3. 境遇や待遇などが異なる人
同じような境遇で似たような問題を抱えている人に相談をすると、深い話し合いになる傾向がある。相談をする相手としては、こういう人を選ぶのが理想だ。だが、処遇や待遇などの違いがはっきりしているここで過去に私が取材した例をひとつ挙げたい。
都内にある中堅規模の小売り企業で、パート社員をしていた女性が職場でいじめを受けた時、同世代の正社員の女性に相談をした。ところが、正社員の女性の回答は「パート社員なのだから、この際、辞めたほうがいい」だったという。結局、そのパートの女性は辞めてしまった。取材した時、彼女は仕事にやりがいを感じていただけに、今でも後悔している、と話していた。確かに、パート社員が正社員に相談をしても、双方の処遇や待遇などは異なるだけに、同じ視点で深い話をすることはなかなか難しいかもしれない。
4. 会社に不満を持っている人
ここまで挙げた「1」~「3」に該当しなくても、仕事の相談をしないほうがいい人がいる。それは、会社に対して敵意を持っている人だ。例えば、幹部と激しくぶつかり、同世代の中で昇格が遅れているような人。こういうタイプの人に相談をすると、得てして「うちの会社なんてダメだ。早く辞めたほうがいいよ」などと、簡単に口にする。
どちらかというと、自分の不満をぶちまけているだけにすぎないのだが、相談にのってほしい人は迷いの中にいるだけに、信じ込んでしまう傾向がある。じつは、「うちはダメな会社だから
という人こそ、さしたる実績を残すことなく、会社にしがみつきたがる傾向がある。その人自身、相談ができる相手がいないのだ。
5. あなたに対抗心(敵意)を持っている人
あなたに、極端なライバル意識や嫉妬心を持っている人にも、相談をするべきではない。何をどのように伝えようとも、はじめから結論はみえている。あなたにとって好ましくないことしか言わないはずだ。例えば、「この仕事に向いてないんじゃない?
「無理しないほうがいいんじゃない」「(君では)難しいと思うよ」というように。逆に、肯定的な意見を言う場合もあるだろう。だが、それを決してそれを鵜呑みにはしてはいけない。もしかすると、あなたを陥れようと考えていることもあるからだ。「あの人は、私のことを意識(ライバル視)しているようだ」と感じたら、そういう相手に悩みを打ち明けるのはよく相手の性格を理解してからにするべきだ。自分の身を守りたいのなら、周りをよく見てから行動することも大切だ。
組織で働く以上、誰もが何らかの壁にぶつかる。その時、程度の違いはあれ、不満を感じることは誰にだってある。誰かに相談をすることで、なんとかその状況を打開したいと願うものだろう。だが、冷静に考えてほしい。
上に挙げたような人たちに相談をしたところで、おそらく有効な解決策は出てこないだろう。むしろ、状況が悪くなる可能性のほうか高い。相談をするなら、違う業界で働く人で、あなたよりも10歳以上は年上で、部下を持っていて人事評価をしている人が理想だ。あなたに敵意や反感を持っていないことも、当然、必要だ。
その人が勤務している会社が、あなたの勤めている会社と、組織体制や規模などが似ていると、なおいい。違う業界でも同じような職種なら、より好ましい。ただ、同じ業界にいる人に相談をすると、重要な情報が漏れるかもしれないということだけは、くれぐれも注意してほしい。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。