第12話
「全ては俺の駒に過ぎない」
八本指が王国より撤退し利益を得たのが、三流貴族フィリップというものだった。
彼はこの所、神に運を強化させたのかという程に全てが上手くいっていた。
自分の兄貴が突然殺させた事に始まり、偶然にも八本指が所有していた格上の貴族の不正の証拠を入手出来たのも神のおかげともいえる。
貴族が行った不正の数々で貴族から金を巻き上げて、自分の領地を増やしていった。
そんな激動の時を進んでいるフィリップに八本指の残党が支配下に入れてくれと懇願してきた。
一部の六大貴族が行っていた不正の証拠を持って。
それからは早かった。
八本指の残党を再編集して新しく犯罪組織を作り出し、貴族から権力を奪っていった。
その結果、失脚した六大貴族の一人として構える迄になっていた。
そんな彼のバックにはヤルダバオトと名乗る商人がいた事は決して知られてはいない。
「あはははは。流石ヤルダバオトだな、どこにも穴が無い完璧な計画じゃないか」
椅子の上で機嫌よく踏ん反り返るフィリップの横に構えているの、世間的には知られていない商人のヤルダバオトだった。
「そんな事はありませんよ。フィリップ様の助言あって計画でございますから」
「そうだろ、そうだろ。やっぱり俺は天才だからなぁ。今度はラナー何て欲しいのだが何か計画はあるか」
フィリップに問いかけられた男は考えていた。どの様に答えるのかを。
「フィリップ様といえども、今のタイミングでは不味いと愚考します」
「今のタイミングか」
「そうでございます。現状では不利益しか生みませんので我慢をしていただけると宜しいと思われます」
「そうだなぁ。優秀な貴族とは時には我慢も必要だからな」
「まさにその通りでございます。しかしラナーは恐らく無理ですね。」
「やはり王族は無理か」
「しかし、蒼の薔薇ならば状況次第ではございますが手に入れらる可能性がございます」
ヤルダバオトの冗談にフィリップは上機嫌に浮かれ狂っていた。
「幾らお前でも無理ではないか」
「いえいえ、あくまでも状況次第ですので期待はしてはいけませんよ」
「そうだなぁ。だがな男の精力とは無くならないものなのだ。」
「そうでございますか」
「俺の願いを叶えられないお前なんて要らないんだよ」
フィリップの影から多数の悪魔が現れた。ヤルダバオトがフィリップに与えたアイテムから作り出されたものだった。
「行け、悪魔達よ。ヤルダバオトを殺せ」
「畏まりました。我が主よ」
悪魔達はヤルダバオトを炎で包み込んだ。
「ぐぁぁぁぁ」
炎の中から聞こえるヤルダバオトの悲鳴に満足したフィリップは悪魔達に命令をした。
「ヤルダバオトの死体を片付けておけ」
「畏まりました」
悪魔の手によって消えてしまった死体にフィリップは呟いた。
「哀れなものだ。私に口答えをしなければいいもの。だがなお前のおかげでここまで強くなれたのかもしれない。だから安心して消えてくれ」
フィリップがヤルダバオトを殺したのは、先程言葉にムカついたからでは無い。
そろそろ、ヤルダバオトに手伝ってくれた多額の御礼金を支払う期限が近づいていたのだったのだ。
金はあるのだか商人に払いたくなかった為に殺してしまったのだ。
そんなフィリップを影から見守るカエル顔の悪魔の視線など気づかずに、奴隷になりうる女な資料を眺めて、自慢の精力を高めていた。
〇〇〇〇
アウラとモモンガがデートを続ける中、デミウルゴスの使者が邪魔をしない様に近づいて来た。
「モモンガ様。冒険の途中に失礼いたします」
「何だ。」
「デミウルゴス様から種を仕掛けたとの事で報告をいたしに来ました」
何の種を仕掛けたの全く見当が付かないモモンガは、とりあいず返事をしてその場を終えようとしていた。
「ご苦労であった。帰るがよい」
モモンガに声をかけられた悪魔は闇へと消えていった。
「アウラ、今日は一緒に寝てみるか」
モモンガの問いにアウラは恥ずかって謙遜して断ろうと思ったのだか、モモンガのごり押しで実現して、幸福な時間を過ごしたアウラは幸せ夢の中に意識が消えてゆく。
そんな行動を見ていた女ゴリラが発狂していたのかは神のみぞ知る。