インディーパブリッシャーDANGEN Entertainment(以下、DANGEN)は12月11日、同社のCEOであるBen Judd氏が現職を退任し同社を離れると発表した。正式な後任者が決まるまでは、暫定としてDan Stern氏がCEOを務めるとし、再建を図るという。後述するNayan Ramachandran氏については、フルタイムでの社員を辞め、今後はフリーランスとして同社に関わっていくとのこと。DANGENは今後も、開発者に対する財務的義務を果たしていくとしている。
DANGENは、関西を拠点とするインディーパブリッシャーだ。外国人スタッフにより構成されており、パブリッシングやローカライズ、マーケティングなど多岐にわたる開発者サポートを業務としていた。高評価2Dアクション『アイコノクラスツ』のローカライズおよび国内販売をはじめ、『Momodora』開発者による新作『Minoria』のグローバルパブリッシングを担当しており、先日には虫RPG『Bug Fables ~ムシたちとえいえんの若木~』をリリースするなど、パブリッシャーとして評価を固めていた。
しかしながら、12月頭より元交際相手や関係者を名乗る匿名ユーザーより、開発者へのロイヤリティの不払いや、前出のBen Judd氏によるパワーハラスメントを糾弾する記事がMediumに投稿される。具体的にはDANGENがグローバルパブリッシングを務める『Devil Engine』開発者への未払いや、それに付随する開発者へのビジネス態度に対する告発(この部分にはNayan Ramachandran氏が大きく関与)。Judd氏と交際していたとされる人物からの、パワー/セクシャルハラスメントの糾弾など。かなり込み入った話であるので、詳細については日英・英日翻訳家である高橋温氏の翻訳ツイートを参考にしてほしい。その告発記事はMediumから削除されるも、DANGENおよびJudd氏については疑念の目が向けられていた。
今Twitterで拡散されているゲームパブリッシャーDangenのセクハラ、パワハラと開発者たちへの印税未払い問題を告発した方の記事の要点を日本語に訳したスレッドです。
Dangenはビットサミット主催者でもあるため今後の日本のインディーゲームシーンに響きます。#ゲーム開発#ゲーム#indiedev
1/70 https://twitter.com/dirtbagboyfren/status/1200510747010162688 …
なお、弊誌AUTOMATONもこうした状況の一部を把握していた。内容がセンシティブであるため慎重に事実確認を進めていたが、DANGEN側の声明が出たことにより記事化するはこびとなった。
一方で、DANGENも同記事について反論記事を公開。開発者への未払いについては一切存在しないとし、告発した匿名人物からの批判についても、誹謗中傷であると退けていた。匿名ユーザーは、さらにそのDANGENによる記事について反論記事を公開しており、Judd氏から受けた数々のパワーハラスメントやセクシャルハラスメントの内容を記述。その記事もまたMediumから削除されたものの、泥沼の様相を呈していた。
The original Dangen Warning whistleblower, who was smeared by Dangen in their rebuttal a few days ago, has responded debunking their claims. Please spread this far and wide. It’s been archived just in case.#indiedevhttps://medium.com/@dangenwarning/dangen-entertainment-warning-2-e11e04ab78ea …
Archive: http://archive.is/DG4Yi
しかしながら、この度Judd氏は謝罪文を出し、冒頭に述べたように一時的に業界から離れるという選択を選んだようだ。具体的な言及はなされていないものの、「ここ数日の出来事により、6年前に付き合っていた元交際相手に対する私の行動が、大きな苦痛を与えていたと明らかになったこと」「軽率な行動により、元交際相手および周囲に迷惑をかけたこと」「自身を改善しなければならないこと」「言葉ではなく行動で示せるよう努めること」などが記されており、最後には「心からお詫び申し上げます」との謝罪の言葉で文章をとじている。
具体的な言及などは避けられているものの、DANGENのCEOが自身の過失を認め、その責任をとった形。CEOが抜けたDANGENは、再建を進めていくという。Judd氏は関西では大きな影響力を持つ人物であっただけに、DANGENだけでなく、そのほかのイベント企画や組織編成の動向にも、注目が集まるところだろう。