金融は、他の業種に比べてAI活用が進んでいる業界だ。現代社会の根幹を成す業界で、長い歴史と伝統があり、政府による厳しい規制の対象にもなっている。それだけに、最新技術の導入が一筋縄ではいかない業界でもあるが、AIは着実に金融業界を進化させつつある。
いまや毎日のようにAI(人工知能)の話題が飛び交っている。しかし、どれほどの人がAIについて正しく理解し、他人に説明できるほどの知識を持っているだろうか。本連載では「AIとは何か」といった根本的な問いから最新のAI活用事例まで、主にビジネスパーソン向けに“いまさら聞けないAIに関する話”を解説していく。
(編集:村上万純)
まずは、この業界におけるAIの導入状況を見てみよう。金融業界は必ずしも「最新技術がいち早く活用される」ような領域ではないが、労働集約的な業務に携わる人も多く、知的作業の自動化・高度化を可能にするAIとの親和性は高いといえる。
2010年代から盛り上がっているFinTechブームも追い風だ。FinTechは、デジタルテクノロジーを活用し、金融業界の高度化やサービス内容の改善などを図る動きを指す。
もともとは大手金融機関が手を伸ばしていなかったニッチな領域や、彼らが見落としていた利用者の不満に目を向けたスタートアップによる取り組みだったが、それが大きな成果を生んだことで、大手金融機関も注目しはじめた。金融庁は規制当局として、イノベーションを阻害しない形でFinTechの動きを支援していく考えだ。
AIブームも、こうした流れの中にある。矢野経済研究所が2018年12月に発表した調査結果では、金融業界で「既にAIを導入している」と回答した企業は12.5%に達しており、全体平均の2.9%を大きく上回った。PoC(概念実証)の取り組みも、他業種よりかなり進んでいるのが分かる。
この調査ではRPAなどもAIに含まれており、「何をAIと定義するか」という問題は残るが、金融業界でAI活用が進んでいることには変わりはないだろう。
具体的なAI活用の事例を見てみたい。ここでは(1)取引、(2)顧客対応、(3)金融商品、(4)事務――の4つに整理して考えてみよう。重なり合う部分も多いが、話を簡単にするための分類と思っていただければ幸いだ。
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