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【社説】

平成の大合併 過疎促進?を検証せよ

 「平成の大合併」で合併を選択した小規模な旧町村地区は、合併しなかった近隣町村より人口減少率が高かった-。国が自治体の基盤強化を狙ったが過疎につながったともいえる。十分な検証が必要だ。

 日本弁護士連合会が明らかにした。日弁連は、小規模で距離が近く、産業構造が似ている合併旧町村と合併を選ばなかった町村のペアを四十七組選び、二〇〇五年と一五年の人口を比較した。

 公表結果によると、約九割、四十三組で合併旧町村の方が減少率が高かった。

 たとえば長野県では、飯田市と合併した旧南信濃村は29・5%減ったのに対し、隣接する泰阜(やすおか)村は17・5%減。岐阜県では、他町村と合併して飛騨市になった旧河合村は25・4%減ったが、隣接の白川村は18・9%減にとどまった。

 同じ分析では、四十一組で合併を選んだ旧町村の方が、非合併町村より、高齢化の進み方が早いことも分かった。

 平成の大合併は、国の音頭で一九九九年から二〇一〇年にかけて行われ、三千二百余あった全国の市町村数は半数に近い千七百余になった。市町村役場数の激減を意味する。調査結果では、公務労働者は合併旧町村の大部分で減り、逆に非合併町村の六割で増えた。

 「合併で職員を減らし、行政の効率化を」という目的は達せられたかに見える。しかし、地方在住者にとっての有力就労先である市町村役場が、人数の少ない支所になり、周辺の飲食店や宿泊所の減少につながって、人口大幅減の原因の一つになってしまった。

 財政基盤への見通しもずれた。「将来、財政が立ち往生する」というのが小規模自治体の危機感だったが、調査結果では、非合併四十七町村の積立金の合計は、〇五年度の五百億円余から一五年度は二倍の一千億円余に増えた。事業節減などが背景だという。

 国は、来春で切れる合併特例法を延長する方針でいる。このほか近隣の小規模自治体が住民サービスを補完し合う「圏域」の構想もあり「合併と似た問題をはらむ」と危惧する専門家もいる。「平成の大合併」の功罪をしっかりと検証する必要があろう。

 日本の人口は、国勢調査では一五年に初めて前回を下回り、一億二千七百万人余。少子化などを背景に、六五年には八千八百万人にまで減るとも推計されている。

 「人口減時代」に見合った行政サービスの将来を熟考すべき時である。

 

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