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【社会】

逮捕の検索結果削除命令 グーグルに初判決「公表されない利益が優越」

 インターネット検索サイト「グーグル」に自身の逮捕歴が表示され続けるのはプライバシーの侵害だとして、北海道内に住んでいた男性が検索結果の削除を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は十二日、米グーグルに一部の削除を命じた。男性が不起訴になったことなどを考慮し、「公表されない利益が表示維持を優越する」と判断した。

 同種訴訟に詳しい弁護士によると、検索結果の削除を認める司法判断は、判決では初めて。東京高裁が昨年八月、強姦(ごうかん)致傷容疑の逮捕歴について仮処分決定を出した例はある。

 グーグルなどの検索サイトを巡ってはネット上に残る個人情報削除を求められるとする「忘れられる権利」が世界的な議論となっている。最高裁は二〇一七年一月の決定で、検索結果を削除できる条件として「プライバシーの保護が情報を公表する価値より明らかに優越する場合に限る」との厳しい基準を初めて示した。

 判決によると、男性は一二年七月に強姦容疑で逮捕され、同十月に嫌疑不十分で不起訴となった。一八年に削除を求めて提訴した。

 判決で高木勝己裁判長は、不起訴となってから七年がたった今も、男性が転勤先で逮捕について聞かれるなど、私生活上の現実的な不利益が大きく、検索結果を表示する社会的必要性を優越すると判断。

 訴訟でグーグル側は、不起訴となったことも表示していると主張したが、「閲覧者が実際には犯罪を行ったと思い、有罪との嫌疑を抱く可能性はなお高い」と指摘して退けた。

 削除の対象となったのは、性犯罪などについて議論が交わされるインターネット上の掲示板。札幌地裁は男性が削除を求めた検索結果のうち、半数以上は表示を裏付ける証拠がないとして認めなかった。

 男性側の吉田康紀弁護士は判決後、控訴する方針を示した。米グーグルは取材にコメントを控えた。

<忘れられる権利> インターネット上に残る個人情報の削除を求める権利。スペインの男性が所有不動産を競売に掛けられた過去についての検索結果の削除を求めた訴えで、欧州連合(EU)の最高裁に当たるEU司法裁判所が2014年、グーグルに削除を命じ、注目を集めた。知る権利や表現の自由を確保する観点から、むやみに削除されることへの懸念もあり、世界各地で議論が起きている。

 

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