お見事です。Tシャツのデザイン盗用を、AIとツイートで返り討ち

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お見事です。Tシャツのデザイン盗用を、AIとツイートで返り討ち

AIの盲点をついた反撃なんですね。

AIによる著作権の蹂躙、許せませんね。機械や仕組みを発明したら、それは知的財産となりますね。かっちょいいデザインを生み出したら、そこにも、目には見えないけど著作権が発生しています。意匠権や著作権も、知的財産なんです。その知的財産の創造主たちのTwitter(ツイッター)での小気味いい反逆劇を、とくとご覧ください。


Twitter上で「それTシャツにしたい」とか「このデザインをTシャツにして」というフレーズがコメントに入ると、どうやらクロールしているボットがその元ツイートにあるデザインを、片っぱしから盗作してはオリジナルTシャツ販売サイトで売りさばいているようだと、話題になりました。

人気のTシャツデザインがボットによって盗用されているようだというのです。

Mediumによれば、そういった悪質な小売サイトの出品者はAmazon(アマゾン)、A&H Merch、Toucan Style(トゥーカンスタイル)、Moteefe(モティーフェ)などを含むプラットフォームなどを使っているとのこと。アーティストの使用許可を得ないまま、「Tシャツにして」とつぶやきがあった数時間後には、そのデザインのプリントTシャツがそのサイトで販売されているというのだから、たまりません。もちろんアーティストの権利は無視ですし、アーティストはこれによって収益は得られません。それに気づいたアーティストが、サイト運営者に連絡してその作品を削除してもらうようにするには、気が遠くなるような面倒な手続きを踏むしかありません。活動の場をソーシャルメディアに頼る個人のアーティストなら、これがどんな悪夢かはおわかりでしょう。

しかし、デザイナーたちも黙ってはいません。

画家のロブ・シャンバーガーさんが12月に問題を報告しています。「Twitterで面白い作品を見つけても、それをTシャツにしたいというコメントはその下につけないでください」とロブさん。 ボットがそれを見つけて、短時間の間に勝手に作品を盗用してしまうのです。「これはアーティストにとっては悪夢の始まりです。盗用商品を削除させるのには非常な苦労が強いられます」

そこで、アーティストの@Hannahdoukenさん(Twitterアカウント名)はあることを思いつきました。「Tシャツを作って」というつぶやきで、ボットが自動的に面白い作品を自動的に集めているだけということは、Tシャツに実際にプリントされるコンテンツまではチェックしていないのではないかという仮説を立てたのです。

そこで@Hannahdoukenさんは、試しにTwitterで投稿してみることにしました。「このサイトでは芸術作品を盗作しています。ここのTシャツは絶対に購入しないでください」というメッセージをデザインに盛り込んでツイート。そこでみんなに「これをTシャツにしたい」とコメントしてもらったのです。

反撃の始まりです。変なミームを作ったり、著作権侵害にうるさいディズニーの絵をあえて使ったりして、メッセージを流し始めると…複数のウェブショップで「ディズニーの許可なくこの絵を使ってます。ジョークじゃないよ。著作権の侵害です。ディズニーに訴訟を起こされたいんだね。裁判費用もかかるのに」 といったデザインのTシャツがバンバン登場しはじめました。

その中にはミッキーマウスの絵に「中国はウイグル地区のイスラム教徒に対する犯罪に責任をとるべき! ディズニーの知的財産部は至急連絡をとるように」などという辛辣なメッセージを添えたものも。みんな怒り心頭ですね。

その他にも、Disney、Amazon、Google、Coca-Cola、Walmart、Appleのロゴに、「訴訟裁判サークル」と書いたものや、マリオやミッキーに「著作権侵害」の文字を入れたものまでオンラインストアに登場しはじめました。

これは、AIやボットを駆使した盗用作品の大量販売を簡単に許してしまった、プラットフォームの脆弱性を見せつけられた象徴的な出来事かも。Amazonも盗作商品が溢れかえっていることは、以前から話題となっていますし、これらの作品の削除依頼をしてもなかなか削除されないことも。こんな感じの盗作はInstagram(インスタグラム)も報告されています。Amazonには偽商品も溢れかえっており、Amazonでは多額の資金を投入して防止措置に励んでいるといいますが…経済協力開発機構(OECD)では、 世界の商品全体のうち、約3.3パーセント(約5900億ドル)の商品は偽物であると報告しています。 オンラインショップもこの状態を悪化させているとも。

ディズニーのような大企業では、知的財産の侵害について対策をとっている企業もありますが、個人のクリエイターではそうもいきません。YouTubeなどでは、著作権侵害のコンテンツ削除システムを採用していますが、それに絡み、偽の著作権侵害クレームによる脅迫も頻発しているのだとか。米著作権改正法(2019)(CASE Act)などでは、これを改善する姿勢も見られ、より厳罰な著作権の取締り規制が敷かれるようになる方向にはなっているものの、現状はめちゃくちゃ。

「クリエイターが盗作されたらそりゃ困りますよねえ。なにしろ盗作がAIの自動化で高速ときたら、防止策が限られる。一旦盗作されて商品が出回ったら、それを削除・回収するのも困難だし、苦情を申し立ててもあとから後から出てくるし」と、米ギズモードのインタビューに答えてくれた@Hannahdoukenさん。「こういうショップで売られているシャツは非常に低価格であることが多く、消費者もつい手がのびてしまうんでしょう。しかもちゃんとした商品かどうかの確認なんてあまりしないでしょう。アーティストのサイトから直接購入してくれればよいのに

ネット上で、すでに少なくとも8つの業者が取締りを受け、多くのシャツは削除されています。Amazonは米ギズモードの質問に回答していませんが、Daily Dotによれば、その他にも多くの疑わしいサイトが今でも営業を続けているとのこと。

「これをやめさせることができるのかは疑問です」と@Hannahdoukenさん。ディズニーなどの会社がこれに気づいたとしても、商標登録されたアイテムだけを削除して、もうやりませんなどと宣って、個人や小さなクリエイターグループの作品を盗用し続ける、ということは容易に想像できます。

消費者はオンラインでTシャツを購入するときには、販売元をよく見て、デザイナーの収益になっているものかどうか、著作権を侵害していないかどうかをよく考えてほしいと、@Hannahdoukenは締め括ります。

「Googleなどの画像検索サイトで調べるだけでもすぐにわかります」と、@Hannahdouken。 「著作権侵害をしているのが明らかなサイトからは、絶対に購入しないでください。どのサイトが信頼に値するかを見極め、みんなと共有したり、個人のアーティストの権利を守ることに協力し、ぜひサポートしてください」

Source: Medium, Twitter(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9), Daily Dot