スピン経済の歩き方:「若いときにひどい目にあった」自慢のおじさんは、なぜヤバいのか (4/5)

» 2019年12月10日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

パワハラや過重労働を正当化

 どんなに会社として立派な再発防止策を出しても、労務環境改革を進めても、巨大組織がゆえ「若いときにひどい目にあった自慢おじさん」が現場に溢れかえっている。彼らは建前的にはパワハラ防止研修などを受講してウンウンとうなずくが、本心としては「今の自分」をつくったパワハラや過重労働を全否定できない。むしろ、「あの試練があったから成長できた」くらいに思っている。

 そのため、現場判断でよかれと思って、部下や後輩に同じ体験をさせる。つまり、自分が新人時代に味わったどう喝や嫌味、プレッシャー、理不尽な過重労働などありとあらゆるハラスメントを再現してあげるのだ。

 もちろん、中にはこれらを単純に自分の欲望で実行するような心のひずんだ管理職も少なからず存在する。だが、これまでパワハラや過重労働が問題になった企業などで、加害者側の主張に耳を傾けてみると、問題児をブン殴った「体罰教師」のような言い訳をする人たちが圧倒的に多いのもまた事実なのだ。

 つまり、「とんでもなく素行の悪い人間なので、本人のためにも厳しく指導をした」とか「自分も毎日終電、休日返上でようやく一人前になった。若いうちは寝食を忘れて働くのが当たり前だ」と、パワハラや過重労働を正当化するのだ。

 「若いときにひどい目にあった自慢おじさん」が、組織にとっていかにヤバいのかということがよく分かっていただけたと思う。

 さて、そこで次に気になるのは解決策だろう。管理職研修などで徹底的にパワハラや過重労働を容認するような考え方をあらためさせる、とかいろいろな方法があるかもしれないが、個人的にあまり期待できないと思っている。

 なぜかというと実は日本の教育システムが、「若いときにひどい目にあった自慢おじさん」を量産させるような仕組みになっているからだ。つまり、会社に入った時点で、どんな教育をしたところで既に手遅れなのだ。

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