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(八郎)十代田八郎と申します。
(マツ)どうぞ お座り下さい。
はい。
あっ 痛っ。(喜美子)大丈夫?
あの…。(常治)本日は…お忙しいところご足労おかけいたしまして。
先日の件心より陳謝いたしますとともに何とぞ ご容赦のほど伏してお願い申し上げます。
殴って すまんな。いえ。
以上。えっ…。
終わりや。お父ちゃん?
おい お前 風呂沸かしてるか?(百合子)へっ?
何 言うてんのん?
分かった 分かった もう。
娘はやれへん。 以上。
風呂!(百合子)まだやけど…!
(常治)もう ほんま しゃあないな自分で入れようかな。
お父ちゃん。ミカンの皮でも浮かべて入るかなあ。ちょっと待ってえや お父ちゃん!
これが 1回目のご挨拶でした。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
(八郎)あの それでですね丸熊陶業の商品開発… 室いうところで働かして頂いておりまして。
お… お父さん…。あの… えっと そこで あの…。
いてててて…。大丈夫ですか?あ~ いってえ。
(八郎)あの… 陶器を使ってですね…あの…。
2回目は 全く口をきいてもらえず…。
お話だけでもさして頂けないでしょうか?
あ~! 虫や! 虫! 虫。おらっ! お~ そこ…!
あの… お父さん? お話だけでも…。あ~ 行った行った… 虫 虫 虫…!
痛い 痛い 痛い!お父ちゃん!痛っ 痛っ!
3回目は 茶の間に上げてもらえず…。
(戸が閉められる音)えっ。
あれ?お父ちゃんやろ。えっ?
あれ…。ちょっ…。お父さん!
お父ちゃん!お父さん!? ちょっと!
4回目は 家に入れてもらえませんでした。
5回目からは すっぽかされ…。
用がある言うて出ていった…。
6回目も…。
用はないけど 出ていった。
7回目も…。
用はないくせにまた あかまつ飲みに行ってもうた!
また出直しや。ごめんな。ええて。
あの… また日ぃ改めさしてもらいます。
すいませんね。いや… こちらこそ 何べんもすいません。
♪~
お姉ちゃん!うん?
お母ちゃんも!かわいそうやん 十代田さん!
ええ加減 なんとかしてあげてえや!うん… せやな…。
あんな何回もすっぽかされてほんでも怒らんと えらいできた人や。
うちは 気に入ったで。直姉ちゃんかて 絶対 気に入るわ。
お母ちゃんかて そやろ!?もちろんや。
ほな もうええやん!お父ちゃんの許しもらわんでも!
多数決で決めようや!アハハッ…。
笑てる場合ちゃうでえ 結婚せえへん言いだしたら どうすんのん!
や… 百合子の言うとおりやお父ちゃんも こんだけごねたらちょっとは気ぃ済んだやろ。
あかまつ行って 話 してくるわ。行って 多数決で決めた言うてきて!
アッハ…。お姉ちゃん!
いや ええんよ。お母ちゃん 行かんでええからね。
ううん。いずれ 間を取り持たなあかん思てたんよ。
こっから先はもう お母ちゃんに任せなさい。
それはちゃうよ お母ちゃん。お母ちゃんに任せることやないよ。
これは うちが自分で決めたことや。
自分で決めた結婚や。
十代田さんも 100回でも200回でも許してもらえるまで何回でも来る言うてくれた。
うちが選んだ人や。 心配いらんで?
分かった。
もう何も言わんと静かに見守ったげよな?うん。
東京の直子へも手紙で状況を知らせました。
すいません。(加山)ええねんけど川原さんとこ 電話引くんやなかったん?あ… 引きます そのうち…。
すいません お世話おかけしました。
返事の電報が丸熊陶業に届いたのは父に見られるのを避けてのことでしょう。
直子からは たったひと言…。
(直子)頑張りぃ~!
♪~
ご苦労さまでございますぅ。
ご苦労さまでございます。(秋安)ご苦労さ~ん。
(戸が開く音)ああ。
あっ うちがやります!掃除は 僕の仕事や言うたやん。
うちにやらせて下さい言うたやん。せやけど ここの掃除は 僕の仕事や。
もう周りも知ってるしタダで陶芸習わせてもろて何のお手伝いもせんわけにはいきません。せめて 掃除くらいは。
…お金 取ろか。えっ。授業料。
え~。
ほんまに嫌そうやな。お金が介在するんは…。
授業料 払たら なんぼでも堂々と習い事してますいう顔できるやん。
いらん気ぃ遣わんで済む。
これにしよか ここに授業料入れて下さい。
はい 分かりました。
ほんで ここにたまったお金はどうせ結婚したら2人のお金や。
あ~。 えっ…?
たまったお金で陶芸の道具 買うたらええわ。
うちの?せや。ええの?
ヘラやコテや 必要なもんどんどん出てくるで。
そのための貯金のつもりでな。これは めおと貯金や。
何?
うん?何や かわいいこと言うなあ思て。
もうええやんか おかしいか?おかしない おかしない。
分かった ほんなら 早速めおと貯金さんにお金入れとこう。
「さん」はいらんわ。めおと貯金殿。
ばかにしてたら たまれへんで?ためる ためるぅ!
いっぱい ためるでえ電気窯 買えるくらいに。
うわ~ ええなあ 専用の電気窯。アハハッ。
僕も入れとこ。ええ? 授業料ちゃうの。
20円ある 入れとく。もう そんなとこから出してえ。
洗濯する時 ちゃんと出してんの?出してるよ。ふ~ん。
電気窯もええけどそんな遠い話やのうてお父さんのお許しがもらえたら大阪に 映画 見に行こ。
映画?美術館も行こな。
美術館!京都のデパートでいつも作品展やってんのも一緒に行こ?
どんな作品展?あ~…。(照子)今 彫刻やってるわ。
何とかいう 海外の彫刻家やで。
いつからおったん。つい さっきや。
体重増え過ぎてしもてお母ちゃんに 動け 動け言われてなその辺 散歩しててん。
で 声がしたから「あっ そや のぞいたろう」思て。
(笑い声)アホやなあ。あの…。
ああ 彫刻展な 行ったらええわ。
大阪のデパートも絵画展始まるで。そうですか。
喜美子連れてこれからは一緒に行けるな?はい。
一人で行ってたん?若社長にそういうのも見といた方がええ言われて。
へえ~。陶芸家になるための それも勉強や。
はい。実際に この目で この手で この耳で見たり 触れたり 聞いたりしていろんなこと知って 吸収して…。
感性を磨くんや。 なっ?
感性 分かる?絵付けの仕事にかて必要やで?
おう 感性な…。磨けや。磨くわ。
ハハハ… ほな 一緒に行こ。うん 行こな?うん。
美術館… 絵画展!
そんなん行ったことないわ 楽しみやなあ。行っても分からんのちゃう?
分かるよお!ほんまかいな。分かるよ 感性あるから。
感性 分かってる?ウフフ… うん うん…。何?
こんな感じかあ…。何よ…?アハハハ…。
いや 赤ちゃん産まれたら人様のこと 構てられへんしな。
今のうちに見といてよかった。見せもんちゃうで~。
うちの方が結婚に関しては先輩や。助言した…。
痛…。えっ えっ! 痛いの?
大丈夫か?今 何か… はあ…。 ああ 大丈夫。
ええか? 喜美子は子どもの頃から川原家を背負ってきてこの先も 家をしょっていかなあかん。そんなん照子かて同じやん。
金持ちの家と一緒にせんといてえ。
十代田さん ほんでもな? 結婚することでしょってるもんが 少し軽うなるんよ。
軽うしてあげてな?ほんで自由にしてやってな?
もうええから。十代田さん。
はい。喜美子のこと よろしゅう頼みます。
もうええって 気色悪いわ~。うちも言うてて気色悪いわ~。
(笑い声)
あっ…。ええ!? もう 大丈夫なん?痛たたた…。
やっぱり痛い。これ あれや 来たわ 陣痛ちゃうか。
(2人)うそやん!ほんま!?
十代田さんが のろけ聞かせるから~!すいません! ちょっと呼んできます!
大丈夫か?・(十代田)すいません!
ハア ハア… あっ おさまった。
ふざけてんのん!?いや ちゃうよ ほんまに痛みひいた…。
もう… びっくりさせんといて。
ええ男やであんなええのん 離したらあかんで?
ほやけど ほんまに大丈夫なん?陣痛ちゃうん?
うん。 い… 痛た…。
もうやっぱり!あっ 痛い…!もうやっぱり陣痛やんか!
大丈夫か?ハア ハア…。しっかりしぃ。
どうしたらええ? どうしたらええ…?痛い 痛い…。
痛いねん!深呼吸…!
(深呼吸)う~っ。
遅いな 喜美子 もう…。
今日 まだ挨拶も来てへんやろ…。
ええ? あんだけ毎日続けて来とったのにお前…。 なあ!
あとは ええよ。
♪~
何か あったんちゃうかな。 なあ?
♪~