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俺たちの同人誌即売会

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2018-06-19 13:39:55

こみパは大事なことを教えてくれました

それは「ファンのどうしてもの集い」か「ただの海賊版マーケット」か。

同人イベントの初参加は17年前、中3で福岡ドーム。一般参加だ。
「同人誌」というものを買うのに勇気がなくて、友人らと企業ブースだけ見て帰った覚えがある。
そして帰宅後「……これなら天神のアニメイトでいいじゃん。俺のアホ!」と猛烈に反省した。
一年後の高1秋に、やはり福岡ドームで初のサークル参加をする。
この頃は二次創作の漫画であった。Kanon。月姫。
さっぱり捌けないままマリンメッセ福岡・福岡国際センターと新刊を持って参加し続けた。
もうこれっぽっちも手に取ってもらえなくて、今や友人たちといい感じの苦い記憶である。
びびりながら郵便局で「て、テイガクコガワセ、っていうのを、ください?」と購入し、
びびりながら印刷屋さんと電話でやりとりして生稿を送り(印刷屋がHPを持つ時代ではなかった)、
ゲーム「こみっくパーティ」の真似事・追体験をして喜んでいたような感じだ。
ミーハーな地方のキッズの、オタクごっこじみたサークル参加ではあったが、
無残爆死にも関わらずモノを作って発表するのは本当に面白いと思えたので、
以後は文やら一次創作にシフトしながらも創作発表は続いている。
今ではありがたいことにコンテンツの原作側に関わらせてもらい、お金もいただけるほどとなった。
それ一本で食べていけるほどではないが、本当にありがたいことである。

つまり私は、
まだブロードバンド回線もなく、ネットも未発達だった頃からの即売会参加者だ。
「ラミカ」とか「便せん」とか恐ろしい話題がツイッターに現われるたびに、ヒヤッとしている。
「ファンロード」とかよりはちょっと後の世代だ。
ゲーム・漫画・アニメの多重展開をした『こみっくパーティ』の影響で、
同人誌即売会に足を運んだ人間である。

そんな人間としては、即売会というものの捉え方は『こみっくパーティ』だ。
あれが唯一絶対なる道徳の教科書・基本原則として私の中にある。
あえて主語を大きく語るならば、あの頃からオタクをしている「私たち」の中に共有されている。
最近ではあれで一貫して強調され続けていた基本原理を全く知らない、
ややもすると「絵は描けるし、お小遣い稼ごう!」のノリの参加者すらいるように思う。
そして今、それが多数派になりつつある気がするから、
生きた化石も砂から這い出て、古老の如く、私たちの視点を語ろうと思うのである。
生きた化石って、まだ30ちょい過ぎなんですけど!

『こみっくパーティ』というのは、
(株)アクアプラス……今も昔も『うたわれるもの』を作っているところだが、
そこが作ったシミュレーションゲーム・アドベンチャーゲームだ。
名前こそ『こみパ』だが、『コミケ』に取材した感じは間違いない作品で、
様々に立場・個性の異なる参加者たちと主人公は新人同人作家として交流し、
だいたいはコミカルに、時にめちゃくちゃシリアスに、様々なドラマを体験させてくれた。

九品仏大志(くおんぶつたいし)という主人公の相棒キャラがとにかく奇抜で、
それゆえに完全ギャグ・ネタ作品のような第一印象を与えてしまうのだが、
その実、中身はしっかりと作られている。例えば……

詠美:17歳。流行りを追いかける超大手同人作家。売り上げ至上主義。自尊心大。自称「女王」
由宇:19歳。姐御肌。同人は原作への愛、売り上げは二の次の中堅同人作家。詠美とは昔からの付き合い。
彩:17歳。高い画力を持つが一次創作で売れ線ではなく、サークルには誰も立ち寄らない。
すばる:17歳。始めたばかりで、漫画は何もかも下手だが情熱は人一倍。元気。
玲子:18歳。コスプレメインで、同人誌は友人たちとの記念誌的に肩の力を抜いて参加している。
瑞希:18歳。主人公の幼なじみで、オタク文化を嫌悪している。

……と、けっこう設定がガチ。18歳以上は大学生社会人、17歳以下は高校生。
熟練の作家たちでは「売れないと無意味」な詠美と「売れんでもいい」の由宇が対比されている。
また、創作力超一流同士でも、詠美は流行りを貪欲的に追いかけ大ヒット、彩は一次創作で閑古鳥。
そもそも頒布数を全く気にしていない「内輪で楽しむ、完全自己満足」の方に、玲子がいる。
リア充的に主人公と仲を深めたい幼なじみは「同人誌とか意味わかんない、やめて」と引きはがそうとする。
この設定だけで、ヘビーな一般文芸的な展開が予想できるだろう。

そして何より、ヒロインとして、こみパスタッフの牧村南がいる。
迷惑オタクを排除し、発禁本を取り締まり、詠美や由宇ですら頭が上がらない南さん。
こみパのルールを守る者には優しく、そうでない者には厳しい。

どんぐらい厳しいかというと、本気で怒られるし、軽蔑される。
例えば詠美ルートのクライマックス。
主人公は詠美の「売り上げ至上主義」を改心させるために、
いろいろあってこみパで「売り上げ部数勝負」を行なう。
伝説の詠美サークルと、新進気鋭の主人公サークルが頒布部数勝負、こみパは大盛り上がり。
物語的にはまさにクライマックス……のはずだが、
主人公の善なる動機といえど、すでに仲良しグループであった南さんはこれに「理解を示さない」。
「……」
仲良しだった南さんが、軽蔑しきった無表情の立ち絵と無言で現われるときはゾッとする。
「……」
「南さん……」
「……主人公くん。由宇ちゃんから事情は聞いてるけど。
こみパの理念、他の参加者たちのためにも、許されることではないわ。
少しでもトラブルになりそうだったら、即つまみ出すから」
的なことだけを言って立ち去っていく。
釈明も謝罪も受け取ってくれない。
主人公が、明らかに友情を失った描写が挟まるのだ。
「主人公の友を思う善なる意思も、こみパのルールを超えない」
ことが明確に示されたシーンだと思う。
そうなのだ、こみパはこみパ。
参加者平等で利益未追及こそが以後も存在を見過ごされる(黙認ではない)ラインであり、
詠美と主人公が「無許諾二次創作で頒布部数競争をして話題をさらう」なんていうことは、
こみパ継続の観点からすれば絶対にNG。
それが、親しいカズキの友を思う気持ちからの行動でも、
他の全参加者が犠牲にされることを南さんは良しとしなかった。
この点を、アクアプラスはしっかりと描いている。

というのも、今ほどコミケがメディア露出していなかった時代の作品である。
フィクションとはいえ締めるところは締めておかないと、
『無許諾の二次創作マーケット(海賊品マーケット)に参加をすすめる作品』として、
アクアプラスが「反社会勢力」と認定される危機すらあった。金融機関取引停止。
いや、実際、二次創作で愛が少なく利益が多ければただの『海賊品マーケット』ですし。
その胴元はただの反社会勢力。それに参加しようと呼びかければ問題がある。

たびたびネットで議論になる同人誌即売会の在り方だが、整理していってみよう。

大前提として、
・無許諾の二次創作は権利元から訴えられても仕方がない。
親告罪だから権利元から訴えられない限り罪ではないと言えばそうなのだが、
そもそも訴えるのって面倒くさいのだ。
面倒くささが0、一瞬一秒で訴えられる、そういう状況で訴えられていないのなら
「訴えられない限り完全無罪ですけど?」みたいに開き直るのもアリかもしれないが、
現実には
「むかつくけど、忙しすぎて訴えられねえ」
「すでに人気が出てて、訴えたら俺たち公式の評判下がるぞ……どうすんだこれ」
「訴える準備のために、本業の進捗遅れます……こんなことしてる場合じゃないのに……」
などなど、権利元にすでに迷惑をかけているのだ。
ぶっちゃけ二次創作なんて、存在しないのが一番なのだ。
だからもしやりたいなら『存在しないように存在する』それが原作リスペクトだ。

『存在しないように存在する』とは、
・存在を実は感知されているが、さっぱり訴える気にならないから、感知されてないことにしてもらえる
状況を作るということだ。
さっぱり訴える気にならないとはどういう時か?
逆に、訴える気になるとはどういう時か?

〇訴える気になりにくいその1:利益が出ていない
どんなビッグタイトルでも、最初は誰か(orプロジェクト)の一次創作だ。
一次創作というのは、作るのは難しく、経済に乗せるのはもっと難しい。
子供を産むのは大変だが、死なせない・グレさせないで社会人まで育てるのはもっと大変みたいに。
苦節X年、やっと収益構造ができたぞ=子供が社会に出たぞ って感じだが、
そこであなたの隣人があなたの子供の隠し撮り写真集を勝手に売っていて、
あなたのおんぼろ1Kの隣に豪邸を建てていたらどう思うだろう。
不快感や恐怖を感じて「やめろ」って言うよね。
利益追求型の二次創作をする、二次創作で儲けるというのは、そういうことなのだ。

次の二つのケースを見てみよう。

A:隣の人が、あなたの息子の隠し撮り写真集を勝手に作って売って、それで生活している。
前述の通りのケースだ。

B:あなたがファミレスに行くと、後ろの席の女子高生二人があなたの息子について話している。
「〇〇先輩超かっこいいよね……」
「ほんとかっこいいよね」
「見てこれ、体育祭のときの応援団の写真。親が撮っててさ」
「え、ええ~! いいな~!」
「こっそり焼き増し、する?」
「う、うん……おねがい……」
「焼き増し代……100円、いい?」
「払う……」

親であるあなたが「見て見ぬふり(聞いてきかないふり)」するのはどちらだろう。
Bだろう。
何やら若い乙女が、倅に憧れを抱いている様子。
写真を眺め「はぁ……」とうっとりしてどうにかなるものではないが、
まあ、それで甘酸っぱい青春の恋心になるというのなら、
倅の写真を焼き増しするぐらい目をつぶろうではないか……
利益を得ているのは写真屋さんが100円ぐらいだし。
お嬢さんたち、私は何も見なかったし聞かなかったよ……
そんな感じ。

もしここで片方が豹変して
C:「焼き増し代3万円ね」「う、うう~!お年玉まで待って」

となったら「おいちょっと待て」とあなたは突っ込むのではないか。
そんなもんだろう。そんなもん。


〇訴える気になりにくいその2:公式と競合関係でない
競合関係というのは、お金稼ぎのライバルである、という意味だ。
公式が商品展開しようとしている物を、作為無作為関わらず作ってしまったらまずいということ。

・同人誌は比較的安全(見逃されやすい)
・クッズはけっこう危険(見逃されにくい)
・どちらにせよ通販はかなり危ない
・同人誌のDL販売は相当危ない
・グッズの受注生産&通販は死ぬかも
・公式絵トレスは即死
・公式の名前が入ってると即死

と言われるのは、この競合関係へのなりやすさという観点。
あなたの自由な妄想と尖った嗜好で書かれた漫画同人誌は……
宇宙が何巡かしても、まず公式、出さないでしょう。
同人誌が辛うじて安全な方と言われるのは、
・内容的に公式とかぶるはずがない ・利益率が薄い ・すごい手間
の3点を押えているからだ。
「存在を感知していないふり」をしても、公式的には取引先と揉めることがあまりない。

グッズになると危険度はかなり上昇する。
取り扱いは数段控え目にしておきたい領域になる。
というのも、先ほどの真逆で
・公式と内容がかぶりやすい ・望めば利益率を高くできる ・手間は少ない
の3点を身に帯びているからだ。
もうぜんぜん利益出てませんよってぐらいの頒価にしないと、
公式や公式の取引先から「ただの海賊版」と認定されても仕方が無い。
愛があるのに?
どれだけ愛していても、お隣さんの息子を誘拐してはいけない。

漫画、アニメ、ゲーム、小説、芸能人……
「原作」の利益モデルは様々に違うが、
「最初は損をして、グッズで一気に利益を出す」形の所は多い。
アイドルのライブを考えて欲しい。
チケット代と同等かそれ以上に、物販にお金を使うだろう。
当然、アイドルのプロデュース側は物販で運営資金や利益を得るつもりでやっている。

また「公式グッズ」が存在するならば、同人グッズに利益がなくともそこそこまずい。
というのも、公式はグッズメーカーに「〇〇のグッズを作る権利」、契約書を買わせている。
その中には「他のグッズメーカーには一切許諾を下ろさない」という条文も含まれる場合がある。
利益が出ない自爆めいた同人グッズ制作ですら、そういうグッズメーカーには負担になるのだ。
あれを商品として出そうと思ってたのに……あんな安値であんないいもんがあるんかい……と。
同人誌や同人グッズが公式タグにつけてアップされたりするのは大変まずくて、
その取引先が
「公式さん? どうなってますのん? 条文違反とちゃいます?
すぐあれら全部消してもらうか、違約金払ってもらいましょか?
誠意、見せてもらわんとなあ」
と、企業が宇宙で一番嫌がる「企業間トラブル」の火種になるのだ。

先ほどの下3つについては、もうわかってもらえるだろう。

・グッズの受注生産&通販は死ぬかも
・公式絵のそのまま流用やトレスは即死
・公式の名前が入ってると即死

競合もいいところ、これはもう「海賊版商法」なのである。
何も知らない人が「公式の発行物と勘違いする物」は完全にNG。
今では同人制作物がネットやらでどこまでも露出してしまうので、
「公式グッズだと思って買った」という人が混ざる可能性を排除できない。
「海賊版」が出始めたら、プロデューサーなり公式の裁定者は、動かざるを得ない。
それは公式内にいる社員の皆や、取引先の社員さんたちの生活を守るために必要なことだ。

あなたの会社が、他者にあからさまな違法行為でボコスコと攻撃されている。
利益や企画をずこずこと潰されて、傾き始めている。
社長、早くなんとかしてくれ~って感じだ。
こんなときにニコニコと笑っているだけの社長と、
「対策訴訟チームを作り、ガイドラインも制定する」と動いてくれる社長、
どっちが「心の広い社長」だろうか。当然「後者」だ。


そして問題は、
公式にとって「ここまではOK、ここからはアウト」と言うことに『メリットはない』ことだ。
回答を求められた結果「グッズはアウト、同人誌はOK」などと明言してしまえば、
今度は「ジャンルAの同人誌は公認だ! 人気者になるぞ! 稼ぎまくるぞ!」と、
他人の褌で相撲を取って立身出世を望む、変なやつが来るのである。
そもそもなぜアウトでなぜセーフかを線引きできる言葉はないので、
即死級の何かが出てきた時に
「めんどうくさいから、全部アウト」
という措置も当然にある。

「あなたの息子さんの写真集、生写真、写真焼き増し、主人公にした漫画、夢小説、イメージアクセサリー……
どこまでアリでどこからがナシか、親御さん、公式回答お願いします!」
なんて迫られても、これに親御さんが答えるメリットないよね?
「もうなんというか……全部ナシです」って明言するしかない。全てのグレーは全て黒になる。

あなたが女性だったとして
「僕は君を毎晩〇〇〇したり〇〇〇したりする妄想に励んでいるんだけど、
君的にはどこまでアリでどこからナシ……どれなら公認か教えてくれる?」
といきなり男に言われたら、どうする。
そういうのは考えることもあるだろうし表出しない限り自由な気もするが、
家の中で一人でこそっとやれ。
本人に言えば完全に意味が違ってくる。
本人が「全部ナシ」と言えばそいつは「心が狭い」と叩いてくるし、
本人が「私に言わなければ、頭の中ではいいんじゃない……」と言えばそいつは
「みんなー!
Aさんは、個人の頭の中で〇〇〇されたり〇〇〇されたりするのはアリなんだってー!
頭の中はAさん公認! 頭の中ではAさん〇〇〇し放題だよー!」
と大声で叫び始めるわけだ。
どっちに転んでも面倒くさいというか、恐怖でしかない。

ハンター×ハンターのハンター試験「答えないのが正解」ではないけど、
同人遊びの可否など「聞かないのが正解」「目に入れない耳に入れないのが正解」なのだ。
実際には目に入る耳に入るは防ぎようがないので、
「公式が、全く知らないふりができる余地を残し続ける」
が暗黙の盟約なのである。
無視できない競合・利益侵害行為は「公式が動かざるをえない状況を作る」ので、この盟約から外れている。

二次創作同人が存在し続けるためには、存在しないようにしなければならない。



------同人誌即売会が存続するために------

同人誌即売会を「海賊版マーケット」にしないために、とも言える。

・利益追求をしない
・名声追及をしない
・競合になりそうなものは十分注意する
・海賊版と見られてしまうものを作らない
そして何よりも、↑について「ずるいことを考えない」。

1、「利益追求をしながら、
利益追求をしていないように見えるにはどうすればいいだろう?」

2、「利益追求があからさまでも、
責任の所在が不明確で訴訟を起こされないためにはどうすればいいだろう?」

3、「企業(公式)は腰が重いんだからさ、なんだかんだやったもん勝ちなんだって」

こういう歪んだ努力・研究をしない。
というかそんなの、いくらでも思いつく。
商売的な「必勝法」「正解」なんて、同人誌即売会にはいくらでもある。
そこらへんの大学の商学部を出た人なら、あまりにも隙だらけで驚くだろう。
そして昔から同人遊びをやっている人には、そういうところの出身者は大勢いる。
だがみんな「必勝法」も「正解」もやってこなかった。
そういう場所じゃないから。一次創作者である公式を泣かせるから。
泣かせたら、この素晴らしい同好の士の交流会が消えるとわかっていたから。

いくらか先手を打って述べておこう。
上述の「ずる」の仕方としては、

・ノベルティ商法
新刊のノベルティ(おまけ)の封入をランダムにすることで、
ノベルティコンプを目指して何度も新刊を買わせる。
ノベルティの種類を増やしたり、なんならノベルティの点数に偏りをつけておいてもよい。
「利益が出ないようにたくさんノベルティを作ったんですよ~」と言いながら、
その実コンプガチャを引かせているという「必勝法」が成立する。

・くじ形式、オークション入札形式
利益率の極大化を図る売り方だが、
「利益追求のつもりはなかった」と言い逃れできるタイプ。
例えばくじ形式なら、
「新刊が当たるガチャ。1回500円。外れたら既刊。
新刊確定購入は2000円」
元々1000円でも利益が出る(余裕で頒布できる)新刊の相場を、2倍につり上げられる方法だ。
くじの方は6回に1回新刊が出るぐらいの封入率にしておく。
これは新刊の頒価を自然とつり上げられる上に加えて、
くじ客の爆死から利益を得ても、
「運が悪すぎですよ~これじゃあ俺、儲ける気なかったのに儲けちゃいますよ~」
とか言って誤魔化せるのが強い。狙い通りなんだけど。

サークルスペースでのオークション入札形式も同様。
何か一点物の色紙なりポスターなりが30000円という高値で売れたとしても、
「その値段をつけたのは自分ではない」。これも、狙い通り。
オークション形式はサクラの介入が容易で、
ふせんで値段を上に貼っていくタイプなら、頃合いを見てつり上げてもらえばいい。
全然大したことないラインナップでも、
開始時にサクラによって全部5000円以上いれてもらえば、
それぐらいの価値がある作品群に見えるものだ。箔が付くやり得。
売れ残りという「不名誉」(即売会では何の不名誉でもないのだが)が発生しそうだったり、
事前の頒布希望価格よりも安値で落札されてしまいそうなら、
サクラに頼んで高値を入札してもらい、
それ以上が出なければサクラに売れたことにすればいい。やり得。

・責任ローンダリング
何も作らないサークル主が胴元となり、
たくさんの有名絵師に発注して二次創作グッズを作り「グッズ屋さん」をする。
公式に露骨に喧嘩を売りにいくインファイトスタイルだが、
もし訴訟を起こされたところで
サークル主は「発注した意図とは違うものを絵師が上げてきた」と言い、
絵師は「サークル主から絵を頼まれて仕上げただけ」と言う。
つまり、利益追求や競合材制作の意図は無かったという風にお互いが装う。
当然「お互い安全に儲けよう」なんて話は最初についている。
「サークル主」という案山子を挟むことで、負けなしジャンケンを作り上げるのだ。



……最近目立ってきたなと思うのは、こんなところ。
「いや、そんな意図無いし! 勝手に悪役にすんなし!」
と思った人がいるかもしれないが、
「誤解されるようなことは、同人という場ではやめよう」。

例えばくじ商法やオークション商法は、
同人誌即売会という愛と自爆以外何もいらない場所において、その形体を用いる必要がないのだ。
一番欲しい人にあげたい? なら、サークル主が頒価を定めて、一番最初に来た人に頒布すればいい。
くじもオークションも「払う額を買う側が決める」やり方だが、
値段の高低に関わらずサークル主は自分の責任において1つの頒価を決めるべきだ。
サークル参加者は、公式の怒りに触れたならばすぐにブツを引っ込める前提でのみ参加が許されている。
だから同人誌には奥付が必要だし、そこには連絡先の記載が必要なのである。
「私たちは海賊版商法+逃げ切りの意図はありません」という意思表明だ。
サークル参加していいのは、万が一公式に呼ばれれば真摯に対話の席につく意思のある者だけ。
「払った額は相手が決めた、儲ける意図はなかった」
「くじやオークションだったから、いくら払われたか覚えてない」
などという有耶無耶化の可能性を残す、ストロングすっとぼけスタイルは入り口からして間違えている。
新幹線代や宿泊代を補填したいから高値をつける……うむ、自己責任でいいではないか。
「色紙 1点もの 10000円」と堂々とお品書きに書いて残せばいい。
それなら叩かれる? 公式以外に叩かれても気にしなければいい。
本当にまずいなら公式からDMが飛んでくるから、そのときに真摯に対応すればいい。
いざという時に公式がやってくる足場を破壊しておき、
さらに自分の逃走経路となるものを用意しておくことが問題なのだ。



つかれてきたぜ。

当たり前の話でしめよう。
「無許諾二次創作で、一次創作以上の全てが手に入ると思ってるのは変」。
人気、金、仕事、幸せ……
無許諾二次創作を頑張っていけば全部手に入ると思っている人は、相当ズレてるぞ。
私たちがファンになったすごい作品ってのは、
誰か個人やプロジェクトが金と時間とリスクに向き合って育て上げた一次創作なんだから。
二次創作では本来的に「一角の人物」にはなれない。
二次創作は、女子高生が憧れの先輩の写真を焼き増しして、
こっそりと「……はぁ」「いいよね……」って言いあうぐらいが、限度なのだ。
生活費を稼ぐためとか、写真家として一角の人物になるためとかを目的として、
憧れの先輩の隠し撮り写真集を出しちゃダメなのだ。
どうしたら言い逃れできるだろう……なんて考えるのは、完全にアウト。
私は二次創作自体が悪いと言っているのではない。
ネットにあがるファンアートは私も大好きだし、
クローズドなお絵描きオフ会も、ばんばんやりまくってくれ。
それで全てを手に入れようとさえしなければ。

繰り返すが、
ファミレスの隅っこのボックス席で
「……はぁ」「いいよね……」「焼き増し代払うわ……」「100円……」
と、憧れの先輩からは感知されない範囲で存在するのがマナー。
同人誌即売会なんて、そのボックス席がちょっとでかくなっただけなのだ。

二次創作は、存在しないように存在しなければならない。
sns時代でそれが無理なら、
公式が「看過できない」と思わないように、
そして「そんなのあるのー? 知らないなー(コナン声)」と公式が言い逃れできるように、
一人一人が節度をわきまえる必要がある。



もう17年経ってしまった。
歳も余裕で抜いちゃいましたね。
これでいいっすかね、南さん。


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糸魚川鋼二 @itoi_s
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