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東方白銀狼 (旧白狼物語) 作者:水城野

一章 「白銀誕生之章」

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第四話「逃げて飼い犬になってお酒飲んで」

投稿が遅れた上に少し長めになってます。ご了承ください。


そして、一昨日に高千穂に行って参りました。とても楽しかったです。



※2014/03/30 改訂

身体が不意に揺れ、とてもいい香りがした。



――……なんだろう



私は薄く目を開ける。

そこは板張りの床があり、その上はと御座が敷いてあった。

現在の夕刻なのだろうか部屋には淡い色をした西日が入ってきている。



――ヒノキのいい匂り……ってあれ? 私って死んだはずじゃ??



その瞬間、まどろんでいた意識が覚醒し私は飛び起きた――がうまく動けなかった。

首を回して周りを見てみると、十代半ば、又はそれより前ぐらいの少年が私を大切そうに抱いて寝ていた。顔はまだ幼さが残った顔は楽しそうな夢でも見ているのか気持ちがよさそうである。

私はもう一度彼の腕から脱出してみようと試みたが出れなかった。

この少年、正座の体制のまま私を抱いて寝ていたのである。



――どうしよう…………! そうだ!!



名案が思い付いた私は身体を揺らす。

少年の体が傾くが倒れない。生物の本能が働き少年は元の体制に戻ろうとする。




――今だ!!



私はありったっけの力を出して少年が戻ろうとする方向に体重を掛けた。

元の体制に戻ろうとする力も合わさり少年の体は勢い良く床に倒れた。



「っ!? ……つっ~~~~!!?」



物凄い音とともに少年は痛みで目を覚ます。

更に運悪く肘のツボのところを直撃したみたいで彼の拘束が緩む。

私は少年の腕の中から脱出した。そして逃げようとする。気絶をする前にも思ったことだが私は今「狼」である。何をされるかわからないからだ。



「あ、まっ待て!」



彼は逃げ出した私を追おうとするがどうやら正座していたからしびれてうまく動けない。

私は一目散に視界に入った出口に向かう。

出口はもうすぐである。



――あばよ~とっつぁ~ん



どこぞの怪盗の捨て台詞を心の中で言いながら私は出口から出た。

よし、屋外に出れば大丈夫なh



「なに逃げようとしているのかしら?」



いきなり首根っこを掴まれ持ち上げられた。

私は驚きながらも自分を捕まえた人の顔を見る。

それは前世まで含めてもないくらいの絶世の美女であった容姿はもちろんのこと背も高く、体つきも豊かであった。私を掴んでいる手も指はすっらとして手の甲には血管の影すら見えない。そして、髪と目は金色であり長い金髪を後ろで結っている。そして何より目を引くのはその頭から出ている狐耳とその髪と同じ色をした凄く触り心地がよさそうな九本の尻尾であった。



――え?『九本の尻尾・・・・』!? ってことは……八雲藍?



その瞬間私の中に東方Projectに出てくる『八雲藍』についての情報が浮かんできて目の前の女性と照らし合わせて私はそれの可能性を否定した。



――確かに顔立ちとかは『pixiv』で見た藍しゃまに似てるけどは髪型は金髪のショートボブだったはず……



木葉はもう一度よくその女性をみる。

八雲藍は古代の道教の導師のような服装だがこの女性は日本神話で出てくる神々が来ているような服を着ている。



――やっぱり違う。藍しゃまはこんな日本っぽい服装じゃなかった気がする……



「さっきから褒めてもらうのは嬉しいけど、その『八雲藍』って誰かしら?」



その言葉に私はビクッと身体を揺らし彼女を凝視する。

彼女はそんな私を不思議そうな表情で見る。



――この人(?)私の思考を読みやがったのです!



「口調がおかしくなってるのは置いといて、私の質問に質問に答えてくれるかしら? 白い狼さん」



そういってその女性は目を細めながら薄く笑う。

ただその笑顔は私を恐怖に陥れるには十分であった。




――……笑顔ってこんなに怖かったけ……え、え~とあれです。昔、あなたのような九尾の狐を見たことがあってそれを思い出しただけです。




……一応嘘は言ってない。

彼女は先ほどの笑顔のままを私数秒見た後、



「ふ~ん……そう。なら他の質問はしようかしら。初めまして木葉ちゃん。私はここ『稲守神社』で祭神をしている紅葉よ。種族は妖狐。あなたが言う『九尾の狐』で考えてもらって構わないわ。あと神でいうと『お稲荷さん』が一番あうかしら?」



そういってまた笑う。先ほどとは違い今度は純粋な笑顔であった。

私は一瞬見とれていたがすぐに自己紹介をする。



――は、初めまして紅葉さん。私の名前は木葉で……ってあれ? 私の名前を知っているんですか?



「あ、それは私の能力ね『引き出す程度の能力』ね。寝ているときにその能力であなたの情報を少し見せてもらったわ。そして今あなたがしゃべらないってないのに私に通じるのは私が心の中でしゃべった心の声を能力で『引き出してる』からなの。わかったかしら?」



-- またチート能力ですか、そうですか



私が心の中で何気なくそう思っていると、先ほどの少年がやってきた。

腕や足のしびれや痛みはとれたみたいだ。



「も、紅葉様すいません。引き止めてくれてたんですね」

「マコト……またあなた正座のまま寝てたでしょう」

「あはははははは……スイマセン」



紅葉のその言葉にマコトと言われたその少年は頭を軽く書きながら自嘲気味に笑う。




「まったく、これに懲りて次からは昼寝でも横になって寝なさい。あ、そうそう木葉。この子があなたを見つけた『マコト』よ」

「紅葉様? 突然どうしたんですか? それに木葉って??」

「この白い狼の名前よ。自分で名乗ったもの」

「そうなんですか」

「ええ、そうよ」



そう言って二人は笑い合った。一方で地面に下ろしてもらった私は蚊帳の外であった。

しかし私はその少年――マコトにお礼を伝えようとするためにこの中で唯一言葉が伝わる紅葉さんに話しかけた。



――も、紅葉さん。紅葉さん。お願いを聞いていただけますか?



「あら、別に敬語じゃなくていいわよ。その代り私もあなたのこと木葉と呼ぶけどね」



――わかりました。でも、拾ってくれた人たちですし一応『さん』づけのままにしておきます……それで紅葉さん、マコトさんにお礼を伝えてもらいんですけど……



「お安い御用よ。マコト」

「はい。なんでしょうか?」

「木葉があなたに『助けてくれてありがとう』っているわ」

「え、はい。どういたしまして」



マコトはそういって私のほうを不思議そうな顔で見る。



「どうしたの?」

「いえ、さっきから言おうと思って忘れていたことを思い出しまして……」

「へぇ何かしら」



紅葉さんが首をかしげながらマコトにいう。

彼は少し間を開けた後、



「紅葉様の話だとこの子――木葉さんって何日も食べてないんですよね。おなかがすいているんじゃないんですか?」

「あ」



私も紅葉さんもその言葉で私がここ数日ほぼ何も食べていないことを思い出した。

そして私の腹の虫も思い出したかのように気の抜けた音を鳴らした。



「ふふ、なら少し早いけど晩御飯にしようかしら」

「わかりました。用意してきます」



そういってマコトはその場から離れていく、私と紅葉さんは部屋の中に戻った。

その後、私たち三人は部屋の中で食事を済ませた。

昔読んだ神様が出る漫画に『空腹は最高の調味料ですよ』と言っていたが、その通りであった。文字道理私は出されたご飯をおなか一杯食べ、改めて食のありがたみに気づかされるのであった。








日はとっくにおち、部屋には灯りがともっている。少し薄暗いが狼の集落に住んでいるときに比べれば十分な明るさである。

現在、私と紅葉さんは談笑している。マコトは何か考え事をしていた。

そして少し躊躇した後、私を見ながら



「あの……紅葉様、それに木葉さん……お願いを一つ聞いてもらえますか?」

「あら、突然かしこまって何かしら。マコト」



――なんだろう、ごはんかな?



「そんなわけないでしょうが……」



私の心の声に対して紅葉さんがつっこむ。

マコトは私も紅葉さんの顔をそれぞれ見ながら、



「木葉さんをここにおいてもよろしいでしょうか?」

「何故かしら?」



私の心を紅葉さんが代わりに言う。

マコトは続けて



「木葉さんは群から追い出されてきたと先程聞きました。…しかし、木葉さんはまだ小さい…せめて大人になるまででいいのでここでいた方がよろしいかと思いまして……お二方が駄目とおっしゃるのなら諦めますが……」



マコトはそう私たちに相談してきた。

紅葉さんは私の方をみている。私の答えを待っているらしい。


−−私は居さして貰えるならそれで良いけれど(ご飯美味しいし)……



「けど?」



−−けど……でも狼って悪者に入るんじゃ……




そう私の知っている御伽噺や絵本などの知識から言ったら狼は「悪者」に分けられるはず……



「貴女はなに可笑しいことを言ってるのかしら」



−−へ? 何が??



私がそう返すと紅葉さんは呆れ顔になった。私、なにか変なこと言ったかな?



「その感じだと知らないみたいだから言っておくけれど……日の本では狼は信仰の対象よ」



−−…………へ?



「ここ日の本では狼−−まぁ彼らが言う『山犬』は田畑を食い荒らす鹿や猪を狩ることから農耕の守り神として信仰されているの」



−−マジですか?



「マジよ。更に言うなら私たち狐に信仰が集まったのは私たち狐が作物が出来る場所によく集まっていたからなの。信仰が集まってからは霊力を持つ子も増えたし……」



紅葉さんはそう言ってマコトをみる。

マコトも頷いているから本当なのだろう。



「なら問題も解決したし、ここに住むってことでいいかしら?」



−−わかりました。宜しく御願いします



そう思いながら私は二人を見る。紅葉さんはそれをマコトに伝え、彼はとても喜ん






「そういうことだからマコト。もう遅いから寝なさい」

「わかりました。それではお二人ともおやすみなさい」



−−おやすみー



マコトは母屋の方にあるいていった。

私も寝ようかと思ったとき、紅葉さんがどこからかお酒を出してきた。彼女は月見酒をしようと言って縁側に私を連れ出した。


晴れた空には満月が登り地上を照らす。とても幻想的である。

彼女は自分の杯にお酒を注ぎ飲む。

彼女の金色の髪や耳や尻尾、服装からのその姿は本当に神々しさがあり、彼女が神であることを改めて実感した。

私の杯にもお酒が注がれたので私は飲み過ぎないようにお酒をなめた。

その後、談笑しながら二人で飲んで夜を過ごしていった。



二時間近く経って私が大分酔った頃、紅葉しゃんは真剣な顔つきでこちらを見てきた。

とても、きていでふ。



−−なんれしゅか? もみじしゃん



「いえ、ずっと気になることがあったから……というか貴女お酒弱いのね」



−−しゅいましぇん



「まあ良いわ、それより一つ質問して良いかしら?」



−−わかるはんいでなら、いいでしゅよ



「あらそう。なら単刀直入に言うわよ」



−−ふぁい



紅葉さんはそういって更に私を凝視してくる。

もみじしゃんのシツモンはなんだろう……オサケのしぇいでアタマがよくまわらないでふけど……というよりねむいでふ



「木葉…………貴女って転生者なのかしら?」



その言葉に酔いは一瞬で冷め、私の意識は覚醒したのであった。



ここで補足説明をします。

今回、出てきた「狼は農耕の守り神」という考えは実際江戸時代までありました。


牧畜が発達していた西洋では、牧畜を食い荒らす狼は「敵」として恐るべき存在として扱われました。


逆に農耕が発達していた日本では、作品中でも言いましたが、害獣を食べる狼は「農耕の守り神」的存在と扱われました。(なので狼が悪者の童話はよく見たら全部西洋のお話だったりします)



そして、西洋文化が入り込んだ日本では明治以降、狼は悪者扱いされ駆逐されていき、絶滅したと言われてきます。


此処までで補足説明を終わります!


アドバイス、ご感想待ってます(≧∇≦*)

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