ドイツでの「平和の少女像」設置に対する日本政府による恥ずべき抗議。現地でも反発広まる

少女像

photo by YunHo LEE via flickr(CC0 Public Domain)

ベルリンの「平和の少女像」に加えられた圧力

 「あいちトリエンナーレ2019」における「平和の少女像」の展示が、日本政府と右派勢力の妨害によって危機にさらされていた2019年8月。日本での報道は少なかったが、ドイツの首都ベルリンでも、同じ作者による「平和の少女像」が、女性芸術家グループGEDOKが主催するイベントで展示されていた。  また、その像は韓国系団体によって、8月14日の”日本軍「慰安婦」をたたえる日”に、ベルリンの名所であるブランデンブルク門の前にも展示された。この像は、同年初頭にルール地方の都市ドルトムントのLWL産業博物館で展示されていたもので、ドイツ全国をめぐる巡回展へと発展していた。  日本軍「慰安婦」問題は、日韓関係のみに限定されてよい議題ではない戦時性暴力の問題は、全世界にある。特にドイツは日本と同様、第二次世界大戦において公権力が組織的に「性奴隷制」に関与したという負の歴史を抱えている。「平和の少女像」を通して、普遍的な女性の権利および国家の責任について思考が深まることはよいことである。  だが、こうした動きに対し、日本政府は圧力を加えている。LWL産業博物館への展示(LWL産業博物館に対する抗議については、『週刊金曜日』2019年9月6日号に詳しい記事がある)、ベルリンでの展示に対し、いずれも大使館や領事館を通じて、抗議を行ったのだ。

日本政府の圧力は過去にも

 日本軍「慰安婦」問題をめぐる、歴史修正主義を信奉する右派勢力と日本政府がタッグを組んだいわゆる「歴史戦」の「主戦場」としては、グレンデール市サンフランシスコ市など、アメリカの事例がよく知られている。  しかし、「平和の少女像」の展示が世界的に拡大するにつれて、オーストラリアやカナダ、フィリピン等でも日本政府の外交的な横槍がみられるようになっている。そして、それはヨーロッパのドイツでも同様なのだ。  現地メディアでは、いくつかの事例が報道されている。2017年、ドイツ東部のナチス・ドイツの女子収容所があったラーフェンスブリュックで、少女像がわずか1週間のみ展示されたときも、日本の大使館は抗議をしている。  2018年8月には、北ドイツの港湾都市ハンブルクにある、平和主義活動に尽力した女性神学者の名をとった「ドロテー・ゼレ・ハウス」で、「平和の少女像」が展示された。日本領事館は領事と副領事を派遣して抗議した。主催者のイレーネ・パブストによれば、彼らは自分たちの主張を伝えるのみで、話し合いに応じることはなかったという。  

発端は2016年のフライブルク市

 ドイツにおける「歴史戦」の発端は、2016年のフライブルクにある。現地報道によれば、西南ドイツの環境都市として知られるフライブルクに、同年、姉妹都市である韓国の水原市から、「平和の少女像」が贈られた。戦時性暴力を追憶するモニュメントとしてだった。市長ザロモンは、喜んで受け入れた。彼は2015年の日韓合意を知っており、ゆえにこれが歴史問題になるはずはないと思っていた(右派が主張するような「合意すること=水に流すこと」という、非常識な考えを彼は持っていなかったのだろう)。少女像は、市内に恒久的に設置することが予定されていた。実現すれば、それはヨーロッパで初めての「平和の少女像」となるはずであった。  ところが、ここから市長の苦難が始まる。業務に支障がでるほどの苦情メールが日本から送られてきたのだ。日本メディアからの取材も相次いだ。もちろん日本大使館からも抗議を受けた。さらに、水原市と同様フライブルクの姉妹都市である愛媛県松山市が、「平和の少女像」を設置するなら姉妹都市の解消をするぞと脅してきた。完全に「炎上」したフライブルク市は、「平和の少女像」の設置を断念せざるをえなかった。
次のページ 
フライブルク市の事例のポイント
1
2
PC_middleRec_left
PC_middleRec_right
関連記事
おすすめ記事
モラハラ夫が家裁で晒す、典型的な醜態7選<モラ夫バスター29>
ボッタクリ被害も少なくないタイの夜遊び。日本人経営もタイ人経営も裏には「怖い存在」が
東大生の新常識。「英語脳」で話せる無料のスマホゲームが業界で話題騒然
PR(株式会社Creajoy)
知らないと損!500円程度で株主になる方法
PR(SBIネオモバイル証券)
モラハラ夫が、日本の夫婦を破綻させる <モラ夫バスターな日々(1)>
たった2週間飲むだけ→ウエスト-23cm !?中年太りのオッサンは絶対見てください
PR(和麹づくしの雑穀生酵素)
「パパのおなかペッタンコ!」 2週間飲むだけ→ウエスト-23cm !?
PR(株式会社ヘルスアップ)
パチンコ業界を悩ませる「6号機の憂鬱」。その裏事情を解説する
経験者が語る「覚せい剤は、なぜやめられないのか」。薬物依存=病気という理解の先にあるもの
妻を抑圧するモラ夫を選んでしまう女性とは? 30年の離婚弁護事例から読み解く<モラ夫バスターな日々9>
激安ボロ物件をリメイクでお宝に。サラリーマンから家賃収入年間2000万超に達した不動産投資家の錬金術
小さなゴムボートで命をかけて何万人もが海を渡ろうとする理由は?
PR(国境なき医師団)
一般人にはわからない、大型トラックがノロノロ運転にならざるを得ない事情
トラックがやけに車間を詰めてくるのは理由があった。元トラック運転手が解説
増える女性向け風俗、男性セラピストに依存してしまう利用客も
PC_fotterRec_left
PC_foterRec_right