リエスティーゼ王国
ガゼフは先日起きた事件については王に報告すべく城を素早く歩いていた。
目的地に着いたガゼフは王に会うべく扉を開ける。そこにはいつも通りの王が鎮座していたが、ついでにレエブン候が横に立っていた。
「これはガゼフ殿待っていましたよ」
「レエブン候何故こちらにいらっしゃるのですか」
レエブン候は肩を竦めながらため息を吐く動作をしてガゼフに話しかけた。
「私がどこにいてもいいでしょう。それよりも貴方が出会った人物についてでも話してみてはどうですかね」
「何故貴方がその事を」
「簡単な事ですよ。貴方の顔にそう書いてあるからですよガゼフ殿」
そんな事もあるのかと自分の顔を見ようとしている時に王から止めの言葉が入った。
「レエブン候からかうのはやめてあげなさい」
「そうですね。ガゼフ殿も変な行動を慎んだ方が良いでしょうね」
帝国に情報収集をする事を釘を刺されたのかと、思ったガゼフは軽く動揺してしまうが二人からは軽く流されてしまう。
「ガゼフよ。外行くのは別に良いのだが、決して死ぬのでは無いぞ」
「はい」
全てを見抜いていた王の寛容さに感動していた男は、時間を無駄にしてはいけないと早々に帝国に向かうのであった。
〇〇〇〇
帝国税関にて
「皇帝陛下にガゼフが来たと伝えて欲しい」
ガゼフは王国と違って立派だと思いつつ、そんな事は不敬だとも思うジレンマに悩んでいた時間に帝国騎士が話しかけてきた。
「ガゼフ殿。通行の許可がおりました。つきましては案内人が来るまで待機をお願い致します」
「ああ、わかった。それでどの位待つのだ」
騎士は軽く悩んだ後に結論を出した。
「およそ3時間程だと思いますが、過ぎる可能性は大いにあると思いますが」
「わかった。ではここで待たせてもらおう」
ガゼフは税関で疲れた体を休めるために、軽く寝る事にしたとさ。
ジルクニフは考えていた。
何故このタイミングでガゼフがこの帝都に訪れたのか。現在持ってい情報のピースを組み立てたジルクニフは一つの答えにたどり着いた。
「何か強大な力を持つ存在が現れたのか」
そんな事を考えているとガゼフが扉から入ってきた。
「ジルクニフ殿。この度は相談の機会を恵んで下さりありがとうございました」
「いいや、気にする事はないぞ。ここに来たという事は何かしら対処の出来ない事が起きたのだろう」
自分の考えていた事がズバリ当てられたガゼフは、単刀直入に本題に入って行く。
「先日、死の騎士を複数支配する。魔法詠唱者が現れたのだ」
死の騎士という単語が記憶の片隅にあったジルクニフを他所に、フールーダの高弟子が青ざめた顔でガゼフに突っかかっていく。
「い、幾らガゼフ殿でも嘘を言ってはいけません。死の騎士は師すら支配出来ない伝説のアンデットだぞ」
「落ち着くのだ。まずはフールーダを呼んでこい」
高弟子はフールーダを呼ぶ為に礼儀を無視して、部屋を飛び出して目的地に向かって【飛行】の魔法を使用して、全速力で飛んで行ってしまった。
取り残されたガゼフはジルクニフに話しかけていた。
「死の騎士とは、そんなに驚く事なのか」
問われたジルクニフも知識として少ししか知らないため即答は出来ない。
「私にもよくは分からないが、一体で国を滅せると聞いている」
「それ程強いのか、でも倒せたぞ」
「死の騎士を倒したのか。実はそんなに強くないのか」
ジルクニフの考えに対して、今しがた到着したフールーダが補足を始める。
「違いますぞ、ジル。死の騎士の真の強みは殺した相手を自身の下僕にしてしまう事なのだ」
「やっときたのか、では単体では倒せなくもないのか」
フールーダはガゼフを観察しながらジルクニフの発言について、考えていた。
「ガゼフ殿なら一対一に持ち込めば倒せなくもないでしょう」
なるほどと、頷くガゼフに対してフールーダは自らの疑問を投げかけた。
「問題はそこではないのだよ。死の騎士を支配したという魔法詠唱者について教えていただきたいですね。」
フールーダに言われてここに来た目的を思い出した男は、モモンガと名乗る魔法詠唱者について知っている事を話した。
ガゼフとの相談を終えた二人は今日得た情報で、帝国の未来について会議をしていた。
「モモンガと名乗る魔法詠唱者には、絶対に手を出してはいけませんね」
「その通りだな。また法国との繋がりもありそうだしな。ただ味方につけられれば、この先の苦労もだいぶ減ると思うのだがどう思う」
フールーダは以前、法国より聞いた神について考えていた。
「私は法国の神様だと考えています」
「何故だ」
「そろそろ降臨する可能性があると情報が入っておりました。またアンデットの見た目なのに、人を憎んでいない事を考えると間違いないかと」
「そうか。ではカルネ村に行くとするか」
「その方がよろしいかと」
相談を終えた二人は、王国領にあるカルネ村に行く計画を立てていた。また手土産の食材などを買い集めて村人の好感度を上げる作戦も同時進行で進めていく。