第三話「彷徨って拾われて」
※2014/03/30 改訂
結果からいうと私は助かった。
崖から落とされたのだが崖の下を流れる川に叩き付けられる直前私は「身体強化」の「硬化」を使えたのだろう。(あまりにも一瞬だったのでどんなことをしたのかはよくわからなかったが)
しかし、そのおかげで私はザクロの実のようにはならなかった。
――でも無茶苦茶痛かったけどね
あれから二日ぐらいたっただろうか、現在、私は右胸や足にはしる痛みをこらえながら山中を歩いている。
しかし私は今は痛みよりも、もっと別のことを考えていた。
――おなかが減った。ガチでおなか減った
崖から落ちてすでに二日たったが水と落ちていた木の実ぐらいしか食べていない。空腹感がとんでもない所まできて、腹の虫はもう鳴く力もないのか鳴かない。一か八かで狩りをやってどうにかしようとしたが、自分体が白い(今は汚れて若干灰色だが)ことや狩りの経験がないのもあってまったくもって無駄であった。
――バカ父め、帰ったら覚えてろ…………ああ、前世ってとても幸せなところだったんだな……もう次から我慢あまりしないどこ、食べれるときに美味しいものは全力で食べることにしよ……
父への怨念がいつの間にか飢えることのなかった前世への羨望っと変わり最終的に変な決意に変化したいたが私はその変化に気づくほどが頭に栄養が現在回っていなない。
もうだめかもしれない。そう思った時だった。
私の掠れる視界に人工物的な何かが入る。
――人がいるかもしれない、場合によっては助けてもらえるかもしれない!
私は一心不乱でその場所を目指した。
そして、私はたどり着いたのは神社であった(厳密にいうとさっき見えた建物近くの茂みの中ではあるが)。
近づいて分かったのだがこの建物は神社の母屋か何かだったのかもしれない。
――人の気配は感じるし、とりあえず助けを求めよう
私は母屋の扉に近づこうとしたが、ある重要なことを思い出して立ち止まる。
自分の中なった唯一の希望が絶望に感じるのを私は感じた。
そのぐらいこの問題は私の人生を大きく左右することであった。
私が思い出したとても重要なことそれは……
――私今……狼だった。
前世が人間だった記憶と知識があることや、現在の姿になってまだ時間が経過していなかったこと、バカ父や家族とと何故か普通に話せていたことなどもあって忘れていたが、私は今(今世)では狼であり、人間であったのは昔(前世)であった。
更に他の動物……それこそ犬だったらよかったものの、今の私は「狼」である。
私の前世での知識といか絵本などのから一般常識から考えてみる「狼」のイメージは悪である。そんな人間にとって害獣である狼(更に白い)がいくら弱っているとはいえ目の前に現れたら……考えなくともわかる話である。実際、明治にニホンオオカミは絶滅した言われている。
そして、追い打ちをかけるように私がいるとこにだれか近づいてきている。足音的に多分二人であると思う。
――私の人生(狼生?)オワタ
そう思った瞬間、私の中で緊張の糸が解けたのか急に眠くなってきた。
足音が近づいてくる。逃げる力も気力もすでにない。ここに来るまでに使い果たしたのである。
――来世はもっと楽しければいいな、思い残すことは……あ、もっと美味しいもの食べたかったな……
足音が私がいる茂みの前まで来て、止まった。やはり見つかっていたらしいでもそんなことに構わず私は意識を手放そうとする。
そして手放す瞬間、私は暖かい光に包まれた。
――ああお迎えが来たんだ
そう思い、安心感に包まれた私は意識を手放した。
「ふぅ……このぐらいでいいかしら」
私は能力を使っていた手をその白い狼の子どもから離す。
ボロボロの状態でこの神社にやって来たその白い狼の子どもは今一緒にいる少年――マコトに抱かれている。
マコトは私が祭神を努めているこの『
「あの……紅葉様」
「この子は生まれてまだそんなに経っていないと思うから、村の人達からもらった鶏の肉か、山羊の乳を持って来てもらえるかしら?」
「は、はい。すぐに取ってきます」
そう言ってマコトは慌てて母屋の中に入って行っていった……こけたのか物凄い音がしたけど。
腕の中にいる白い狼の子どもを見る。子どもは寝息をたてている。よほど疲れたのだろう多少動いた程度では起きる気配もなかった。
――さて何でこの子はこんなにボロボロなのかしら、もしかしたら山で何かあったのかしらね? マコトも多分そこそこ時間がかかると想うし、村や神社に関係があることだったれいけないし……少し覗いてみようかしら
私は自分の能力――「引き出す程度の能力」を使ってこの子記憶を見てみることにした。
先ほどとは違い手をその子の頭に当てる。この手を通じてこの子の記憶を文字どおり『引き出す』。
私は意識を手に集中させて、その子の記憶を見る。
――……
――…………?
――……………………!?
私は思わずその子の頭から手を離した。
額からは大量の汗が流れていた。
すぐに近くにあった切り株に腰掛ける。そして汗ばんだ額を拭う。
呼吸は落ち着いてきたが心臓のリズムは今だ速いままであった。
――
私は今までの長いで蓄えてきた記憶や知識から、その子の中にあった記憶・知識と合致するモノを探してみる。しかしいくら時間を掛けようと見つかることはなかった。
――面白い。もう一度見てみようかしら
その芽生えたこの子対する興味は私の中にあった知識欲を刺激するには十二分であった。
私は今度は切り株に座ったままの状態でその子の記憶を見る。
――……!
――…………!!
――…………………………!!?
再び見たその映像はやはり今までの人生の中でも聞いたことも見たこともないモノであった。
白い細長い物体……多分『楼』? が沢山並び立つ谷。その谷の間を箱が行き交う。
見たことがないくらいの人が行き交う、まるで都のようである。そしてその行き交う人も今まで見たことがない色とどりの服を着て、何やら手に持った小さい箱に向かって話している。
場面は変わる。
一人の人がこれまた四角い箱を凝視している。その箱は絵を映し出す面妖なモノで次から次へと絵が変わっていく。そしてその変わる絵の中に私の妹が写り込んだ。
私は息をゆっくり吐きながらまたその子の頭から手を離した。
そして先ほどと同じように額にかいた汗を拭いながら、頭の中で先ほどの見た光景を整理しようとした。しかし、あまりの情報量になかなか整理が追いつかなかった。
「紅葉様―言われた通りに持ってきましたよー……? 紅葉様どうされました?」
こけたせいか若干額が青いマコトが言われたものを持ってきた。そして、私の異変に気づく。
「いや大丈夫。心配しなくていいわよ。マコト」
「ならいいですが……」
マコトは少し不服そうであったが了承した。
――全く、可愛い子なんだから
「ちょうどいいから、そっちは私が持って行くからこの子を連れて本殿に先に行っててくれないかしら?」
「あ、わかりました。紅葉様は?」
「私もすぐいくから」
「わかりました。では先に行ってます」
「ええ」
マコトは白い狼の子を抱えて本殿の方に走って行く。
私はその抱かれているその子を目を細めなが、彼には聞こえないように呟く。
「――――あなたは本当に何者かしら? 木葉?」
私はその言葉の答えは彼女が起きた後で聞こう。そう思いながら私は彼らの後に付いていった。
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