とりあえず、今年のギー丸子の出来事について何か書こうと思いましたが、もうすでに年忘れのイベントにいくつか参加したせいか今年のことをもうなにも覚えていません。 なので、ごく最近のことで住人と話したことでも書こうと思います。 この話は、目指すものがあって東京(うちは神奈川だが)に出てきて努力はしてみたが、目標に届かなかったという若い住人に向けて、親切なおじさん(先住人)たちが色々とおせっかいを焼いて話した内容のまとめです。 うちの住人で、かつて志望校以外で学部すら希望ではない大学に進学してすぐに中退してしまい地元で就職したが、20代後半から再度大学受験を目指してやってきた地方出身の子がいます。 彼は、当初から東大・東工大クラスの難関大学を目指して勉強していました。 毎日受験勉強に励んではいましたが、12月にも入っていよいよ模試での成績が合格ボーダーラインに届いていないと難しいぞ、という時期に、志望校の後期試験対策模試で自信のあった科目も含めて目標としていた成績をかなり下回ったようです。 その後、連絡もなくしばらく姿をくらましてしまうなど中々心配なことになってしまいました。 とりあえず話を聞いてみると、成績が目標に全然届かなかったことに加えて地元で受験を応援して支えてくれていた人も離れてしまったりなど、色々あったようで、意気消沈して受験を諦めて(中略)地元に帰る、みたいな方向で考えていました。 先住人たちは、一年受験勉強をしてきたのにそれではなかなかもったいないし、それなりに彼を応援してきていたので、ちょっと詳しく話を聞いてみることにしました。(おじさんたちは若者の再挑戦などが好物です) 難関大への社会人の再受験。人にもよるかもしれませんが、一般的にはかなり難しい目標です。最近、一度は入学できたはずのホリエモンも失敗しています。 失敗する可能性が高い目標を掲げていたのは明らかですが、東大・東工大でなければ諦めて帰る。というゼロイチの計画で本当によかったのか。 彼の意気消沈のしようからは、駄目ならスッパリ諦めるという計画が事前にあったわけではなく、駄目だったらどうするかというのは計画になかった様子でした。 なので先住民たちは彼に、「難しい目標を掲げるのは構わないのだが、物事にはサブプランを含んだ計画が大事なのだ」という話をしました。 彼の場合は、1)入学できるところに行く、2)もう一年受験勉強を続けて目標の大学に行く、3)入学できる大学に行き大学の科目を勉強しつつ志望校への編入学を目指してみる、4)スッパリ諦めて別の目標にチャレンジするなど、事前に目標に届かなかったときのサブプランが事前にいくつも考えられたはずです。 サブプランが事前に考えられていれば、一番の目標に届かなかったことはそれなりの喪失感やショックはあるとは思いますが、何もサブプランを考えずに「駄目そうだったから諦めて地元に帰った」というのよりは本人のなかで納得のいく「メインのプランに向けた努力はやりきった」という思いは持てるはずですし、サブプランの方面にもさらに継続して取り組むべき計画があれば落ち込んでもいられないはずです。 先住人たちは、彼に単に落ち込んで地元に帰るのではなく、今からしっかりサブプランを考えて見てはどうかと話をしてみることにしました。 さて、そもそも彼がなんのために大学受験を目指したのか。なぜ目標が難関大学だったのか。というのはベストなサブプランを考えるためには必要なことです。 彼には、ゆくゆくは地元に帰って前職にまつわる事業を立ち上げたいという希望はありました。 その事業自体は聞けばなるほど一応高学歴のほうが有利そうな職に関する事業です。最終学歴が高卒(彼は大学中退と言い張るが…)というのは、流石に不利に思えます。とはいえ、大学というのは単なるブランド獲得手段ではありません。 彼が事業者・経営者として成功するために勉強したいのならば、経営について学べる学科・コースがあれば別に難関大学でなくとも学べます。 彼が事業にしたいと思っている職業に関する学問ついても、比較的どこの総合大学でも学部・学科を設けてあります。 また、彼がギークハウスに来た理由でもありますが、プログラミングやソフトウェアづくりを学んで自身が将来目指す事業に活かしたいという思いもあったようです。この点についても、なにも難関大学でなくとも学ぶ事はできるはずです。 結局は彼が、10年後にどうなりたいかというビジョンを持って大学に行くことを考えていたかどうかなのですが、それに関しては漠然と「難関大学で情報工学を学び、自分で作ったソフト・アプリを利用して、地元にフランチャイズで店舗展開する事業をやりたい」(彼の事業は実店舗形式です)と考えていたようで、どうも計画としてチグハグなことを言っているように見えました。 先住人たちは、彼の漠然とした計画には「ソフトウェアを作る能力」「ソフトウェアを売る能力(あるいは売れるものを見抜く)」「経営を成功させる能力」が各々にかなり高いレベルで必要だと指摘しました。 さらに、それらの能力は各々に直接的な関連性がないため、一人でやるには個別の手段で身につける必要があります。 くわえて、大学で情報工学を学んだことのある住人は、大学での情報工学は彼が考えているようなソフト・アプリ製造訓練ではなく、人工言語やコンパイラの仕組み、アルゴリズムとデータ構造、通信ネットワークや信号処理、記憶装置・ファイルシステムの仕組みなどが中心であること、実践的なことは研究室で、それも通信・圧縮・暗号化・画像処理・機械学習などの分野が多いと思うが、そこで学べるようになるんじゃないか、くらいなのだと実態を教えてあげていました。 もちろん、自分で学ぶ姿勢、自分で研究する姿勢があれば大学という場は学ぶにはよいと思いますが、彼の考えている内容だと独学や専門学校などプログラミング塾でも別に問題がなさそうです。 要するに、彼が"計画"として考えていた内容はあまり現実的ではなく、学ぼうとしていた内容は大学の講義ではあまり教えていないということがわかりました。 サブプランの不在もそうですが、どうも彼には計画づくりの力に大きな問題があるようでした。 本当にやりたいこと(目標)が曖昧(経営なのか、職業なのか、ソフトウェア制作なのか、難関大学への入学なのか) 事実にもとづいた計画の不足(その内容は大学で教えていない) 短期目標の積み重ねによる長期目標(最終盤で大きな絶望を得る) サブプランを用意していない(絶望を得たあと、賢明とは言えない判断に走る) 問題を順に解決するために、先住人たちは彼に次のようにして、計画をたてるようにいいました。 まずは、新たな目標を設定するために、先住人たちは、彼に自分が本当にやりたいことを考えてみるように言いました。 そして、大学への進学を目指す場合は、大学で教えている内容を調べ、将来の計画と一致するのか確かめる。 その上で、進学に必要な学力を得る期間を、これまでの成績の伸びから試算し、都度計画値と比較できる環境を整えて学習をすすめる。 最後に、この新たな目標に失敗したら、どうするのかを考える(できれば努力を無駄にしない形で)。 なにかに成りたい、なにかを変えたいという曖昧な計画でとりあえずギークハウスに来てみる、というのはとてもよいのですが。中には高い目標や一見すると具体的っぽく見える目的を持ってきたりする人がいます。 大抵のギークハウスの住人は怠惰を好む生き物ですが、そうした目標を持つ人が努力によって成りたいものに変わって行くのを見るのは概して好きです。そういった住人が入ってくるのは歓迎しますし応援しています。 ですが、高い目標ほど失敗のリスクが大きいため、計画をしっかり練るべきです。 計画を立てたと思っていても、今回の話の彼が陥ったように、 目標を達成できなかった際に絶望から失踪してしまうなんてことに成りかねません。 先住人は高い目標をもつ住人が入ってきたとき、早めに上の点を確認してあげると住人を悲しい形で見送らなくて済むかもしれません。 その後、彼は色々と(これまでよりは)現実的に計画を考えてみている様子ですが、とりあえず受験勉強は続けつつ、志望大学を現実的なラインに落として(といっても一般的にいい大学だと思います)将来の計画に役立つ学科に進むようです。 ここには書けていない彼の性格、生活行動などもありますが、先住人たちは、不安だなぁと思いながら見守っています。