親族の介護のために時短勤務への変更を余儀なくされることは決して珍しいことではありません。 ただ、ご安心ください。実は介護での時短勤務に関してはしっかり制度が整っております。 介護での時短勤務は具体的にどのようなものなのか?どのような場合に適用されるのか?その間の給料はどうなるのか? 正しく理解し、今後の生活、ライフプランを考えましょう。
介護のための短時間勤務制度措置とは
介護のための短時間勤務制度は「育児介護休業法」に定められています。 その内容を項目ごとに説明していきます。
育児介護休業法に定められた短時間勤務制度措置
育児・介護休業法制度では、「要介護状態にある対象家族を介護する労働者に関して、所定労働時間短縮等の措置を講じなければならない」と定められています。 従って事業所は、対象の労働者に次のいずれかの措置を講じなければなりません。
- 所定労働時間を短縮する制度
※短時間勤務の場合、所定労働時間が8時間の場合は2時間以上、7時間以上の場合は1時間以上の短縮が望ましい - フレックスタイム制度
- 始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ(時差出勤の制度)
労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度 ※過去の導入実績 『厚生労働省「平成26年度雇用均等基本調査(確報)」によれば、 上記の導入割合は、従業員500人以上の企業で94.2%、100~499人で89.7%、30~99人で79.3%とほぼ8割を超えます。しかし、30人未満では54.9%と大幅に減少します。 また、各制度の導入割合は「短時間勤務の制度」57.5%、「時差出勤の制度」27.6%、「フレックスタイムの制度」11.5%、「介護に要する経費の援助措置」3.2%です。』 育児と比較して、介護での時短勤務はなかなか広がっていない印象があるかもしれませんが、短時間勤務制度の導入割合は半分を超えており、今では会社によっては社内独自制度の整備なども進んできています。
適用条件
「介護のための所定労働時間短縮等の措置」は 日々雇用を除く全ての労働者が受けることができます。
※なお、下記の場合は労使協定により対象外となる場合もあります。
- 入社1年未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
適用期間~93日から『3年以上』に改正
対象家族1人につき、「利用開始の日から連続する3年以上の期間」が適用期間になります。 法改正前は93日間でしたが、法改正により連続する3年以上の期間で2回以上、と非常に活用しやすく変更されています。
介護のための短時間勤務制度には「原則6時間」の縛りはない
介護の為の短時間勤務制度には、育児での時短勤務とは異なり、6時間勤務制度を制定しなければならないという縛りはありません。 従って、例えば所定労働時間が8時間の場合に、1時間短縮の7時間で勤務するとしても原則では問題はありません。 (一般的には短時間勤務の場合、所定労働時間が8時間の場合は2時間以上、7時間以上の場合は1時間以上の短縮が望ましいとされています。) また、上記にあるように途中で介護休業を挟むことも可能となっているなど、非常に柔軟な制度となっています。
時間外労働の制限について
育児の場合のような6時間縛りはないものの、労働者が要介護状態にある対象家族の介護を行うと申し出た場合、法定時間外労働の制限をする事ができます。 (自身の残業を禁止する。)
- 1回の請求につき、1か月以上1年以内の期間
- 請求できる回数に制限なし ※例外として、事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。
※なお、下記の場合は労使協定により対象外となる場合もあります。 - 入社1年未満の労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
深夜業の制限について
労働者が要介護状態にある対象家族の介護を行うと申し出た場合、深夜業の制限をする事ができます。
- 1回の請求につき、1か月以上6ヶ月以内の期間 ・請求できる回数に制限なし ※例外として、事業の正常な運営を妨げる場合は、事業主は請求を拒むことができます。 ※なお、下記の場合は労使協定により対象外となる場合もあります。
- 日々雇用される労働者
- 入社1年未満の労働者 ・保育又は介護ができる、次のいずれにも該当する16歳以上の同居の家族がい る労働者 ①深夜に就労していないこと(深夜の就労日数が1か月につき3日以下の者を含む) ②負傷、疾病又は心身の障害により保育又は介護が困難でないこと ③産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間以内の者でないこと
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者 ・所定労働時間の全部が深夜にある労働者
短時間勤務制度と「介護休暇」「介護休業」の違い
仕事と介護を両立するための支援制度には時短勤務のほか、「介護休暇」「介護休業」があります。 では、介護休業と介護休暇制度は何が違うのでしょうか? 介護休業と休暇は「介護のために休みを取得する」という点では同じですが、その利用目的や利用期間などは異なります。
介護休暇とは
介護休暇制度とは、 1日単位で休暇を取得できる制度です。介護だけでなく、通院の付き添いや介護サービスの提供を受けるための手続きの代行など、必要な世話を行う際に使用できます。
- 取得期間:対象家族が一人の場合は一年度(一般に毎年4月1日~翌年3月31日)につき5日まで、対象家族が複数の場合は10日まで。
- 取得方法:かならずしも書類を提出する必要はなく、口頭や当日の電話などでの申し出も可。
- 休暇中の給料:事業主に対し休暇期間中の賃金を支払う義務を負わせていない(つまり無給)
介護休暇と介護休業の違い
介護休暇と介護休業の主な違いには「利用目的」「取得できる期間・休暇日数」「休暇・休業中の給与と給付金」「申請・取得方法」の4つがあります。 下記にまとめてみました。
介護休暇 | 介護休業 | |
利用目的 | 一定期間休業し、対象家族の介護をする。 | 1日単位で休暇を取得。 当日必要な世話をする。 |
取得できる期間と 休暇日数 | 対象家族一人につき、要介護状態に至るごとに1回、通算して93日まで。休日も日数にカウントされる。 | 対象家族が一人の場合は一年度(一般に毎年4月1日~翌年3月31日)につき5日まで、対象家族が複数の場合は10日まで。 |
休暇・休業中の給与と 給付金 | 無給。 ただし、一定の要件を満たす社会保険の被保険者に対して、雇用保険から介護休業給付金が給付される。 | 無給。 |
申請・取得方法 | 取得の2週間前までに書面で事業主に申し出る。 | かならずしも書類を提出する必要はなく、口頭や当日の電話などでの申し出も可。 |
まとめ
- 介護のための短時間勤務制度は日々紹介を除く全ての労働者が受けることができます。
- 適用期間は法改正により連続する3年以上の期間で2回以上、と非常に活用しやすく変更されています。
- 育児の場合とは違い「6時間勤務制度」の制定義務はありません。
- 「介護休暇」「介護休業」には大きく4つの違いがあります。
- 短時間勤務との組み合わせも可能です。
介護のための短時間勤務制度に関する支援制度はフレキシブルに整備されています。 必要に応じて堂々と活用していきましょう。 また、介護を行うという事は、派遣やパートなども含め新しい働き方を検討する機会としてとらえ、今後の生活やライフプランを考えてみましょう。