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【社説】

秘密保護法5年 政府を監視できるよう

 特定秘密保護法の施行から五年。政府は適用対象の行政機関を大幅に減らした。特定秘密の保有実績がないためだ。恣意(しい)的運用が懸念された法制度である。政府を監視できる仕組みこそ必要だ。

 特定秘密保護法は付則で五年間、秘密保有のない機関を対象から外すことを定めていた。検察庁や国税庁、会計検査院など四十二機関が該当した。今回の見直しはそれに沿ったものだ。

 問題なのは、法制定時から幅広く対象機関を設定し、必要以上に法の網をかけていたことだ。審議段階から懸念されていたことでもある。

 もう一つは恣意的に秘密指定がなされる懸念である。

 既に問題の所在がいくつか判明している。「あらかじめ指定」も一つである。箱はあるのに中身が空っぽ、つまり将来、特定秘密になるであろう情報をあらかじめ指定している実態だ。

 これは対象が際限なく広がらないようにする特定秘密保護法の理念から外れた運用だ。チェック役の「独立公文書管理監」が警鐘を鳴らしたことがあり、到底、許されないことだ。

 箱のたとえでは、箱に貼られたラベルが抽象的すぎて判別できないケースもある。衆参両院の情報監視審査会が「推定すら困難」と指摘したこともある。適正な国会のチェックを妨げていることは確かで、これも正されるべきだ。つまりは立法時に懸念された恣意的指定が現実化している。

 「何が秘密か、それも秘密」ならば、政府への勧告権を持つ情報監視審査会も身動きがとれまい。身勝手な役所の運用がまかり通るならば、白紙に戻し、法の廃止も視野に入れるべきである。

 文書廃棄も問題だ。秘密指定期間中でも「首相の同意」で恣意的廃棄が行われている問題が国会で取り上げられたことがある。政府によるルールの悪用であろう。行政文書はできる限り保存し、将来、国民に明らかにすべきである。

 特定秘密以外の情報も閉ざす隠蔽(いんぺい)主義も懸念されていた。今年六月に日米合同委員会の議事録の開示訴訟で、外務省が「認諾」という敗訴を選択しつつ、裁判所のメール提出命令を拒否する事態があった。森友・加計問題や自衛隊の日報問題など、政府機関の情報隠しの事例はおびただしい。

 主権者は正しい情報がないと、正しい判断ができない。「知る権利」を活(い)かしてこそ、民主主義が機能することを再認識したい。

 

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