プロローグ 【zero版】
白い机と白い椅子しかない書斎の中に一人の男が座っていた。
「やっぱりオーバーロードって面白いなぁ。」
一人ぽつんと呟きながら本棚に本を片付けた。
次に行けるならこんなつまらない世界では無く、力が支配するオーバーロードの世界に行ってみたいものだな。と口には出さずに一人考えていた。
そして、世界を移動する為に今日中に自殺をしようと決意した。
悪魔や幽霊が支配する夜の街道を小走りに走り抜け、一人ビルの屋上に立ってこの世界で最後に見る不完全な景色を楽しんでいた。すると男の身体は漆黒の大地に向かって吸い込まれて行く。
〇〇〇〇
時は原作が始まる600年前だったらしく、人類が滅びかけていた。
既に面倒くさが興味を超えてしまい、やる気が低下したので原作が始まるまで睡眠しようと、森の中を彷徨いついには寝てしまった。
この時オカモトは忘れていたのだった。この100年後に八欲王が来る事をすっかり忘れて、夢の世界に旅立ってしまった。
しかしここで確認してほしいのは状況です。
現在人類は滅びかけていて、睡眠をしている場所は人類の生存領域などでは無い森の中であるということを、そんな怪物にとって格好の餌を放っておくわけ無いですよね。
ゴブリンという怪物は今日も楽しく人間狩りをしていた。
人間はとても弱いのだ、しかも喰ったら美味いので食べるしかない、というのがゴブリンを含めた怪物の常識なのだ。
そんなゴブリンの前に食材たる人間が寝ていたら、嬉々として襲いかかりゴブリンの腹の中に入るしかないのだか、あくまでも普通の人間だったらの話だ。
その日、森に存在していたゴブリンの大半がその人間に殺害されて、安らかに死ぬ事を許さない人間はゴブリンの死体と魂を集めてとある種を作り出した。
そして、種を森の中心に植え付けて発芽するのを待っていたのだか、成長しないので記憶から消す事にした。
静かにしていたら理不尽に襲われたオカモトは人間の国を作り上げ、人間の勢力を強めれば自分は静かに寝られるのではないかと思ったので国を建国する事にした。
「名前は何が良いかな。バハルス帝国なんてカッコ良いんじゃないか」
早速、国を作るにも元が必要なのである程度育った国に、尽力する事にした。
転生の影響で【オーバーロード】の記憶は曖昧だった。
〇〇〇〇
まだ小さかった国の中で一人の少年が怪物と鬼ごっこという名のサバイバルゲームをしていた。
「糞が、アンデット共がこの俺を襲うなんていつか呪い殺してる」
一人の少年ことジルクニフはアンデットに対して罵声を上げながら走り回っていた。
当然ながら周りには大人が存在したのだが、誰一人としてジルクニフに助けに入る者は居なかった。
当然ながら大人は自分が狩られる対象になるのが怖くて見守る事しか出来なかった。
この人間狩りには亜人が作り出したルールが幾つかあったのだ。
1、逃げる人間は指定のエリアを出てはいけない。
2、人間は武器を使用してはいけない。
但し素手ならば攻撃しても良い。
3、逃げている人間を助けてはいけない。
4、逃げている人間は外部に助けを求めてはいけない
ルールもあって助けが来る事は絶対にないと、知っているジルクニフはこのゲームに参加が決まる前から脱出する手筈を整えていた。
しかし亜人はジルクニフを知っていて見逃していた。
何故ならジルクニフのプライドを壊してから自分の胃袋に入れたかったのだ。
そして、ジルクニフの命運が尽きた頃、オカモトが目の前に立っていた。
「また亜人か、幾ら殺しても数が減らないなぁ」
男の言葉を聞いたジルクニフは幾ら殺しても、という言葉から相当な実力があると判断した。
だからこそ、自分が助かる為にはこの男を利用するしかないのだと。
「た、助けてください」
いかにも純粋そうな子どもの言葉遣いに変えたジルクニフは、神にも祈る雰囲気を醸し出して男に懇願していた。
そんな少年の願いを男は無残にも打ち砕く。
「嫌だね。亜人は嫌いだか無能な人間をわざわざ助ける意味なんてないね」
ジルクニフは初手を間違えたと思ったのだが、そんな事でへこたれる弱い精神を持ち合わせては居なかった。
「なら、この僕がお前の為に頭脳を貸してやる。だからこそ助けろ馬鹿野郎」
その言葉を聞いた男は口角を上げながら、迫り来る亜人の身体を吹き飛ばした。
「僕はお前みたいな糞ガキの方が好みだよ」
男はジルクニフに手を出して握手をした。
「僕の名前はオカモトだ。お前の名前はなんだ」
オカモトの手を弾きながら言葉を続けた。
「私の名前はジルクニフ。いずれは一国の王となる人物だ」
「すごい野心だな。だからこそ、その方が私の計画に合いそうだな」
「計画とはなんだ」
「国を建国するという物だが、何も決まってないな。僕は馬鹿だからさ」
成る程な、と思いつつ男を観察していると、殴られたので心でも読めるのかと思うと、そうだよと言われたので内心怒っていた。
その後、ジルクニフのいた村は亜人の報復により壊滅した。男も助けはせず空から村が壊滅する様子を笑いながら観戦していた様子を見ていた少年は男の狂気を見て、自分も強くならないと思うのであった。