我々は何を失ったのか 鈴木寛・東大教授に聞く

大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用延期が決まって1カ月が過ぎた。本紙電子版「Edubate」の読者投票結果をみると、「適切な判断だと思う」が50%と半分を占める一方、「タイミングが遅く、どちらともいえない」が38%、「延期すべきではなかった」が13%と、学校現場には戸惑いが広がったことが分かる。延期決定直後の興奮が徐々に収まりつつあるいま、英語民間試験の活用を支持してきた元文科副大臣の鈴木寛・東大教授に、今回の路線転換が何を意味するのか、大胆に語ってもらった。

(聞き手・教育新聞編集委員 佐野領)


高校は学習指導要領が求める英語4技能を放置してきた
――大学入学共通テストにおける英語民間試験の活用が中止されました。
これからAI時代になってくると、論理的な日本語が書ければ英訳とか英作文はAIがやってくれるようになる。この精度が今、劇的に上がっています。そうなると、大切になるのは本当に信頼関係を構築できる英語でのコミュニケーションだと思います。時には厳しい言葉や自分の意見を投げ掛け、逆に相手からそういうことを聞くというコミュニケーションです。

これからは外国人がいま以上に日本に入ってくる。第1次産業ですら、日本人だけでは成り立たない。広島県の漁業従事者の6分の1はノンジャパニーズです。日本に住んでいても、毎日顔を合わせる上司、部下、同僚、お客さま、取引先にノンジャパニーズがいる。若い世代にとって、英語でのコミュニケーション能力は非常に重要です。

ところが、日本の若者は外国人とのコミュニケーションが苦手。……

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