第五話「バレて友達できて何かあって」
どうにかして東方キャラを出したかった後悔はしていない←
と、いうことで皆様お待たせしました。
白狼物語第五話「バレて友達出来て何かあって」をどうぞ!
※2014/03/30 改訂
--人はときとして壁にぶつかる。しかし、その壁をどうにかして先に進んでこそ、人である--
誰が言ったのかはわからないがこの名言は人生というものをさしていて、その上、どことなく励まされる言葉であると私は思う。でも……
「木葉…………貴女って転生者なのかしら?」
これはいくら何でも壁が高くて分厚くないですかね。
思わず心の中で悪態をついてしまう。
もし私が今世も人ならば、確実に冷や汗をかきまくっていただろう。
いや~ほんと今が狼の姿でよかった~あははははは……はぁ……。
ここぐらいで現実逃避をやめて真面目にこの状況をどうにかしよう。
酔いが完璧に覚めた私は紅葉さんを見る。
彼女は私を真剣な眼つきで私の回答を待っている。
もしかしたらバレていないという希望的な考えが私の頭の中に浮かんできたがそれは違うだろうと思っていた。
例えそうでもこの状況を何もなかったという状況で済ますことはできない。
本当にどうしたらいいだろうか……やはりとりあえず否定しておこう。
私は暫定的にそう決め紅葉さんに問いに答えることにした。
――……いいえ違います
「――そう……ならここからは私の独り言ね。私がこの結論に達した理由は三つよ」
私は黙って彼女の理由を聞くことにした。
彼女は持っている大き目の杯のお酒を一口飲んだ後、そして夜空に浮かぶ満月を見ながら流れるようにしゃべり始めた。
「まず一つ目。あなたのその知識と思考力よ。生まれて一年もたたない狼――いや普通の狼としてもあり得ないくらいの知識をあなたは持っているわ。そして、その年で一発で私が大妖怪の『九尾狐』と気づいたことや、お稲荷や神というものをある程度理解しているのはなかなかの思考力だわ。本当になぜ貴女はこんなにも多くの知識と思考力があるかしらね?」
おどけるように彼女は喋り、また、彼女は杯のお酒を一口飲む。そして続ける。
「二つ目。会ってからさっきまで話したことに私すら聞いたこともない単語が多く混ざっていたことよ。『pixiv』『ショートボブ』『八雲藍』――こんな言葉は聞いたことがないわ。ここからあなたが別の場所から来たのではと考えたわ」
また、一口飲む。杯に継がれたお酒はだいぶ減ってきている。
「三つ目、まぁこれが一番大きいけどね……それは貴女が持っている『記憶』よ。貴女の中にあった記憶は今まで見たことのないものだったわ。色とりどりの服装をした多くの人が往来する石の谷。谷をひとりでに動き出す鉄の箱や鉄の馬。人々が手に持って話す小さな箱。動く絵が映し出される薄い箱。そしてそこに映し出される『私の妹』……これらから考えていることは一つだけだわ」
紅葉さんは杯に残っていたお酒を飲み干し、再び私の方をむいた。
「もう一度言うわ、木葉…………貴女って転生者なのかしら? 答えて」
世の中にはあまりに危機的状況になると逆に落ち着く人もいるということを聞いたことがあったが、私はどうやら私はそれになるらしい。
私の頭は落ち着いてきている。そしてその落ち着いた頭で改めて状況を打開するために考える。
でも、そう見ても言い逃れはできそうにないよね……。
紅葉さんに言う理由はどう考えても私が口を滑らして言ってしまったのが原因だし、やっぱり話すしかないよね。
でもそれなら、私が無事に生きていけるように周りにへの口止めやフォローなどの協力を得ないといけないけないなー。
よし、そういう方向でいこう。
私は先ほどまでの考えを改め、出来るだけ協力してもらえれる状況に持って行くために彼女に話すことを決めた。そして一呼吸入れた後、覚悟を決め言った。
――……紅葉さんが考えている通りです
「ふふ、やっぱりね。話してもらえるかしら? 貴女のことを」
――でも! 先に約束してください!!
――このことを簡単に口外しないでください。そして私が無事に生きていけるように協力してもらえますか?
私は紅葉さんの顔を見ながらそういった。
紅葉さんは少し考える。
協力してもらえるだろうか。
「いいわよ。その方が私にとっても都合がいいし」
紅葉さんはまたどこからか出した徳利みたいなもからお酒を杯に注いで飲む。
私はその言葉に嬉しくなった。そして、そのまま続けて、
――ならこれからは私たちは友人ですね!
紅葉さんが盛大にむせた。そして袖を口に当て咳き込んでいる。
結構な範囲にお酒が散らばったのでなかなかの勢いだとわかる。
「あ、貴女は突然何を言うかしら? 驚いちゃったじゃない」
紅葉さんがジト目でこちらを睨む。
私的には悪いことを言った覚えはないのでスルーする。
しかし、その顔をいい、先のむせている状態もそうなのだが美人は大体どの場面でもきれいに見えてしまう良い例を見てしまった気がする。
私は秘密を共有するのは友人以上と思うのでそういったまでなのだが……。
「……わかったわ。ならそうさしてもらうわよ(はぁ、なんでこんな性悪狐にそんなことを言えるかしらね……)」
彼女は言いながら頭を掻く、後半の方は聞こえなかったが……。
それでも、私は単純に嬉しい。
実際さっきから尻尾がぶんぶんふり振してしまっている。
「その代り! その畏まった敬語と紅葉さんは禁止。友人に敬語を使われるのは癪に障るわ」
――わかったわ。紅葉! よろしくね!
「ええ、よろしくね木葉………………さぁ改めて貴女のことを教えて頂戴」
そこから私は紅葉にできる限り説明した。もちろん前世の私のことについて知識は消え去ってることも先に伝えた。
紅葉は終始私の話を真剣に聞いていた。そして、質問し答えていった。紅葉が特に興味を持ったのは現代のことだったが今回は割愛する。
私と紅葉の話は私が眠気で寝てしまうまで続いた。
彼女から聞いたことは本当に驚くことばかりであった。
今から、千年以上先の時代――彼女は『平成』といったが、人は科学を発展させて
普通の神や妖怪が聞いたら嘘だと言い張り信じないか信じても悲しむだろうが、私は信じれたし、正直嬉しかった。
たった千年後にはそのような世界が来る。
人がそこまで上り詰めるのだ。
すでに長い時を生きた私にとって千年はさほど多く感じない私にとって本当にその話は千年後が楽しみになり、これからの千年を楽しめる原動力になる。
私はまだ杯に残っていた酒を飲む。
時間はたぶん丑三つぐらいかしら、隣で丸まって寝ている白い狼をみる。
私みたいな性悪妖狐を何にも疑うこともなく信用し、さらには友人になりたいといってきたこの子はそんな時代から来たのだ。こんな性格になっても不思議ではないだろうと私は自分の中でまとめる。
私はふと懐から杯をもう一つだして、何もない本殿の前の広場を見る。
「いつもまでそこで見ているのかしら? 八雲紫さん?」
「あら、ばれていましたか」
突如、紐で両端が結ばれた線が空中に浮かび、後ろの景色を歪ませながら開いた。開いた空間は黒く生気のない大量の目玉がこちらを見ている。これが木葉が言う『スキマ』らしい。
そして、そのおかしな空間の中から一人の女性が出てくる。
年は十七、八ぐらい。背は高め。私と同じ色の長め金髪。そして『ZUN帽』といわれる不思議な被り物。
以前から、噂に聞いていたことや、先ほど手に入った木葉が教えてくれた知識などを照らし合わしながらこの女性が『八雲紫』だと改めて判断する。
「初めまして金色の九尾さん。私は八雲紫ですわ」
「こちらこそ初めまして八雲紫さん。貴女の噂はかねてより聞いているわ。私はこの稲守神社の祭神をしている九尾の紅葉よ。よろしくね」
「ええ、よろしく」
その言葉のあと少しの間無言ままにらみ合った。
両方、相手の出方を待っていた。
先に動いたのは私だった。
「とりあえず。一杯どうかしら?」
「−−もらいますわ」
紫は私から杯をもらい横で寝ている木葉とは逆側の方に座った。
そこから私たちは酒を飲み、世間話を少しした。
私の中で彼女が来た理由を予想する。
そして、紫の杯に二杯目をついだときに私は仕掛けた。
「それで天下の大妖怪様がこんなしがない妖怪になにかようかしら?」
「それはいまからお話ししますわ……その前にいくつかよろしくて?」
私は能力を使って彼女の心の声を引き出してみることにしたが、出来なかった。
成程、これが『境界を操る程度の能力』ね……厄介だわ
木葉の知識では『八雲紫』は幻想郷を作り管理している妖怪で『境界を操る程度の能力』という厄介な能力を持つ。この能力で私の能力が効かないように自らをいじっているらしい。
流石は都で噂になるくらいの大妖怪だわ。
おとなしく彼女の話に答えることにしよう。
「いいわよ」
「私のことはどの位お知りで?」
「貴女が妖怪であること、不思議な能力を使うこと、都でも噂になる位の大妖怪であること、そして、ある(・・)特別な目的を持っていることぐらいかしら」
勘付かれない様に本当に噂で聞いたことしか言わなかった。
「そう……そちらの白い狼は?」
「この子? この子の名前は木葉。昨日朝に私の神社に迷い込んできた狼で……私の大切な友人よ」
「……わかりましたわ」
紫は少し驚いた後、懐かしそうに木葉を見ている。
彼女の表情や動作は胡散臭さがあったが、その表情はまるで大切な人にあったかのようであった。
こういう表情もするのね。
「単刀直入で言わせてもらいますわ」
「ええ。いいわよ」
「私の夢のために、私の式になってくださる?」
彼女はそういってきた。
まぁ予想は大体しているけど……あ、そうだもしかしたらあの言葉を言えるかもしれないわね。
木葉の知識の中でちょっとツボにはまった言葉を思い出し、言ってみることにした。
「だが断る」
「へ?」
紫が気の抜けたような声を出す。その表情は当然驚いた表情だ。
ふふふ、やっぱり人の意表を突いたら面白いものがみえるわ。
私は畳み掛ける。
「断るといったの。でも貴女や貴女の夢を否定はしたりはしないわ」
だって貴女が目指すものは私と同じようだもの。
私は紫が少しづつ妖力を出してきているが怯まない。
「じゃあどうしてかしら?」
「簡単よ」
「『誰からも縛らぜずに生きたい。自由気ままに生きたい』そんな妖怪なら誰しも持っているそんな理由よ」
「…………」
「ふふふ、そんなに妖力を出しても無駄よ。私はあなた以上の力の持ち主にたくさん会ったこともあるからね」
紫は私が怯んでないのを見て、観念したのか妖力を出すのをやめた。
確かに彼女には妖怪たちを従えるぐらいの力と
でも、私にもやりたいことがある。だから断った。
「いいことを教えてあげるわ」
「――何かしら?」
「今はどこにいるかはわからないけど、私には妹がいるの。妹は人が好きな私のことを嫌っているわ。でもそのくせ人一倍愛を欲しているの……だからもしかしたら」
「もしかしたら、私の式になるかも知れない。ということかしら?」
「ええ」
「…………」
別に妹を売ったわけじゃない。
彼女が本当に人一倍、人を愛し、人から愛されたいと思っている。
紫もそう。そんな感じに見える。
木葉の知識に出てきた八雲紫の式『八雲藍』は間違いなく私の妹で間違いないだろう。
これは私なりの彼女たちへの贈り物。
きっと遠い未来でわかると思うわ。
「さて、重い話はここまで。今日は月が綺麗だから。もう少しだけ付き合ってもらうわよ」
「…………わかりましたわ」
私と紫はお酒がほとんどなくなるまで談笑した。
「そろそろお暇させてもらいますわ」
「あら、もう帰るの?」
紫はそう言って立ち上がった。
私がそう声をかける。
彼女は縦に振る。
「ええ、でもまた来ると思いますわ」
「何度来ようと私は貴女の式にはならないわよ?」
「それでも私は諦めるつもりは有りませんので」
紫はそう言ってどこからか取り出した扇子で口元を隠す。
本当、この妖は……。
紫の言葉に私は半分呆れながらも、例え何と言われようとも自らの夢に向かい努力し続けている彼女の姿勢−−そうまるで人のような姿勢を見てふた応援したくなってしまった。
しかし、私にもやるべきことがある。
だから一言だけ言おう。
紫はスキマを開き、その中にはいる。
私は先程と変わらずそれを見ている。
不思議な能力だ。そう思いながらも一言だけ言った。
「次来たときは酒と肴ぐらいは用意してあげるわ」
「……ありがとう御座います。ではそろそろ行きますわね」
「ええ」
紫は少し驚いた表情をしたが、すぐに少し嬉しそうな表情をした。
スキマが閉じようとする。
その時であった。
「それでは、また会いましょう。
紫は手を振る私に向かってそう言った。
私はその言葉に驚くがスキマは既に閉じられ紫は帰ってしまっていた。
まさか一発で私の本当の姿に気付くとわねぇ……変化には自信があるけど、少し慢心しちゃてたわね。
スキマがあったところを見るが、空間の歪みは感じられない……本当に帰ったのだろう。
ふと隣でずっと寝ていた木葉を見る。
紫は言っては無かったが彼女は木葉もきっと狙うだろう。
なんとなくわかる。
それにしても木葉は幸せそうに寝ている。
いったいどのような夢を見ているのかしら。
私はふと気になり彼女の見ているだろう夢を『引き出した』。
−−うへへ……。お肉美味しいし……♪
私は思わずずっこけてしまいそうになった。
私が必死に紫と話しているときに木葉は大きな肉にかじり付いている夢を見ていたのだ。
なんだろう、今ので凄く疲れた。
私は物凄い脱力に襲われた。
もうあれだ、寝よう。
そう思い私は酒をしまった後、木葉を抱き上げ寝床に向かった。
寝床に入り寝ようとする。
その時、木葉の寝言が微かにでもしっかり聞こえた。
「ありがとう……紅葉」
「………どう致しまして。木葉」
私はそう言ったのち、すぐに夢の中に落ちて行ったのであった。
当初は一話3000文字程度の予定だったのに、話を進めるためにだらだら書いてたらいつの間にか5000文字を超えてました(笑)
これからも増えるかもしれないのでその時はよろしくお願いします。
そろそろ、この辺でお別れということにします。
さて、なんかいろいろと状況が変わってきた第五話!
そして次回は木葉はどのような出会いをするのか! こうご期待!!
※感想、アドバイス待ってます!