合併自治体、特例切れ財政危機 大分・杵築は再生団体回避へ緊急策  (2ページ目)

西日本新聞 一面 泉 修平 稲田 二郎 郷 達也

■特例期限切れ苦慮

 「平成の大合併」で誕生した九州の自治体は合併特例の期限切れを見越し、基金の積み立てや経費削減などに取り組む。ただ人口減や少子高齢化などで多くの自治体で税収アップは期待できず、予算編成は地方交付税に頼る構造は変わらない。将来の安定した財政運営へ自治体の危機感は大きい。

 「合併算定替えの終了で財政運営が厳しくなることは分かっていた。基金をしっかり積み上げてきた」。熊本県あさぎり町の財政担当者はそう話す。

 2003年に旧免田町など5町村が合併。福岡県宗像市とともに大合併の九州第1号。優遇措置は14年度から段階的に削減され、19年度に終了。削減前、56億円の交付税は44億円に減った。町は09年ごろから基金を積み立て、合併時14億円ほどだった財政調整基金は50億円台に。ただ交付税が減ったこともあり、基金を取り崩しながら予算編成せざるを得ないという。

 05年に1市5町が合併した長崎県諫早市。合併時約1100人いた職員を874人に削減し、旧町部の市立幼稚園の廃止や学校給食の民間委託、公共施設を自治会に無償で払い下げるなどして経費削減を進める。市財政課は「予算編成が厳しくなるのは間違いない。ただ、現時点で大規模なサービス見直しは検討していない」と話す。

 総務省は14年度から、合併自治体に当初想定していなかった財政支出がかさんでいるとして、旧市町村部の支所や消防署・出張所、保健センターなどの経費を交付税に反映している。

 九州大大学院の田中孝男教授(行政法)は「合併自治体は財政運営を含む新市建設計画をつくっている。その通りか、財政見通しが甘かったのかなど徹底した検証をすべきだ。自分たちの町を維持していくには何が必要で何を削減するかなど、住民も交えた議論が必要だろう」と指摘した。 (郷達也、泉修平)

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 合併算定替え 合併後10年間は合併前の市町村ごとに算定した交付税の総額が配分される優遇策。合併の11年後から段階的に減額され、16年後には一つの自治体として算定された額となる。国が合併を促すための優遇策はほかに公共施設整備や旧地域間の格差是正を図る事業費の95%に充当でき、国が返済額の70%を負担する合併特例債がある。

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