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【社説】

データ大量流出 管理体制が甘過ぎる

 神奈川県の行政文書のデータが大量に流出した。廃棄を請け負った業者の元社員が記憶媒体ごと盗んでネットで売りさばいていた。被害の全貌は計り知れず情報管理が甘いとしか言いようがない。

 今回、流出したのは個人や法人の納税記録や県職員の勤務に関連する記録などで、秘匿性の高い情報が大量に含まれている。元社員が売った情報がさらに転売された可能性も否定できない。

 県は情報の入ったハードディスクドライブ(HDD)を富士通リースから借りていた。返却の際、データを完全に消去するよう求めたが、同社は消去作業を廃棄を請け負ったブロードリンクという業者に任せた。

 問題なのは、県も同社も復元不可能な状態になったかどうか業者に十分確認していなかった点だ。HDDのデータは初期化するだけでは不十分で、ディスク自体を破壊するか磁気でデータを消すしかない。完全消去後、写真付きの証明書を出してもらい確認するのが通常の流れだ。

 だが県は消去に必要な手続きをしっかりと行っていなかった。秘密保持が絶対に必要なデータの廃棄を、行政が業者に丸投げしたと批判されても仕方がないケースで猛省すべきだ。

 一方、ブロードリンクの対応も杜撰(ずさん)極まる。元社員は二〇一六年二月の入社後継続してHDDを消去室などから盗み出していた。本来、社員の退出時には手荷物検査が必須だが、早朝や土日は実施していなかった。盗み放題が常態化していた形で、もはや言葉を失うレベルだ。

 今後心配なのは、流出した情報が何らかの不正に使われるケースだ。被害が出てからでは遅い。県は捜査機関などと連携し、情報がどこに流れたのか徹底解明を急ぐべきだ。こうした対応なしに住民の信頼を取り戻すことはできないはずだ。

 さらに他の自治体についても情報管理の実態を改めて調査することが重要だ。総務省は個人データなどが入った記憶媒体の破壊を徹底するよう求めていた。しかし、今回事件が起きたことで、これまで以上の厳しい対応を迫られる事態となった。

 デジタル技術の進歩は非常に早い。ただ専門知識を持つ人材が限られており、対応が難しい自治体もあるはずだ。今後は国と自治体、民間が一体となり、データ管理に知恵を絞る体制づくりが早急に求められる。

 

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