設が増えたのも、日本語を勉強した中国人材が増えたからにほかならない。日本人が上海生活を快適だと思えるのも、多くの上海の人々が日本に渡航し、「日本的価値」を共有してくれるようになったからでもある。
筆者自身も、日本人と中国人の間で「共通の認識」が持てることが増えたように感じている。たとえば、こんなことがあった。
2カ月前の上海で、アジアの不動産投資に関心を持つ日本人の友人に付き添って、マンションの内覧をしたときのことである。地元の不動産業者ともなれば“強引なセールス”が予想されたので、友人はトラブル回避に通訳を頼んできたのだが、案内をしてくれた営業マンの姿勢は、意外にもマイルドなものだった。
その営業マンは3物件を案内してくれたのだが、そこからは「成約」を急ぐという、かつての「ガツガツ営業」は消えていた。不動産営業マンの給与は個人の売上成績次第で、コミッション制を基本にした熾烈な競争があるはずなのに、接客のアプローチは洗練されていて、非常に紳士的なものだった。
むしろ、彼にあるのは“顧客目線”で、「慌てなくて大丈夫」「時間をかけて判断してください」など、ある意味日本人好みの低姿勢なトークだ。ハングリーな営業から、スマートな営業への転身ぶりに、すっかり拍子抜けしてしまった。