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【社説】

石炭火力 なぜ“卒業”できないか

 開催中の気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で日本の石炭火力発電依存が批判を浴びている。なぜ減らせないのだろうか。資源エネルギー庁が言う「安価」にも疑問が投げかけられている。

 国連環境計画(UNEP)は先月、COP25の開催を前に公表した報告書の中で、日本に石炭火力発電所の新設をやめ、今あるものは段階的に廃止するよう促した。

 ところが「石炭火力などは選択肢として残したい」という経済産業相発言を受けて日本は、COP25開幕早々、環境団体の国際ネットワークから、温暖化対策に後ろ向きな国が選ばれる「化石賞」を贈られた。「パリ協定(温暖化対策の新たな国際ルール)を軽視している」というのが「受賞理由」だ。

 石炭火力は、温暖化の要因となる二酸化炭素(CO2)の大量排出源である。世界の排出量の約三割が、それに由来する。

 パリ協定の採択を契機に国連は、二〇二〇年までに石炭火力発電の新規建設を中止するよう各国に呼び掛けた。英国では二五年、日本同様依存度が高いドイツでも三八年までに全廃する方針だ。

 だが、日本では二十二基の大型石炭火力の建設および建設計画が進行中。途上国への輸出も続く。突出ぶりは、いやでも目立つ。

 英シンクタンク「カーボントラッカー」の分析によると、再生可能エネルギーの導入が欧州などに比べて遅れている日本でも、新規の再生可能エネルギーは二二年までに新規の石炭火力より、二五年までには既存のそれより安くなる可能性があるという。

 競争力を失いつつある石炭火力に投資を続ければ、日本だけで最大七百十億ドル(七・七兆円)が回収不能に陥る「座礁資産」化の恐れがあると、警告を発している。第一生命や丸紅など日本の金融機関や商社も、ダイベストメント(投資撤収)に動き始めた。

 だからといって原発依存には戻れない。安全対策に膨大な費用がかかる原発は、すでに座礁資産と見なすべきだろう。

 何より原発の危険性を世界に認識させたのは、フクシマの事故を起こした日本ではなかったか。

 三〇年の電源構成比、石炭火力26%、原発20~22%。石炭と原子力にこだわり続ける国のエネルギー基本計画に縛られて、パリ協定が求める温室効果ガス削減目標の引き上げに、応じることができない日本。かつての「環境先進国」は、ますます世界から遠ざかる。

 

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