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離婚と親権 子本位で制度見直しを(2019年12月12日配信『茨城新聞』ー「論説」)

離婚後も父母が共に子どもの親権を持つ「共同親権」の導入を求める声が広がり、法務省は民法学者や弁護士、最高裁と関係省庁の担当者らから成る「家族法研究会」を発足させ、議論を進めている。面会交流を促進したり、養育費の支払いを確実にしたりする方策も検討する。法改正が必要と法相が判断すれば、法制審議会に諮問する。

親権は親が子どもを監護・教育し、しつけのために戒める、住む場所を指定する、財産を管理する-などの義務と権利で、民法に規定が置かれている。欧米を中心に離婚後の共同親権を認めている国は多いが、日本では離婚したら、どちらか一方を親権者とする「単独親権」となっている。単独親権は進学など子育ての意思決定がしやすいといわれるが、離婚に際し面会交流の取り決めをしても親権者がほごにし、親権を失った親が子どもの養育に関われなくなることもある。一方で共同親権では、離婚の背景に児童虐待やドメスティックバイオレンス(DV)がある場合、子どもに望ましくない影響が及ぶとの懸念が根強い。

年間20万組以上が離婚し、子どもの奪い合いは絶えない。単独か共同か。どちらかを選べるようにするか。いずれにしても課題は多いが、研究会には、親の事情で争いに巻き込まれた子ども本位で制度見直しに取り組むことが求められよう。

40〜60代の男女12人が先月下旬、単独親権制度は法の下の平等や幸福追求権を保障する憲法に反し、子育ての権利を侵害されたとして国に損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。離婚により親権を失った人のほか、別居や事実婚の破綻で子育てに関われなくなった人もいる。国には共同親権制度の立法を怠った責任があると主張している。離婚協議などで面会交流の日数や時間が決められるが、原告のうち最も頻度の高い人で「月2回程度、2時間」。子どもが幼いころ会えなくなり、成人後の行方すら分からないケースもある。

司法統計によると、離婚や別居をした父母が子どもの監護を巡って対立し、家庭裁判所に申し立てられた調停・審判は2018年に4万4千件余りに達し、09年と比べて約1万1千件増えた。平均審理期間は6・8カ月と長引く傾向にある。専門家は共働き世帯の増加や少子化などを背景に親子の結びつきが強まっているためとみている。また厚生労働省の16年度全国ひとり親世帯等調査では、養育費について離婚した父親から「現在も受けている」は24・3%、母親からは3・2%。面会交流については「現在も行っている」が母子世帯で29・8%、父子世帯で45・5%だった。

いずれも低調で、離婚時に子どもの養育計画策定を父母に義務付ける案もあるが、DVの被害者が加害者から離れるのを難しくする恐れも指摘される。共同親権でも、全てが解決するわけではない。DVや虐待、父母の対立が持ち越され、離婚後の子育てが不安定になることも考えられる。

韓国では、離婚協議で単独親権か共同親権かを選択。養育費負担や面会交流の方法などの協議書を提出して初めて国から離婚を認められるが、父母の対立激化がネックになるという。それぞれの制度の問題点の相談・支援体制の拡充で、どこまで対応できるかが今後の議論の焦点となろう。




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